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バイステックの7原則と、自分の立場への置き換え

最近の、人を支えられなかったように感じる苦い思い出と、
支えてくれると言った人に頼ってしまったら思った効果が得られなかった出来事から、
福祉の仕事の研修で触れた「バイステックの7原則」を思い出した。

一つ一つ振り返りながら自分の気持ちを整理するのに、今はちょうどいい時期なのかもしれない。

参照はこちら。


1.個別化の原則

1.個別化の原則

1つ目は「利用者をかけがえのない個人として捉える」という考え方。

「こういう人はこうだろう」「このような境遇の人はこうだろう」と人格や環境で決めつけず、誰1人として同じ考えの人はいない。それぞれに合った関わりや解決策を模索する必要がある、という原則です。

人に自分の身に起こったことを軽く話したとき、「話の重さはあるかもしれないけど、あなたの身に起こったことだから、話したくなったらあなたの言葉で自由に教えてね」と言われて嬉しかったことがある。

支援の現場でも、よくある困難場面というのはあるが、一つ一つ同じではないということ、改めて思い出される。

2.意図的な感情表現の原則

2.意図的な感情表現の原則

2つ目は「どのような感情表現も認める」という考え方。

プラスの感情だけでなく、マイナスな感情も自由に表現させることで、利用者自身が客観的に物事を見ることができたり、解決の糸口が見える効果もあるとされています。

「まとまった言葉でなくてもいい、どんな感情でも話していい」と言ってくれる人がいると、安心できる。一方で、あとから、話したことを振り返って、その自由に表出した言葉を批判されると、かなり裏切られた気持ちになる。
本音で話したときほど、人格否定に近い効果が生まれてしまう。

自分に余裕がない場合、「何でも聞かせてね」というべきではない。
自分に余裕がないときに、「こういう話されても聞いててしんどい」と相手に伝えることは悪ではない。

3.統制された情緒関与の原則

3.統制された情緒関与の原則

3つ目は「援助者自身が自分の感情をきちんと自覚し、利用者に引きずられないようにする」という考え方。

問題解決には、冷静な判断が必要です。「本当に必要なことは何なのか」「利用者にとって何がベストなのか」を正確に導くためにも、利用者の心を理解すると同時に、自身の感情をコントロールすることが大切だという原則です。

自分のことも、支えきれなかったあの人のことも、最終的にはやはり「専門的な第三者」につなぐというのは一つの大切なゴール。
友達が多くても、共感してくれる家族がいても、その人と関係がある限り、何かしら利害が発生してくる。
対価があり、それを仕事にしているから、ネガティブ・ポジティブ関係なく、その人の内面に目を向け、その後の未来に向けたサポートをしてくれるのだと思う。
「あくまで援助者である」という立場が根底から異なる場合、連絡が来ると24時間いつでも対応すべき状態になってしまったり、自分に降りかかる影響を踏まえた結果、それが感情に乗ってしまったりする。

4.受容の原則

4.受容の原則

4つ目は「その人自身をあるがままに受け止める」という考え方。

利用者自身の個性や考えを否定するのではなく、「どうしてそのような思考になるのか」「なぜこういった行動をするのか」といった要因を考え、適切な援助へと導くことが大切とされています。

育ってきた環境や経験によって、人それぞれ意見や考え方は異なるという事実を受け入れ、個性を尊重することで、援助関係は円滑になるという原則です。

受容がないなら、話す意味がない場面は多々ある。
私にも、受容しながら話を聞く時間を惜しんで、より実践的な解決を急いで人の話を聞いた苦い記憶がある。
相手が受容されたと思うまでには、予想の倍くらいの聞く時間が必要だと思う。

5.非審判的態度の原則

5.非審判的態度の原則

5つ目は「他者が良し悪しをつけない」という考え方。

問題解決は自分にしかできず、またその判断は他人がするものではないという原則。援助者は、利用者の考えや行動に対して善悪をつけるのではなく、あくまでもサポート役であることを理解することが大切です。

これ。仕事のときからずっと心に置いていたし、仕事から1年離れても、このワードだけは覚えていた。(ほかは忘れてたんだけど(笑))
審判するなら、ほかにいくらでも手段がある。
望ましいと思われる解を、検索して各ブログから探し出すとか。
検索エンジンは自分を受容してくれるわけではないから、私たちは、人に話したくなったり、自分の思ったままの素直なことを、日記に書き留めたくなったりするのだと思う。
受容の原則と近いことを言っている(と私は感じる)のに、わざわざ「審判しないこと」と言っている項目があるのは興味深い。

6.自己決定の原則

6.自己決定の原則

6つ目は「自分のことは自分で決める」という考え方。

たとえトラブルがあったとしても、問題解決の主体は本人であり、利用者の成長や今後同じような壁にぶつかった時も乗り越えられるようにすることが目的です。

よく言う、「人のことは変えられない」ということの、大元の部分だと思う。
今の私は余裕がないので、他者に動いてほしいと思うことがあるけど、他者を動かせないのは仕方ないこと。
他者の考えや性格、行動パターンが自分と違うのは仕方ないこと。
私の問題は、「余裕がない」「終わりが見えないタスクに1人で向かっている」「自分の望んだことをする時間がとれない」ということであり、
この問題を解決できるのは、究極は自分しかいないということ。
さらに言えば、自分なりの解決策を考えた結果、その手段が他者に受け入れなくても、自分の問題を他者が解決できないのであれば、やはり自分のやり方を尊重してもらうしかないのだと思う。
この問題は、他でもない、私が抱えている問題であり、他者に代わってもらえないから苦しいのだから。

7.秘密保持の原則

7.秘密保持の原則

7つ目は「プライバシーを守り、情報を他者に漏らさない」という考え方。

一般企業における個人情報保護と同じように、個人にもプライバシーは存在し、たとえ小さなことであっても本人が言ってほしくないことは勝手に他人へ漏らしてはいけないという原則です。

今回の出来事は、7つ目のことはあまり引っかからなかった。
とても大事だけど、割愛。

番外編:7原則の外のこと


自分が大変な状況に置かれたときにこの7原則を読むと、支援者のときに何となく眺めていたのとは違い、「こんな人がいたら本当に助かるな」と思う。
働くようになったら、たまに思い返したい。

一方で、7原則には、以下のような文言はない。
・時間無制限の原則:相手が満足するまでずっと話を聞いてあげる
・断らないこと:相手が話したがっていれば、断ってはいけない

これもまた、支援者のときとは違い、現在は、別に保障されなくてもいいことだと感じる。
時間に限りがあったとき、話し足りないと感じることはあったけど、短い時間、私を尊重して話を聞いてくれるのなら、長く話を聞いてくれるよりも良い。
話し足りなかったという傷は1日も経てば薄くなってしまう。
話を聞くのを断らない、ということも、同様にそう感じる。

場面によっては、人間、「話を聞くことしかできない」という立場がありうる。
話を聞くくらいなら、と安易に言ってしまうけど、話を聞くのはとても難しいこと。
話すら聞けないことは、別に悪いことではない。

自分の身に起こった出来事を、感情的になりすぎずに振り返るには、こういう「誰かが考えた原則」があると助かる。
自分のわがままと切り離して、自分の要望を認めてあげられるから。

また、この7原則は、絶対守るべき、守らないとダメ、という原則というより、「大事とわかっていても難しいよね」という文脈で語られることも多い。
7原則を守れる人に依存せず、だけど、自分が傷ついたり、他者を支えられずに断らないといけないときは、この原則に戻って、フラットに相手との距離を考えたい。

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