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【#あんクリ製作委員会】あんクリ小説版/いろり庵のあすかさん-2

祖母が切り盛りしていたたい焼き屋、いろり庵を引き継いで1年経った。

祖母はこの町の名物おばあちゃんで、たい焼きと共に町の人たちにものすごく愛されていた。
だから、祖母が作っていたものと同じ味のたい焼きを作ることができるのか最初はすごく不安だったし、これまでと同じようにお客さんが来てくれるかどうかも心配だった。

……それでも、祖母がこの世から去ったことであのたい焼きが無くなってしまうのが一番嫌だったのは、他でもない私だったから。
周囲の反対を押し切ってそれまでの仕事を辞め、祖母に代わってこの店に立つことを決めた。

最初はやっぱり祖母と同じようにはいかなくて、落ち込んだりもしたけれど。
町の人たちは変わらず店に通ってくれて、「期待してるよ」「これからも頑張ってね」と優しい言葉をかけてくれた。

———おばあちゃんが遺してくれたたくさんのものに支えられて、私は今日も生きている。

***

「いらっしゃいませ、こんにちは〜」

時刻は15時過ぎ。
おやつ時に店に顔を覗かせたのは、近くの高校の制服を着た女の子だった。

「あんこのたい焼きと、クリームのたい焼き一つずつください」

「店内でお召し上がりになりますか?」

「持ち帰りで」

「かしこまりました。300円頂戴します」

代金を受け取りながら、レジの前に立つ彼女をちらりと見やる。
……随分と華奢だけど、たい焼き、1人で2個食べるのかな?
見かけによらずよく食べる子、とか?

「……あの、」

「はい?」

「店員さんはあんことクリーム、どっちが好きですか?」

「……えーっと、もちろんどちらもおすすめですが……」

「どちらかと言ったら……?」

「……個人的な好みを言うなら、クリーム、かな」

「ですよね!?」

「………え?」

「彼氏とケンカになったんです。たい焼きはあんこかクリームかで。
……それで、お互いがお互いの好きな味を食べてみて決めようってなって」

あまりにも可愛らしいエピソードに、頬が緩むのを抑えられなかった。
あんこかクリームかでケンカか、微笑ましいなぁ。

「仲直り、できるといいですね?
クリーム派と言いつつ、やっぱりどっちも好きなので。今度はぜひ彼氏さんも一緒に来てくださいね」

「はい、ありがとうございます」

「お気をつけてお帰りくださいね」

焼きたてのたい焼きが入った袋を受け取った彼女の顔は、店に入って来た時よりも晴れやかになっていた。


***

りようさんの企画、あんクリ製作委員会に参加してみました🌷
たい焼き食べたくなってきた……🤤

りようさん、ほんわかハートフルな企画を立ち上げてくださりありがとうございました✨


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