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物語 泣き虫うっぴぃ

物語 泣き虫うっぴぃ(約2500文字くらい)

 あるところに、仲良しの三人組がいました。あぁちゃんと、いをちゃんと、うっぴぃです。三人は今日も駄菓子屋へいきます。
 あぁちゃんと、いをちゃんは、横ならびでおしゃべりをします。うっぴぃは後ろからついていきます。
 ボスのあぁちゃんは百円のチョコを買いました。サブのいをちゃんは『トラちゃん』のシールを買いました。うっぴぃは何も買いません。家が貧乏でお小遣いがないからです。

あ「わあー!おいしー!」
い「かわいー!」
う「みせてみせて!」
い「ダメー!うっぴぃには見せてあげないよー」
う「……わーんっ!!」
あ「やーい!泣き虫うっぴぃまた泣いた♪」
う「だってぇ!」
い「いこいこ!」
う「待ってよぉ……!」

うっぴぃは、自転車のあぁちゃんといをちゃんを追いかけます。だけど足の遅いうっぴぃはいつも置いてけぼりにされてしまいます。

う「いたっ!」

うっぴぃ、転んでしまいました。

う「待ってよぉ……」

気がつくと、ひとりぼっちでした。待っていてもだれも助け起こしてもくれないので、頑張って起き上がって、ケガをしたひざ小僧の赤い血をながめて、涙ポロポロ。トボトボ家に戻りました。

 家に帰ると、誰もいません。いつものことです。お父さんはドロン。お母さんは毎日残業です。
 うっぴぃは疲れ果ててゴロンして、テレビ見て、こっそり隠されている飴の袋からふたつとって、食べました。
 あぁあ、お母さんが帰ってきたら怒られるなぁ。なんでケガしたの!って、怒られるなぁ。
 うっぴぃは、いつしかそのままスヤスヤと眠りました。


ガチャン!
ドアの音がしました。

う(お母さんが帰ってきたんだ!どうしよう。宿題してないや。どうしよう。ケガしたまんまだ。どうしよう。お片付けしてないし。内緒で飴食べちゃったし。どうしよう。…………。)

 ところが、そこへ来たのは、お母さんではありませんでした。
 シールのキャラクターの『トラちゃん』でした。


う「『トラちゃん』……?」

『トラちゃん』は言いました。

ト『うっぴぃ。君は未来を見たくはないかい?』

うっぴぃは、コクリとうなずきました。

ト『よおし!それなら、ボクにまかせて!』

うっぴぃは、よく分からないまま、コクリとうなずきました。

ト『さあ、カーテンをあけて窓をみてごらん?』

うっぴぃは、カーテンを開けました。


 そこには、なんとなくぼんやりとしたおねえさんがいました。どことなく、お母さんにも似ていますが、髪型が違います。
 おねえさんは、ぼんやりとして、ため息をつきました。
 そこへ、ドコドコと、おじさんがやってきました。

おじ「おい! ふざけんな!」
おね「す、すみません……」

おねえさんは、泣き出しそうです。

おじ「まったく!これだからゆとりはダメなんだ!」
おね「……」

おねえさん、とうとう涙をポロポロと流していました。


うっぴぃは、心がとっても痛くなって、横にいる『トラちゃん』を見ました。

う「『トラちゃん……』あのおねえさんを、助けてあげれないの?」
ト『うん。できるとも!』
う「本当!」
ト『あのおねえさんはね、うっぴぃ、君の未来だよ』
う「えっ……」
ト『だから、うっぴぃ、君自身が変えるんだよ』
う「で、でも……」
ト『じゃあね!』
う「『トラちゃん』……。」


 数日後。
 うっぴぃは、またみんなからからかわれています。うっぴぃは、また涙をポロポロ流しました。
 だけど、うっぴぃが助けないと、あの未来のおねえさんを救えません。
 だけど、うっぴぃにとっては、あぁちゃんも、いをちゃんも、大切なお友達です。
 だから、からかわれたらただただ泣きました。そして、楽しかったらただただ笑いました。ただただ、いつものように。それだけでした。

 うっぴぃは今日もしょんぼりしたまま家に帰りました。


 うっぴぃが、いつものようにグースカ眠っていると、また、『トラちゃん』が来ました。

う「『トラちゃん』!」
ト『やぁ、うっぴぃ。うまくすすんでる?』
う「……うん」
ト『そうかぁ!それはよかった!じゃあ、この前のつづきを見てみよう!』
う「え?」
ト『窓をみてごらん』

うっぴぃがカーテンを開けて窓を見ると、未来のおねえさんがまた泣いていました。

う「『トラちゃん』……」
ト『ほら、ごらんよ』


そこには、涙目でも一生懸命頑張って働いているおねえさんがいました。すると、廊下からにこやかなおにいさんがやってきました。

おに「やあ。ふふふ」

廊下から来たおかしなおにいさんが笑いました。すると、おねえさんもにこっと笑いました。おねえさんは、少し元気になって、また働きました。

 すると、今度は少し年上の女性がやって来ました。

女性「あら!うっぴぃ、元気?」

少し年上の女性が、にっこりとおねえさんに笑いかけます。

おね「はい。ありがとうございます」

おねえさんは、にっこりと笑い返しました。


窓のカーテンが閉じられました。

う「『トラちゃん』……これって……」
ト『うっぴぃ。きみは、未来も仲間思いの優しいひとのまんまなんだね』
う「……そうかな」
ト『そうとも!』
う「よかった!」
ト『ボクもよかった!じゃね』
う「……あ、『トラちゃん』……?」


ガチャ!
ドアが開く音がしました。

う「お母さん!」
母「ただいま。あ! うっぴぃ!」
う「はい……」
母「ケガはどう?」
う「え?」
母「ケガは大丈夫なの?」
う「え、うん。あぁちゃんといをちゃんにバンソーコもらったんだよ!」
母「そう。優しいねぇ」
う「うん!」


 今日も、うっぴぃは泣き虫です。だけど、友達思いの優しい泣き虫なんです。
 ほら、今日もあぁちゃんと、いをちゃんと、うっぴぃが楽しそうに遊んでいるよ。

あ「うっぴぃ!いくよ!」
い「遅いぞ!」
う「待ってよー!いたっ!」

うっぴぃ、また転びました。

あ「大丈夫か?」
い「バンソーコあるよ」
う「うん!大丈夫。へへ、ありがとう」

仲良し三人組は、今日も楽しく遊んでいます。


うっぴぃは、もうしょんぼりしても平気です。だって、だってね。仲間がいてくれるからだよ!

う「そうだよ……ね?『トラちゃん』!」
ト『ふふふ』



(おわり)

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