【骨折がある】だけでは足りない症例とは?
「骨折を見逃さなかった」だけでは足りない症例とは?
お世話なります、ギプス塾塾長の大榎です。
今回は上記の症例をシェアします。
大変珍しく骨折分類の中でも7%の発生率であり、エコーで写したのは文献でも無く、その道な第一人者の先生に聞いても【ないんじゃない】と希少な例です。
柔整師は骨折の疑いがある怪我に対して、骨折応急処置【整復固定】を適切にして、まずは、骨折があるかどうかわかればいい、、、
これが最低限の守備範囲ですね。
骨折があるのでは?と判断したならば、医師に対診しますが、時として、骨折の損傷の程度まで判断しないと患者様に不利益が被る場合があります。
私たち柔整師は、オペもできないし、診断権がないので骨折を柔整師だけでは最初から最後まで治療はできません。
しかも3DCTやMRIという細かいところまで観れる画像も使えないので、エコーだけでは骨折分類や十分な損傷の程度の把握は限界もあります。
しかし、細かな分類まではわからなくとも、【ここまで損傷していたら保存療法の可能性が低い】
の判断まだできないとダメな症例が来ましたのでシェアします。
今回、当院来院した小児の骨端線損傷の分類を間違えた症例です。
治療方針が大きく変わる為、非常に勉強になる症例でした。
【症例】
12歳、男児 左内果骨折(医師確定診断)
負傷原因:サッカー練習中後方より転がってきたボールに乗ってしまい足首を捻り負傷する。本人詳細は覚えておらず、私の想像では底屈内反強制による受傷。
(受傷後30分で来院)
症状)
圧痛:内果(++)、ATFL(+)
腫脹(++)
歩行、荷重不可
エコー上不正像(+)
ギプスシーネ固定、松葉杖NWB
骨折か、そうでないか。
という鑑別は容易にできました。
骨端線よりも近位に明確な不正があり、プローブを平行に前後に走査すると骨端線に骨折線が合流していました。後果辺りにも圧痛があり、内果を中心に三角錐上の骨折線を想像。
今回はエコーも取り扱いもベテランのスタッフが対応し、『これはSH分類Ⅱ型だろう』と考えて、近隣の個人整形外科でも対応可能と考えてました。
下の画像は脛骨下端のエコー長軸です。
スタッフの紹介状作成中に私が別件の会議終わりで、エコーで再び観察し、ダブルチェック。
動画であるように、脛骨を、中枢より抹消に長軸でプローブを滑らせていくと、骨折線は骨端線に届き、大きさから骨端線を超えてこれ以上ある可能性もあり、【これはオペ適応もあるから総合病院の方が良い】となり紹介先を変更し対診しました。
結果、『SH分類Ⅳ型』にて早期にオペです。
医師から聞くところによると過去の疲労骨折既往による骨の脆弱性も関与しているとのことでした。
距腿関節までの骨折線を完全に見逃していたようです。
連携している整形医師作成の添付イラスト資料画像にもありますが、Ⅱ型は約75%を占めます。完全にその頭になっていたんですね。
Ⅳは7%でありハイエナジーが必要で、かなり稀です。
関節面に達しているⅢ型、Ⅳ型は解剖学的な整復が必要になり、オペの可能性も高いです。
特にⅢ型のJuvenile Tillaux骨折は捻挫として誤診されやすく注意が必要な外傷です。
個人の整形外科に紹介していれば、手術適応となり総合病院を紹介され、【二度手間】になっていたでしょう。
脛骨遠位部や天蓋部の短軸エコーも有効なのかと思いましたが、エコーに長けている先生でも関節面に縦の骨折をエコーで見つけるのは論文も無く、出来なくはないけど、経験上としても難しいとのことでした。
様々な骨折線を想定した圧痛による所見取り、エコーにて離開ギャップの判断、整復の技量の有無も含めた対診先の選定など、『骨折を見逃さなかった』だけでは不十分で、非常に成長させてもらった症例でした。
もし、先生方で、経験上Ⅲ型やⅣ型など稀で予後不良な骨端線損傷を判断する材料(受傷機序、圧痛、エコーなど)などぜひご教授頂ければ幸いです。
エコで救われた症例です。エコーは患者様を守る武器でもあり、わたしたちも【見逃し】という、院の信頼低下に繋がる予防の役目もしてくれます。
柔整師による柔整師のエコーは大切。
さらにエコーを入れることにより、院がメリットがある事も伝えていきます。
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