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ストーリーで学ぶ|『美咲と里奈の温泉旅行 ~年末年始に見つけたビジネスのヒント~』(新春書下ろし短編・前編)

謹賀新年

皆様、明けましておめでとうございます。

Kindle本
『マーケティング女子、起業します!』の
発売を記念した短編小説をお届けいたします。
年末にたくさんの方にダウンロードいただき、
心より感謝申し上げます。

おかげさまで、
以下の順位を獲得することができました。

📊 Kindleストアランキング
・総合40位
・マーケティング部門1位
・産業研究部門1位
・起業部門1位
・投資・金融・会社経営部門1位
・ビジネス関連資格検定部門1位

この場をお借りして、
皆様への感謝を申し上げます。

なお、KindleUnlimitedをご利用の方は、
引き続き無料でお読みいただけます。

今回は、本編でお馴染みの美咲と里奈が、
年末年始の温泉旅行で
見つけた新たなビジネスのヒントをお届けします。

【登場人物】

今井美咲(二十九歳)

  • 職業: システム会社の営業に異動して1年目(同社でSE経験6年)

  • 資格: 応用情報技術者、中小企業診断士の勉強中

  • 趣味: カフェ巡り、サッカー観戦

佐伯里奈(二十九歳) 

  • 職業: 人材派遣会社の総務、美咲の大学時代の友人

  • 資格: 中小企業診断士、行政書士、日商簿記検定1級

  • 趣味: ヨガ、読書、写真

【美咲と里奈の温泉旅行 ・前編】

「美咲、仕事納め終わったの?」

大学時代からの親友・佐伯里奈からのLINEに、
今井美咲は疲れた顔をほころばせながら
返信しました。

「うん、今終わったところ。
今年も色々あったなぁ」

「お疲れ様!
じゃあ、明日から温泉旅行ね。
楽しみ!」

スマートフォンの画面を見つめながら、
美咲は今年一年を振り返っていました。

システム会社の営業として働きながら、
副業でウェブマーケティングの仕事を始めたこと。

中小企業診断士の勉強を本格的に始めたこと。

新しいことにチャレンジした一年でした。

デスクの上には、
まだ開きかけの中小企業診断士の参考書が
置かれています。
来年は絶対に合格したい──
その思いを胸に、
美咲は荷物をまとめ始めました。

翌朝、二人は北陸新幹線に乗って、
石川県の加賀温泉に向かっていました。

車窓の外には雪景色が広がり、
慌ただしい都会の雰囲気が遠ざかっていきます。

新幹線の中で、
里奈は美咲の様子を気にかけるように
尋ねました。

「美咲、最近の副業の調子は、どう。
クライアントの反応とか」

「うん、やりがいはあるんだけど、
まだまだ勉強不足かな。
提案の仕方とか、もっと工夫が必要で」

美咲は少し言葉を詰まらせます。

「それに、
中小企業診断士の勉強と両立するのが、
正直きつくて」

「無理しすぎないでね。
でも、そんな頑張り屋の美咲を見てると、
私まで刺激を受けちゃうわ」

里奈は優しく微笑みかけました。
中小企業診断士と行政書士の資格を持ち、
第一線で活躍する里奈だからこそ、
美咲の頑張りが身に染みて分かるのです。

金沢駅で特急に乗り換えると、
冬の日本海と雪をかぶった
山々の絶景が広がりました。

東京からおよそ3時間。

少し遠いけれど、
その分、日常から離れた
特別な時間が過ごせそうです。

「この景色、インスタ映えするわね」

里奈が窓の外を指さします。

「そうね。こういう体験価値って、
言葉では伝えきれないものがあるわ」

美咲は、ふとマーケティングの観点から
考えていました。

宿に到着すると、
雪化粧をした玄関先で着物姿の女将さんが
出迎えてくれました。
深緑の着物に金糸で松竹梅が織り込まれ、
年末年始にふさわしい装いです。
玄関には立派な門松が飾られ、
古き良き日本の旅館の雰囲気が漂います。

「まあ、お二人様。
大学生の時以来ですね。
今年最後のお客様なんですよ。
ああ、あの時のお嬢様方ですね。
就職も決まって、
卒業旅行に来たと目を輝かせながら
おっしゃっていましたね」

