物語(I):思い出……
ジユンペイさん曲
I 『徒花』
物語:思い出……
あたしの思い出なんて、もう十分。
セピア色のフィルム写真の中にいる、シャツとワンピースはアパートの門の前でカッコつけている。
写真立てとアルバムはもういらないわ。
段ボールに詰めてゆく。
窓には西日がさしてきた。
少し一服しなきゃ。
あの人に送り返そうと思って、朝から片付けてたのに。今日一日こんなことばっかりやって。本当にやんなっちゃうわ。
やっと出来た段ボールと、あの人の住所と名前を書いた紙。
段ボールをチャリンコの荷台にくくりつけて、宅配に出したわ。
帰り道、夕方の淡い色に星が光り出す。
部屋に戻って、いつもより物が少なくなっていた。
窓の西日は、いつの間に沈んでしまうらしい。あの人とあたしの日々も、いつの間に……。
だけど。
だけど、何だかスッキリしたの。
あー、人生って素晴らしい!
だってそうでしょ?
小さいアパート、眩しい西日、淡い夕方、一番星の光。美しくって、可愛らしいことで、世界は溢れている。
頭をかすめるあの人のことなんて。楽しかったあの日々なんて。段ボールに入れて戻してあげたわ。
明日からは、ううん、今からはあたしの人生。
さ。明日からまた仕事、ガンバらなくちゃネ!
とっても楽しみよ!
おわり
以上、【 うたスト 】 歌からストーリー︓歌を聴いて物語を作ろう︕
への、応募作品でした。
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