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馬と極端な気温の関係

この記事は THE PLAID HORSE に許可を得てHorses and Weather Extremesの記事を翻訳して掲載しています。

馬は寒さ、暑さ、湿度、乾燥など、適度であればほとんどの気象条件に対応できます。飼育されている馬にとって問題となるのは、極端に酷い天候のときです。

気温が低い時について

馬の体について

野生の馬は極寒の環境にも耐えることができます。野生の馬は自然の地形(丘、谷など)や自然界に存在するもの(樹木、草木)を利用して、風、雨、雪の影響を和らげます。さらに、冬には厚い毛が生え、コートのように雨や雪の中でも暖かく、ほとんど濡れないようにしてくれます。

しかし、牧草地で飼うようになると、地形や自然へのアクセスに制限がかかり、すぐ、彼らの気候に対する対処能力は支障をきたします。

雨や風から自由に避難することのできない平地にいる馬は、寒すぎたり雨に濡れすぎたりして、それが原因でトラブルを引き起こす可能性があります。ですので、必要であれば、シェルター、毛布、厩舎を馬に提供してあげると良いです。

寒い季節になると、乗馬をする人は騎乗時に馬を涼しくさせたい気持ちと、外厩時に馬を暖かくさせたい気持ちの間で、その加減について常に葛藤します。馬が厩舎にいる場合、クリッピング/毛刈りは冬の乗馬やショーへのひとつの解決法になります。

たくさんショーに出る予定でしたら、厩舎で毛布をたっぷりかけ、寒い日や雨天時の外出を制限し、そして全身クリップをするのが有効です。あまりショーに出る予定はないけれど、冬の運動後に馬を早くクールダウンさせたい場合は、首の前側・腹・尻にかけて剃るトレースクリップが役に立ちます。

トレースクリップは、大きな静脈が体の表面に近い部分を刈ることで、クールダウンを素早く行うことができます。この部位は通常、馬は汗をかきやすいです。馬が少しでも汗をかいていたら、寒い季節に馬を乗せたり、外に出したりしては絶対にいけません。馬は汗をかくことで体を冷やしています。外が寒くて、本当は温めないといけない中、汗は体を冷やし続けてしまいます。また、トレースクリップによって露出している部分、馬がさらに温める必要がある部分に汗をかいていると更に冷やしてしまう結果になります。 なので、本当に外が寒かったり汗をかいて肌が濡れていたりするときは、毛布をかけてあげたり、厩舎に入れてあげるようにしましょう。

それに加えて、寒い時期には馬に十分な水を飲ませることが非常に重要です。十分な量、水を飲まないと疝痛を起こすことがあります。バケツを徹底的に掃除して、水が馬の口に合うようにしっかり確認してください。私たちはよく、本当に寒い日には馬の水に味のついた電解液やペパーミントを加えて、もっと水を飲むように促します。

馬の肺について

気温が寒すぎて乗るべきでないかどうかを判断する本当に大事な観点は肺です。馬の体自体は寒い気温に適応できますが、肺は寒さに適応できません。冷たい空気を素早く、または深く吸うと、気道に大きなストレスがかかります。 下気道を冷たい空気にさらすと、馬の免疫は少なくとも48時間影響を受けてしまいます。炎症性サイトカインの増加と白血球の一種である好中球の流入を引き起こします。

それは、馬がただ立ち止まっている(つまり、呼吸が速かったり深かったりしていない)場合、気道が長いため、肺に到達する前に空気が温められ加湿されるということです。馬が運動している場合、呼吸が速くなったり深くなるので、空気は気道で温まる前に、より早く肺に到達するので、肺に達したとき、空気は冷たく乾燥しています。

冷たい空気を吸うことが馬に与える影響については、ほとんど研究されていません。最も参照されている研究は、米国オクラホマ州立大学のもので、使用された温度は4℃でした。具体的には、健康で馬をその温度で運動させたところ、肺に炎症が起きたという証拠が見つかりました。同じ温度設定で運動しなかった馬には炎症性の変化は見られませんでした。そのため、我々は通常25度以下をレッスン(練習)をするかどうかの判断のボーダーとしています。

研究対象馬は15分間疾走された結果のものですが、我々のケースの場合は、
ウォーク(歩行)、トロット(軽足)、キャンター(駆け足)とジャンプを30分するので、寒い中での運動には本当に気をつけなければいけません。

気温が高い時について

馬は、アメリカ中西部の夏によくあるような高温多湿の気候条件には特に適していません。人間以外の哺乳類で、汗をかくことで体を冷やすのは馬だけです。湿度は発汗による蒸発作用を制限してしまうのです。そして体を冷やすために、汗の蒸発は必要です。

馬は暑くても、乾燥しているならそちらの気候は得意です。なので、砂漠や高原の原産種はいても、ジャングルの原産種はいません。初期の馬は森林地帯での生活に適応していましたが、現代の馬は主に草原に生息しています。

また、馬は食べ物を咀嚼、消化、代謝する際に体は熱を発生させます。そのため、暑い季節の給餌時間間近の騎乗は避けましょう。食べ物の消化で発生する熱に運動で発生する熱が加わると、熱ストレスに追い込まれる可能性があります。

熱ストレスの症状には以下のようなものがあります:
・大量の発汗、または通常より少ない発汗
・皮膚が熱くなる(皮膚の循環が停止すれば、寒さに移行する可能性あり)
・筋力低下
・つまずき
・呼吸が速い。(成馬の正常な呼吸数は1分間に8~18回)
・心拍数や脈拍数が速く、運動後も回復しない
・体温が38.9℃(102℉)から41.1℃(106℉)まで上昇する(平熱は36.7℃(98℉)から38.6℃(101.5℉)
・皮膚の弾力性の低下、目のくぼみ、膜の粘着性、排尿の停止など、脱水の兆候

馬にとって熱ストレスは深刻です!

一般的なルールとして、気温(華氏)と相対湿度の合計が130以下であれば、馬の冷却システムはうまく機能します。汗をかき、肺から熱を排出することができます。 これらの合計が130を超えると、冷却効率が低下します。まだ乗馬は可能ですが、馬がオーバーヒートしないように注意する必要があります。

合計が150を超えると、馬が自身の体を冷やすことが難しくなってきます。
また、NOAA(米国海洋大気庁)の暑さ指数表は、乗るには暑すぎる時期の目安にもなります。一般的に、暑さ指数が100を超えると警戒が必要です。暑さ指数105を示していたら、朝や夜遅くに乗ることをのぞいて、乗馬には行かない、指標がそれ以上なら、間違いなくすぐキャンセルします。

暑さと厩舎の馬を管理する方法としては、扇風機を使ったり(私たちはそうしている)、馬に十分な水を与えることなどがあります。本当に暑い日は早めに馬を連れていくので、日中の一番暑い時間帯に外に出ることはありません。夏場は1日に3回バケツに水を入れます。気温が危険なときは馬を運動させません。

放牧馬には日陰とそして、豊富で清潔な水が必要です。馬が汗をかくまで乗って、そのまま外に出したままではいけません。 よく冷やしてあげ(ぬるま湯や冷水をホースでかけるなど)、心拍数と呼吸数が正常に戻ったことを確認してから放牧に戻しましょう。

特にひどい暑さの時期には、経口電解質液は厩舎馬にも放牧馬にも有効です。穀物に混ぜて与えるか、バケツに水を入れて与えます。経口電解質液はペースト状のものもあります。





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