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事業が成功すると復讐される

◆ はじめに

ユースフルは領域特化型の人材育成サービスで勝負をしている。領域特化することで自社コンテンツが短期で立ち上げるとともに、品質を高められる。同時に価格を競合他社よりも引き下げることで費用対効果を高めて類似サービスを展開する企業に対して競争優位を築く。

一方で、領域特化だからこそ、同じ研修領域だけれども別領域に尖っている各社との提携も可能になる。これにより、少ないマーケティングリソースでも販路拡大ができて生産性が引きあがる。

総じて、戦略はうまく回り始めてる。だから、どうせ成功する。しかし、成功するからこそ、その先を見据えなければならない。具体的には、勝った後の姿を想像した上で「やりそうだが、やってはいけないこと」を巧妙に回避する必要がある。

◆ 成功するは復讐を受ける

ユースフルのように、領域特化して拡張した企業は、往々にして売上を拡大するために「ニッチ度」を緩める。経営資源を多方面に拡散させて、利益率を低下させるアクションを知らずのうちにとってしまって、中途半端なポジションになることが多い。

たとえば、かつてサークルKというコンビニがあった。サークルKは東海地区だけに出店を限定し、他の全国展開のコンビニには不可能な価格帯は東海地区独自の製品を取り扱うことで売上を伸ばしていった。

しかし、そこからが問題だった。サークルKは2004年にサンクスと合併し、サークルK・サンクスとなり、全国規模の企業になった。しかし、全国規模になった途端に、セブンーイレブンやローソンのような企業の後塵を拝するようになって中途半端なポジションになってしまった。

その後、2016年に親会社のユニーグループ・ホールディングスがファミリーマートと経営統合したことで、サークルK・サンクスはファミリーマートの看板替えや店舗閉鎖に追いやられた。戦い方を間違えたことで、ブランドそれ自体が消失してしまったのだ。

◆ 領域特化型サービスで起こるコト

ユースフルで起こりそうなコトは、IT領域で成功したから次は英語だとか、次はエンジニア領域を攻めるんだとか、資格だとかデザインとか、とにかくコンテンツ量を増やして売上を拡張する未来が起こり得る。

しかし、そうして出来上がる「ユースフル ビジネス」は、総花的で結局何がしたいのですかと言われたときに「いろいろやってます」ということになる。さらに、現場ではコンテンツ量が多くて学習が進まず、たとえばセールスは通り一辺倒の説明しかできない「ありふれた営業マン」になっていくだろう。

登壇者も、もはやヨコのつながりを形成することはむずかしく、セクショナリズムが進むだろう。「あ、資格がんばってください(エヘヘ)」「そちらもITがんばってね(デヘヘ)」というよそよそしい空気が流れ始める。そしたら、今のエンゲージメントを維持するのはおそらく困難だ。

このように、売上を拡張しようと思ってスケベ心でいろいろ思いつきでやると「なぜ勝てたのか」の論理が破綻していく。戦略は思っている以上に繊細で、1つ1つの構成要素がつながっている。その「つながり」は、数字を伸ばしたいという安易な発想で簡単に壊れてしまう。

◆ 評価尺度は変わりゆく

では、そのような事態を回避するためにはどうすればよいだろうか。この点、現在は売上を拡張すべきフェーズなので「売上」に指標をピン留めしているが、成長の速度が加速していった場合には、指標を変更する必要がある。

具体的には、売上高や前年度増加額ではなく、売上総利益率、顧客シェア、顧客満足度といった領域特化できているかどうかを図る指標に徐々にシフトしていく必要がある。cNPSを指標として掲げているのは、この「フェーズ・シフト」への布石であると言える。

そうして領域特化型のサービスを深く追求する中で「もっと深いサービスをちょーだい」という声が必ず出てくる。資料作成の代行なんかはその一例だろう。そうして「尖るから生まれるもの」に目を向けることで、さらに粗利は伸びていく。

そんな論理を描くことができれば「売上至上主義」のまま突き進んだ慣れの果てとしての「中途半端に大きくなりました(そして誰も幸せになれませんでした)」という結果を回避することができるだろう。

おわりに

ユースフルの戦略は徐々にその効果を発揮しはじめている。歯車がぐるぐると回り始めている。その歯車が回れば回るほど「もっと大きく」と欲が出て、戦略を破綻する打ち手を講じて中途半端なポジションを形成することは回避しなければならない。

そのためには、どこかで領域特化できているかどうかを図る評価指標にシフトする必要がある。もちろん、今がそのときではない。ただ、そんなシフトを起こすための布石を今から仕込んで、いざそのときが来たときに「ときがきた」とコンパスが示す方向にまっすぐ突き進めば、我々が間違えることはないだろう。


最後に

僕が働いているユースフルについては以下記事をご参照ください!社会人教育に興味のある人はぜひ!

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