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ミュージカル『Fate/Zero』~The Sword of Promised Victory~を「演劇」として楽しみたい方へ 第五弾『英霊たち(後編)』
こんにちは!
ミュージカル異端児の伊佐旺起です。
今回も、ミュージカル『Fate/Zero』~The Sword of Promised Victory~を、存分に楽しんでいただけるための記事を執筆しております。
まもなく劇場入りです!
どんなFateワールドが展開されるのか、ワクワクですね!
さて、第五弾まできました。
「英霊たち(後編)」ということで、残るサーヴァントをご紹介いたします。
フィオナ騎士ディルムッド
ケルト神話に登場する、フィオナ騎士団。
ケルト神話は、アイルランドのダーナ神族やアルスター神話群など、多岐に渡っていますが、その末尾にあるのが、フィン・マク・クールと騎士たちが活躍するフィオナ騎士団の物語です。
このフィン・マク・クールは、フィオナ騎士団の団長で、歴戦を勝ち繰り広げてきた英雄的人物です。そして、そのフィオナ騎士団の団員、最強の戦士と謳われるのがディルムッド・オディナです。
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ディルムッド・オディナは、美貌に恵まれ、妖精王に育てられた経歴をもちます。神話の男ですね。彼のエピソードは、その美貌が故に苦しむ物語なんです。
フィンが老雄として、3番目の妻を迎えることになりました。妻となるグラニアは、騎士団が仕えている王様の娘でしたが、なんとディルムッドと駆け落ちしてしまうんです。
そりゃまあ、おっさんになったフィンよりは、イケメンの方が良いんですかね。駆け落ちされたフィンは、もちろん激怒し、フィオナ騎士団とともにディルムッドを追います。しかし、どうやら他騎士団員らはディルムッドへの友情を捨てきれ無いものも多く、そんなこんなでフィンは、ディルムッドと和睦をすることにします。
グラニアとの仲を許されたディルムッドですが、ある日、猪に襲われて致命傷を負います。ディルムッドは、二つの槍、ゲイ・ジャルグとゲイ・ボーを使う二本槍使いの戦士なのですが、槍を間違えて持ち合わせてしまったのが事故の要因らしいです。なんと、偶然居合わせていたフィン。都合のいいことに、癒しの水を与えることで、致命症の治癒ができるのですが、フィンは躊躇してしまいます。グラニアや団員の嘆願もあり、3度汲み直して、やっとディルムッドに与えることができました。が、間に合わず。ディルムッドは、命を落とします。
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なんとも、不思議なキャラクターですが、ディルムッドは勇敢で心も広いと言われています。
きっと、美貌ゆえの苦しみなんでしょうか。騎士としての誇りを持ち合わせながら、忠義と恋慕で揺れる。そんな男だからこそ、騎士として尋常なる闘いを望む騎士道を、抱いて曲げないのでしょう。
救国の騎士ジル
15世紀前期のフランスは、イギリスと百年戦争を繰り広げていました。
この時代に、ジル・ド・レェは貴族騎士として、一流の家庭教師たちに教育を施され、文学、芸術、音楽に精通した人物に育ちました。軍人として武功をあげるジルですが、戦争の悍ましさ故に、勇猛さという名の残虐性は彼の中で大きくなっていきます。
25歳のジルは元帥として、オルレアンでの戦闘に参加します。そして、運命的な出会い、救世主ジャンヌ・ダルクの忠実な部下として活躍を見せます。ジャンヌへの忠誠は、もはや崇拝にも近く、ジャンヌが異端審問により火刑に処された時には、相当なショックを受けたそうです。そして、この嘆きこそ、彼の残虐性のターニングポイントだったのでしょうか。
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ジルは領地に戻ると、豪勢な生活を始め、財産を湯水のように使い始めました。自費で聖堂を建て、全国から美しい声と容貌を兼ね備えた少年たちを集めて聖歌隊を作ります。昼は神を讃え、夜はジルの相手をするのが少年たちの役目でした。
財産を使い果たし、借金まみれになったジルは、今度は現実から逃げるように、錬金術や魔術の世界にのめり込んでいきます。ある日、とある僧侶から降魔術を説かれました。「悪魔を召喚するには少年の生き血が必要だ」、と。