美咲と里奈は驚きの表情を交わしました。
5年前に一度来ただけの客のことを、
よく覚えていてくれたものです。

「覚えていてくださったんですね」

女将さんは、
まるで我が子を見るような優しい目で
二人を見つめます。

部屋は8畳の和室。
大きな窓から見える雪景色に、
二人は思わず「すごい」と声を上げました。
庭には雪を載せた石灯籠が佇み、
趣深い景色が広がっています。

「大晦日の夜は、
年越しそばをご用意いたします。
お近くのお寺の除夜の鐘も、
この部屋から聞こえますのよ。
今年の締めくくりにぴったりだと思いまして、
特別にこのお部屋を
ご用意させていただきました」

女将さんのきめ細やかな心配りに、
二人は感激しました。

女将さんが退室すると、
美咲と里奈は浴衣に着替えて、
さっそくお茶を飲みながらくつろぎました。
縁側に座り、雪景色を眺めながら、
ゆっくりと時間が流れていきます。

「今年は本当に色々あったわね」

里奈が静かに言いました。

「そうなの。副業も始めたし、
中小企業診断士の資格の勉強も本格的に。
でも、まだまだ自分の提案力に
自信が持てなくて」

「美咲らしいわ。
いつも頑張り過ぎるところ」

里奈は美咲の肩をポンと叩きます。

「でも、たまにはこうやって
ゆっくりするのも大切よ。
力を抜いた時に、
新しい気づきが訪れることもあるでしょ」

夕食は個室の食事処で。
大晦日前日の特別メニューです。
女将さん自ら料理を運んできて、
一品一品について丁寧に説明してくれます。

「こちらの蟹は地元の漁港で今朝揚がったもの。
漁師さんが丁寧に目利きした特別な一品です。
お野菜は加賀野菜と呼ばれる伝統野菜。
地元の農家さんが何代も守り続けてきた
味わいをお楽しみください」

女将さんは単なる料理の説明ではなく、
地域の歴史や生産者の想いまで、
いきいきと伝えてくれるのです。

「美味しいのはもちろんだけど」と美咲。

「こうして背景を知ると、
もっと特別な気持ちになるわね。
これって、私たちの仕事にも通じるかも」

「どういうこと?」

里奈が興味深そうに尋ねます。

「商品やサービスの説明だけじゃなくて、
その背景にある想いや
価値まで伝えることの大切さ。
女将さんのように、
相手の心に響く伝え方があるんだなって」

美咲の言葉に、
里奈は深く頷きました。

夜、二人は露天風呂に浸かりました。
雪が静かに舞い降りる中、
温かな湯船に身を委ねます。

湯気の向こうに見える雪景色は幻想的で、
温泉街の明かりが柔らかく光っています。

「はぁ、心が落ち着くわ」

美咲は冬の星空を見上げながら、
静かにつぶやきました。
冷たい空気と温かな湯の心地よさに、
日頃の疲れが溶けていくようです。

「ほんと。この雪見風呂、最高ね」

里奈も頬を緩ませます。

「こうしてゆっくりつかっていると、
色んなことが整理できるわね」

美咲は湯船に深く身を沈めながら言いました。

「そうね。
今年のこととか、
これからのこととか」

里奈は美咲の言葉に頷きました。

「ねえ、里奈」

「なに?」

「この宿って、
すごく勉強になるわ。
お料理一つにしても、
ただ美味しいものを出すだけじゃない。
その地域や作り手の想いまで、
丁寧に伝えてくれる」

「その視点、さすが美咲ね。
でも、仕事のことも考えながら
リラックスできてるの?」

里奈は少し意地悪そうに笑います。

「あ、ごめん。
仕事のこと考えるの禁止だったよね」

「ううん、それでいいのよ。
気づきは自然に訪れるものだから。
ね、続きは明日にしましょ。
今は、この素敵な雪見風呂を
存分に楽しみましょ」

美咲は黙って頷き、
再び夜空を見上げました。
雪は相変わらず静かに降り続け、
温泉の湯気と混ざり合って
幻想的な風景を作っています。

明日は大晦日。
そして新しい年の始まり。
美咲の心には、
新たな気づきの種が芽生え始めていました。

(後編に続く)

▼本編はこちら


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