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どうしてもピアノ

2019/02/05
ピアノが弾ける子に憧れていた頃ってないだろうか。合唱コンクールでピアノ伴奏する子。卒業式でピアノを弾く子。女子でも、男子であってもその繊細な指の動きや体より大きな楽器に堂々と向かい合ってる姿は憧れ以外の何物でもなかった。

あたしは小学2年から新体操を週5か6くらい習っていて、習字や美術もやっていた時期もあったのでピアノを習う時間も体力もなかった。それでもピアノへの憧れは消えず、小学5年の時に調子に乗った。

「6年生を送る会」というのが2月だったか3月にあって、それは5年生全員で曲を贈るイベントだった。ピアノの他に木琴やシンセサイザーなんかが加わった編成で、皆リコーダーでカノンを演奏した。その演奏のピアノ役に立候補したのだった。ちなみに家にピアノなんてもちろんないし、楽譜も読めない有り様だった。無謀とはこのこと。

仲良しだった友達がピアノを習っていて、家にピアノがあったのであたしはその子の家で何度となく練習させてもらった。音符の上にドレミを書き込むところから。友達のお母さんですらも、大丈夫?みたいな顔をしていたのを覚えてる。

ピアノの演奏自体は簡単だった。決まったワンフレーズを16回繰り返す。それでおしまい。ワンフレーズは覚えた、あとは16回数えながら演奏していく。

本番当日、新体操の試合かと思うレベルで緊張していた。その他大勢のリコーダーの演奏とは違って、間違えたら即バレる。指も足も使って、頭で数えながら指揮者を見て。やっぱりピアノはピアノが上手な子がするべきだなあ、なんて思いながら。

すごく覚えてるのだけど16回目のフレーズを弾き終わる直前、え、これで16回だよね?終わりでいいんだよね?ってリコーダーの皆や指揮者や楽器チームや音楽の先生を見た。全員の息遣いを見て、ああ合ってる大丈夫これで終わりと確信した。

初めてのピアノ、初めての人前での演奏を終えてもう絶対にピアノ弾きたいなんて言わないと決めた。例えばおばあちゃんになって孫に教えてもらいながら楽しむ、くらいがちょうどいい気がしてる。

#おやすみゆめであえたら
#エッセイ
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