こうして、ジルの城では悍ましい残虐行為が繰り広げられていきます。貧民の美しい少年たちが、ジルの部下たちによって寄せ集められます。始めはやさしく声をかけ、ある瞬間に豹変し、少年をいたぶり始める。心を許していた少年が、突如として恐怖に慄く、その変わる様がジルを興奮させました。そうして少年相手に性的欲求を満たした後は、のど笛をかき切って命を奪い、手足を切り落とし、目玉を抉りだし、生け贄として悪魔に捧げられるのでした。
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ジルの残虐行為は、ついに露見し、破門された上、拷問にかけられることになります。ジルは、拷問への恐怖からか、一変して懺悔を始め、赦しを請いました。無論、処刑になるわけですが、泣きながら赦しを請うジルに、何故か民衆は心を打たれて祈りを捧げたそうです。
このお話は、ヨーロッパの童話「青ひげ」のモデルであるとも言われ、今でも欧州の子供たちに、広く知れ渡っています。
中世という、残虐行為への麻痺した時代感覚。ジルが抱いた憤りや虚しさは、瀆神を生み出したわけですが、猟奇的な人間性の価値観は、サーヴァントとして何を生み出すのでしょうか。
イスラム指導者ハサン
ハサン・サッバーハは、ファーティマ朝時代のイスラム教指導者です。
この時代のイスラム帝国史やイスラム教史について触れると、相当入り組んでいて難しいので、簡潔に。ローマ帝国が衰退していく中で、中東エリアのイスラム勢力がさらに拡大し、たくさんの派閥や王朝を形成していきます。そして、13世紀ごろの、モンゴル帝国の襲来とオスマン帝国の確立まで、たくさんのイスラム王朝が形成されていました。
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イスラム世界が始まる以前、ギルガメッシュの登場するメソポタミア世界を信仰していたササーン朝ペルシャが滅亡したのが7世紀中頃。その間も隣のローマ帝国は、キリスト教により体裁を保っていましたが、新興してきたイスラム勢力も負けじと、研究や成果を上げていきます。その中、ファーティマ朝という時代に二ザール派という派閥を作ったのがハサン・サッバーハです。
そして、この彼の「英霊」たるところは、敵対する勢力を排除するために、鍛え抜かれた「暗殺教団」を組織したことです。鍛え抜かれた戦術と絶対服従。そのストイックさといったら、命を賭して戦い抜いた「英霊」として、名折れしない存在ですよね。この強い信条を題材にしたゲームが、「アサシンクリード」と言いまして、小生伊佐が指折りに数える名作の一つなんです。
さて、前回のおさらいです!7つのクラスについては、前回の記事を是非参照してくださいね。
7つのサーヴァントのうち、
単独行動スキルを保有したアーチャー
『ギルガメッシュ』高い機動性と宝具、そして「騎乗」能力をもつライダー
『イスカンダル』バランスの取れた最優のセイバー
『アーサー・ペンドラゴン』
が、揃っています。
本日紹介しました「英霊」たちは、
敏捷性に優れた堅実なランサー
『ディルムッド・オディナ』陣地作成で有利なフィールドを展開するキャスター
『ジル・ド・レェ』情報収集能力などに長けたアサシン
『ハサン・サッバーハ』
として召喚されます。
あれ、バーサーカーは?その正体は…
ここはお楽しみに取っておきましょう!
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さーて!
いよいよ、劇場がFate世界の魔力に満たされていきます。「第四次聖杯戦争」の開幕です。
たっぷり濃密な時間を、是非ご堪能くださいませ。
↓以下、公演情報
ミュージカル「『Fate/Zero』~The Sword of Promised Victory~」
https://www.google.com/gasearch?q=fate%20zero&source=sh/x/gs/m2/5#ebo=0
2024年1月18日~1月26日
THEATER MIRANO-Za
2024年1月31日~2月2日
SkyシアターMBS
原作 虚淵玄(ニトロプラス)/TYPE-MOON
脚本監修 虚淵玄(ニトロプラス)
脚本・演出・作詞 西森英行
音楽 坂部 剛
振付 広崎うらん
出演
衛宮切嗣:新木宏典
セイバー:秋野祐香
アイリスフィール・フォン・アインツベルン:山内優花
久宇舞弥:佃井皆美
遠坂時臣:遠山裕介
アーチャー:丘山晴己
言峰綺礼:北園 涼
ケイネス・エルメロイ・アーチボルト:伊藤裕一
ランサー:輝馬
雨生龍之介:佐々木喜英
キャスター:吉田メタル
間桐雁夜:健人
ウェイバー・ベルベット:平松來馬
ライダー:岸 祐二
<アンサンブル>
西田健二 伊佐旺起 梅原ことは
小林嵩平 佐々木楓 Chion
関根結花 Taichi 高間淳平 田中奏