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自分は若い女性だった、と思い出した話

いつものように残業終わりで終電に乗っていた時のこと。

私の座っている席の隣に、ほろ酔いの会社員グループが乗り込んできた。部長らしき人を取り囲むようにして、数人の部下たちが楽しげに話している。私は本を読みながら、その部長(仮)ご一行の話を聞くともなく聞いていた。

部長(仮)「あずにゃんさ~、こないだ新婚旅行いってたじゃない?どこだっけ。ハワイかな?忘れちゃったけど。でもね~、旅行先で旦那さんと喧嘩しちゃって。結局成田離婚なんだって~。」

”成田離婚”というパワーワードを私は初めて聞いたのだが、どうやら新婚旅行で価値観の違いが明らかになって、帰りの空港で即離婚を決めることを言うらしく、私たちの親世代ではよくある話だったらしい。

「あずにゃんかわいそうだよね~~。」

私は、自分でも驚くくらいのスピードでこの部長(仮)のことを「きもっ」と思っていた。ていうか本当に驚いた。ていうか「きもっ」って久々に口にしたな。口に出してはいないけど。

自分でいうのもなんだが、私はあまり人に嫌悪感を抱かない方である。基本的に失礼な言動や思考はしないように生きているし、自己肯定感も低いのでそもそも人を見下したりできない。とにかく調子に乗らないように、誰にも怒られないように、謙虚に、生きてきた。

そんな私が、こんなにも自然に「きもっ」って思った理由が気になって、ちょっと真剣に理由を考えてみた。

1つは間違いなく、部長(仮)が部下を「にゃん」付けで呼んでいたことだろう。これについては満場一致で「きもっ」だと思う。はい次。

2つめは、その場にいない人(あずにゃん)の、しかもその人があまり人に知られたくないであろう話をしていたということ。それはモラル的にどうなんだ、とシンプルに思った。

と、ここまで考えてみて、「あれ、なんかこの理由うそかも。」と思った。なんかキレイすぎるし、瞬時にそんなたくさん考えるか?と。うまく言えないけど、なんかもっと食い気味に、当たり前のように、上から目線で「きもっ」って思った気がする。

たぶんだけど、私は自分が"若い女性である"っていうステージの上から、それを振りかざして、「きもっ」って思ったのだと思う。わかるかなぁ。社会に棲む人間にはなにか価値ヒエラルキーみたいなものがあって、自分はあたりまえにその部長より価値が上で、だから「きもっ」って思う権利が当然ある、みたいな傲慢な感覚。

自分がこんなに傲慢だなんて少しショックだったけど、それよりも、「若い女性の価値」を享受する(あるいは発揮する)生活を日々犠牲にして仕事ばっかりしてる自分が、まだ「若い女性」ステージに属してるつもりでいることが急に恥ずかしかった。化粧もほぼ落ち、目の下にはクマ、つい10分前まで1人でラーメン啜ってたような満身創痍女に、どういう理屈で食い気味に「きもっ」と思う権利があろうか。部長ごめんね。

なんの話かというと、24歳の今しかできない輝き方ができるよう、もっと頑張ろう思った話でした。

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