タンポポの綿毛とブルーインパルス
タンポポの綿毛がわたしの横を通りすぎて、追いこしていった。
一瞬の出会いに命のかがやきを見た。
そういえば、昼にはブルーインパルスを見た。五輪の色を描いて、次の瞬間には雲と混じっていった。
人々はカメラをとり、子供たちはわあーっ! と声援を送った。あっという間だったね、と、笑顔を送りあっていた。
綿毛の旅と、ブルーインパルスの描いた空。
どちらも束の間の出来事で、かがやいていた。
そうして、すぐに、日常の夏の風景に戻っていた。
ただ、心にはかがやきがちらついていた。
* * * * *
(ここからエッセイ)
おそらく、たった一つのかがやきで、その瞬間から素晴らしい世界へとガラリと変わる、ということはまれだろう。
かがやきのあとには、世界は日常の風景にもどっていることの方が多いだろう、と思う。
では、なにか変わったものがあるのか、というと、あると思う。変わるものとは、かがやきを見た人の心の中だ。
かがやきを見た人は、日常の風景の中に、小さなかがやきを見つけられるようになる。
例えば、綿毛の懸命に生きる姿に勇気づけられることがある。
例えば、家族で空を見上げてはしゃいだ思い出が、未来で希望になることもある。
その変化は、ささやかで、小さな力だ。
それでも、その人たちの行動には何らかの変化が出てくる。
それは、世界がほんの少しだけ、素晴らしい世界に変わることだと思う。
ほんの一瞬の、命のかがやきや、喜びのかがやき。そういうものに、人は心を動かされる。
ただ、それは本当に小さな力で。
たった一つでは、力が弱い。
ただ、今まで何度もそのような命や喜びのかがやきに出逢ってきたと思う。そういうかがやきがたくさん積み重ねられることで、いつしか心の希望となり、だんだんと素晴らしい世界に近づける、のではないかなと思うのだ。
だから、もし、これからの光が見えないような、そんなとき。よくなるためには、まず、かがやきに出逢うこと。何度も繰り返されるかがやきに出逢う。それには、自然の命を観ることと、誠心誠意がんばっている人を知ることがよいと思う。
それから、できるなら、小さなかがやきの一つになれるようになれれば、嬉しいね、と思う。できれば、何回も何回も。形は違ってもよいから、ほんの小さいことでよいから、繰り返し繰り返し、かがやいてみたい。それには、とりあえず誠心誠意、心をこめてがんばってみようかな。と、自分に思う。
(ここから結論)
一見すると、大きなかがやきは一瞬でかき消えてしまうように見える。
だけど本当は、小さなかがやきは心の中にずっとある。それに何度もあるから、ささいなかがやきがやがて、永遠の大きなかがやきとなる。
そして、いつの日かその人を支えてくれるようになる。
わたしはそう、思った。
そんな、いつもの夏の昼下がり。今日はまぶしかったな。