馬原虫性脊髄脳炎になってしまった時
この記事はTHE PLAID HORSE に許可を得てWhen EPM Strikesの記事を翻訳して掲載しています。
回復の可能性を高めるには「時間」が鍵となる
馬の飼い主は馬原虫性脊髄脳炎(EPM)という言葉を聞いたことがありますが、幸いなことに、この病気を発症する馬は全体の1%にも満たないです。しかし、この神経疾患が馬に与える影響は壊滅的です。そのため、馬の所有者はEPMの可能性のある症例を見分ける方法を知っておくことが重要です。どのように診断がなされるのか、回復の予後と、EPMを予防するための環境管理の方法なども知っておくことが重要です。
馬がどのようにして馬原虫性脊髄脳炎(EPM)にかかってしまうのか
EPMは最も一般的には住肉胞子虫の一 種であるサルコシスティス・ニューロナ(Sarcocystis neurona)によって引き起こされる、それは、馬がオポッサムの糞で汚染された食物や水を摂取すると感染します。馬がこの病気に感染する原因としてのもう一つは、原虫であるネオスポラ・ヒュゲシ(Neospora hughesi)を介したものということはあまり知られていません。この寄生虫からどのようにして馬に感染するかについては、ほとんどわかっていません。
EPMはどのようなものか
EPMは 「偉大なるなりすまし者 」と呼ばれ、様々な症状で馬に現れます。馬の内科専門医であり、Equine IMEDという名前の相談サービスのオーナーであるエイミー・ポルクス氏(DVM, DACVIM)によれば、臨床症状は軽度から重度まで様々あります。鞍上のパフォーマンスの変化(脱力、つまずき、筋力低下)から、急性の反動(伏せ)を伴うものまで様々です。
馬主が観察しうるその他の臨床症状には、これらに限定されないですが、以下のようなものがあります:
・頭部傾斜、眼球または耳の下垂、嚥下困難などの脳神経徴候
・筋萎縮、非対称性であることが多い
・運動失調(協調性の欠如や異常な歩行、後肢に顕著なことが多い)
・つまずき、つま先の引きずり、膝関節をロックする、正しいリードを取ることの困難さ、後肢をぴょんぴょんさせながら動く
EPMの診断
ルクス博士によれば、馬主がこれらの徴候のいずれかに気づいた場合、EPMは進行する可能性があり、早期治療が治癒のために重要であるため、獣医師に馬の診断を依頼することが重要です。
神経疾患の疑いがある場合、ポルクス博士は言います。「内科専門医やこの分野に精通した獣医師など、高度な訓練を受けた人による徹底的な神経学的診断を受けることが非常に重要です」。神経学的診断では、獣医師は適切な神経機能と運動を診断します。検査は、一般的な行動と体の状態の観察から始まり、筋肉の萎縮が観察された場合には注意を払います。次に脳神経の検査が行われ、視力、眼球運動、舌の調子、刺激に対する特定の反応など、頭部と頸部周辺の神経の機能が確認されます。獣医師は運動機能の検査では、馬が直線や円を描いたり、さまざまな路面を歩いたりするのを観察し、つま先を引きずったり、自分で踏んづけたり、バランスを崩したりするなどの歩様異常がないかをチェックします。筋力と協調性は、馬が前方に歩いているときに尾を引く「尾引き」検査で診断できます。固有受容障害は神経疾患のある馬によく見られます。馬はしばしば適切な足の配置に気づかず、広踏・内向または狭踏・外向のスタンスを取ったり、脚を非常に異常で不自然な位置に置いたままにしたりします。ポルクス博士は、「EPMと診断するためには神経学的疾患を確認しなければならないので、神経学的評価は診断の最も重要なステップです」と述べています。
診断検査としては、血清と脳脊髄液(CSF)でサルコシスティス・ニューロナまたはネオスポラ・ヒュゲシに対する抗体を調べます。CSF検査は牛舎で行える場合もありますが、獣医師が馬をクリニックに搬送するよう指示する場合もあります。この手法は合併症が少なく忍容性が高く、より確定的な診断のための重要な情報を得ることができます。血清中の抗体の存在は、曝露を裏付けるだけで、必ずしも活動性の疾患とは限りません。というのも、アメリカ国内には曝露量の多い地域があり、そうした馬は血清検査で陽性になる可能性が高いからです。血清抗体のレベルも発病の可能性を決定するものではなく、どのレベルであれ陽性であれば曝露を確認できるだけで、陰性であればEPMである可能性は低いです。活動性感染の最も正確な検査は、脳脊髄液(CSF)と血清を一緒に結果確認することです。血清と髄液の両方で抗体検査が行われます。そして、髄液中に抗体産生の証拠があるかどうかを判定するために、比率を測定します。診断検査および治療は、EPMに一致する神経学的欠損および臨床徴候を有する馬にのみ行うべきです。EPMの検査は、毎年の健康診断や購入前検査の一環として行うべきではありません。
回復の予後
EPM は MARQUIS® (15% w/w ポナズリル)で治療できます。これをペースト状にして投与します。一般的に、約66%の馬は完全に回復しますが、放牧用として十分飼えるまでに回復します。残り、約33%は治療にうまく反応しません。原虫のダメージによる後遺症が残ります。ポルクス医師は、「私は治療で大きな成功を収めました。」と言います。「最近の症例では、 MARQUIS®による治療に非常によく反応し、6ヶ月でショーリングに復帰しました。」
ポルクス博士によれば、牧場周辺のオポッサムの個体数を増やさないようにするために、馬の所有者ができることがあると言います。例えば、餌を密封して適切に保管すること、オポッサムがアクセスできる場所に猫や犬の餌を放置しないこと、排泄物を適時に確保・処理すること、散らかった場所をなくすことなどです。