物語(E):夜明け前とシャープペンシル
大橋ちよさん曲
E『Sound Of Widening Love/大橋ちよ』
物語:夜明け前とシャープペンシル
コツコツ、コツコツ。
ノートでシャープペンシルは勉強をしている。
『お送りした曲は、~で、~。でした!』
コツコツ、コツコツ。
受験生というものは、辛いけど、それより半纏があったかい。深夜にFMラジオもかけて。まさに、ザ・受験生って気分。
『さて、次のお便りは、ラジオネーム冬の大三角錐さんから。ありがとう! DJ星屑っちさん、こんばんちくわぶ。はい、こんばんちくわぶ。ちくわぶ好きなのかな? 俺も好き。えー、私には好きな人がいます。同じ部活で、だけど遠くて、いつもなんとなくヨソヨソしくしてしまいます。うんうん。あるよねー。どうしたら、仲良くなれますか? いつもありがとうございます。っと、いうことですね。ふーむ。んー。これは~。』
コツ、……。
ノートでシャープペンシルの音が止まった。
私も同じだった。
同じ天文部にいる、彼は。いつも近くにいるような気がするのだけれど、いつも遠くにいるような気がするのは、なぜだったのかな。
とはいえ、私も彼も、受験生。恋、どころでは、ない。進学すれば、離ればなれになってしまうんだろうな……。
彼の隣で見た星空は綺麗だった。だけど宇宙は、あまりにも広すぎて。彼と私は、あまりにも遠すぎた。近づきたいと思えば思うほど、離れていってしまう気がしてならないのは何故だろう。それって宇宙の膨張のせいだろうか。それとも永遠とか無限とかいう宇宙の時空のせいだろうか。この想いも宇宙の時空の深みに沈んでしまうのかな。それで夜が明けたら、あってもなかったことになってしまって……。
『……と、してみるのはどうかな?』
あ、大事なところ聞き逃した。
『そうだね~。んー、じゃ、この曲、かけるよ! 大橋ちよで、Sound Of Widening Love』
『お送りしたのは、大橋ちよで、Sound Of Widening Love。でした!』
……。
カーテンを少しだけ開けると、少しだけ夜空が白んできている。ただ、ひときわ輝く星(おそらく金星だろう)、その星は綺麗に輝いている。
もしかしたらだけど。夜明けには、私たちの未来とかなにかを暗示する、あの星みたいな希望みたいなものとかもあるのかもしれない。そんなような気がしたような……。
……コツコツ、コツコツ。
ノートの上で、シャープペンシルが走り出した。
夜明けはすぐそこ、と信じて。
おわり
以上、【 うたスト 】 歌からストーリー︓歌を聴いて物語を作ろう︕
への、応募作品でした。
どうも、ありがとうございました。
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