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今だから言えるあの頃の話03:リストラされたとデマを流されながら退職する

開業12年目のタイミングで「今だから言える開業当初の話」を連載しています。今回は3回目。引き留めを振り払い、退職を決めた頃の話です。

世の中はうまく行かないもので、辞めたくない人はリストラに遭い、辞めたい人は引き留めにあう。そんなものです。

私は社内では仕事を頑張っていた方でした。
当時勤めていた会社には、離婚後、娘が小学校を卒業するタイミングで入社しました。歓迎会の次の日が娘の卒業式だったので、よく覚えています。
契約社員から正社員になり、さらに給料を上げるという目標があったため、毎年の目標管理シートも真面目に作成していたし、チャレンジ項目も作り、毎年何かしらを達成して良い成績をもらっていました。

中途採用で社員になった時には、私は大卒ですが、高卒と同じ初任給から始まりました。そういうものなのだろうと、あまり疑問には思いませんでした。税引き前19万だったか、19万8千円だったか、それくらいです。

離婚した時は娘が小学生で、まだ一緒にいる時間を確保したかったものの、さすがにフルタイムで働かないとまずいかもと、まずは派遣社員を2年間経験しました。そこでパソコンやOfficeの使い方を覚えました。
派遣社員の時給は1,300円だったと思います。
誰もが名前を知っている、いわゆる大企業の中で仕事ができて、良い経験でした。2年が派遣社員の期限ということで、次は正社員を目指した方がいいかなと、ハローワークにも行ってみました。
もうすぐ35歳という時でした。

ハローワークでは、こう言われました。
「あなた、もう35歳になるんだから、事務の仕事なんてないわよ。軽作業も考えた方がいいからね」
今の時代では考えられない言葉ですよね。
35歳なんて、今は結婚してなくても意外ではない年齢です。

私の年代は、まず大学に現役で受かる人が3割、大学に行く女性は全体の1割、そして大卒の女性は就職が難しいという時代でした。
大卒の女性は、その時点で22歳。
その頃、女性は25歳でおばさん、お局と呼ばれていたのです。若くない女性は価値がない時代でした。
今は本当に良い時代になったと思いますし、世の中の、いや、日本人の価値観は変わるから、自分の価値観を信じて生きた方がいいですね。

当時35歳の私は、まだ本気で仕事をする気持ちになっていませんでした。
何とか仕事をしなくても生きていける道があるんじゃないかと、甘えた気持ちでいました。
ところがハローワークで事務の仕事なんてないと言われ、絶対に見つけてやる!と火がつきました。
今思えば、良いきっかけになりました。

派遣とは言え、大企業で2年間仕事をしたのが良かったのか、別の大企業での事務の仕事が決まりました。
正確に言うと、大企業内の関連会社の契約社員でした。
そこから半年後に正社員になります。

最初は、お給料がもらえれば、正社員も契約社員も派遣社員も同じだと思っていたのですが、正社員なのか契約社員なのか派遣社員なのかでは、当然、扱いが違いました。それは、正社員になってからわかりました。
私は以前から、あまり他人との違いが気にならないタイプで、直接攻撃などをされない限り、職場に不満を感じることがありません。

そんな私が急に退職すると言い、引き留めの話も受けなかったので、上司や同僚はかなり驚いたようでした。
私自身も、退職や独立に目を向けたことで、現状よりも何の保障もない未来に希望を感じている自分が意外でした。

さて、私が会社を辞めることになり、そのタイミングで会社は吸収合併されることになりました。
これまでも大きなリストラや合併、解散などがあったため、社内では、またかという雰囲気もありました。
私としては、自ら辞めて独立するので、晴れやかな気持ちでした。

ところが、社内で挨拶をする多くの人たちの目が、私を気の毒そうに見ているのに気づきました。
中には「大変でしたね」と、声をかけてくる人もいました。
何度か声をかけられて、私は思い切って聞いてみることにしました。
「私のこと、なんて聞いてる?」
すると驚くことに、私はリストラされたことになっていたのです。会社の合併と同時に切られたのだと噂されていました。
確かに、話の展開としては、納得する流れです。

まあいいかと、気にしないことにしました。
吸収される会社に残る人にしてみれば、私がリストラに遭い、自分たちが残ることを優位に感じている可能性もあります。その方が、会社としては都合がいいのでしょう。

絶対に成功するぞ!と、私は何度も自分に言い聞かせました。
だけどその時は、何から始めたらいいのかすら、まったくわかっていない状態でした。
何の見込みもないのに、すでに事務所を借りるお金が出て行きました。リノベーションも備品の準備も必要で、まとまったお金が出て行くことは間違いありません。

事務所物件について来てくれた夫が機嫌が良かったのも最初のうちだけでした。まさか退職後に夫からプレッシャーをかけられる毎日が続くとは、この時は想像することもできませんでした。

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