【音楽×小説】祝福のメシアとアイの塔
———なんということだろう。
人が神の怒りに触れたその時から、世界を保つために15年ごとに繰り返されるこの儀式。
あの子が、救世主に選ばれてしまうなんて。
「……絶対に、あの子を独りではいかせない。 皆、いいね?」
村の長としてこれまで私たちを引っ張ってきた彼の言葉に、私たちは何の迷いもなく頷く。
みんな一緒なら、恐れるものはなにもないから。
あの子と共に、私たちも塔へ連れ立とう。
***
「みんな、どうして……!」
涙を流しながら狼狽えるあの子を他所に、私たちは【祝福】を奪い合う。
村の長だった彼は荒れ狂う波に呑まれ、薄紅色の髪の彼女は旋風と共に舞いながら消えた。
最後に残ったのは、私と片割れの弟だ。
8つ目の祝福は———【白銀の園】。
一歩踏み出した弟を押しのけて、私は我先にと掴み取った。
目を見開いてこちらに手を伸ばす弟を振り返り、勝ち誇ったように笑ってみせる。
………全てが凍るまで耐えながらその身が捧げられるのを待つなんて、そんな苦しみ、弟のあんたに背負わせる訳ないでしょう?
大丈夫、さいごは皆一緒だから。
滅びゆく楽園の命、繋ぐため。
「共に分け合っていこう」。
***
ひとしずくPさん×やま△さんの「祝福のメシアとアイの塔」を基に、小説を書いてみました!
今日初めて聴いた曲なのですが、書かずにはいられませんでした。「アイ」の重さに泣きそうです。
小説の描写の中にネタバレを含んでしまっていますが、ぜひ原曲を聴いて頂けたらと思います………!
最後までお読みいただき、ありがとうございました😊