結(C、おはよね、PJさま)謎の紳士編
起
承
転
結
成人式、この町にキミは来なかった。
え?
ハッピーエンドじゃないの???
僕は。
たまらず。
飛んでいった。
キミの街へ。
改札。
「……あれ?」
「ねぇ、待ってたよ!」
まさか。どうして、キミがいるんだい?
キミは懐かしいほほ笑みを浮かべていた。
「行くよ!」
「え??」
「ほら!」
高い高い摩天楼の展望台。夜景が見える。
「ねえ、こっちに来てよ」
僕はおずおずとしていた。遠くで花火が上がった。
「綺麗……」
キミも綺麗になった。いや、綺麗過ぎる。
キミは昔と変わってしまったのだろうか。
「あのね。私、結婚するんだ」
「あ……、おめでとう」
「ありがとう」
キミに寂しそうな笑顔がよぎった。
「良かったよ」
「本当に?」
「……当たり前だろ!キミが幸せになるんだ!!」
「……ありがとう」
「じゃ、さよなら!」
僕は走っていた。
けど、人ごみにぶつかって転んだ。ああ、都会なんか嫌いだ!!
「おや? 失礼。大丈夫ですかな?」
謎の紳士から、思わず優しい言葉をかけられた。
「あ、はあ。すみません。ぶつかって。大丈夫です」
謎の紳士はにっこり笑った。
「それは良かった!」
「すみませんでした。ありがとうございました」
僕が去ろうとすると、
「ああ、ちょっと待ってくれたまえ」
「はい?」
紳士は小さな貝殻のイヤリングを掲げた。それは、僕が彼女に渡そうとしていた……プレゼントだった。
「諦めるのかい?」
「え?」
紳士は不可思議な笑みを浮かべて続けた。
「本当の気持ち、知っているのだろう?」
「……」
僕は、イヤリングを受け取って、もう一度キミを探した。
さっきの場所に、まだキミはいた。
「あ、あのさ。僕と町へ帰ろう」
「……え?」
「本当は嫌なんだろう?」
「……よく、わかるね?」
「当たり前だ」
「……」
「これ」
僕はイヤリングを差し出した。
「僕と町へ帰ろう」
「帰っていいのかな」
「いいとも」
僕らはほほ笑み合った。
「帰ろう」
「うん」
ふと思い出して振り向くと、先ほどの紳士は、もういなくなっていた。
……数十年後。
僕たち二人は、町の御長寿夫婦として笑っている。
ある日、どこかで会ったことのあるような紳士がやってきた。
「こんにちは」
謎の紳士はにっこり笑った。
「こんにちは。どこかでお会いしましたか?」
「いいえ。ここはいい町ですね?」
「ええ、そうでしょう。みんなの誇りです」
「いつまでも、大切にされてくださいね。この町も、奥様も」
「はい。ずっと大切にします」
町は夏。あの日と同じ。
キミとこの町に。ずっと、一緒に。
めでたしめでたし。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
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