[Vol.2]「サステナビリティトランジション」とは?
こんにちは、東京科学大学 大橋研究室 トランジションデザイン研究会です。
初回の記事ではトランジションデザインの概要についてご紹介しました。
本研究会では、まずはじめに、分野に関する理論的な変遷やその広がりを把握するために論文の輪読会を実施することにしました。第1回目となる今回は、そもそも「トランジションとは何か?」を理解すべく、中でも持続可能な社会の実現に向けた「サステナビリティトランジション」に関するレビュー論文を読み、ディスカッションを行いました。
前回の記事でもあった通り、環境問題など地球規模の問題や社会的課題の多くが現在の持続不可能な社会技術システムによって引き起こされているという認識が高まり、システムのトランジションが要求されつつあります。ではそもそもトランジションとはどのようなものなのでしょうか?これらの流れを背景にトランジションの、中でも持続可能性な社会への移行をテーマとした研究が近年増加しておりそれらは、サステナビリティトランジション研究と呼ばれています。この分野を理解することはトランジションデザインを研究する上で非常に大切です。
今回は2019年に発表されたJonathan Köhler、Frank W. Geelsらの「An agenda for sustainability transitions research: State of the art and future directions」を輪読し、本論文についてメンバーでディスカッションした内容を紹介します。
ディスカッションした論文について
今回輪読をした「An agenda for sustainability transitions research: State of the art and future directions (2019)」はサステナビリティトランジションに関心のある研究者が集う国際的なネットワーク Sustainability Transition Research Network(STRN) が編纂した論文で、2009年のネットワーク発足時から、関連するテーマや参加する研究者が急速に多様化していったことを背景に、研究として取り組むアジェンダを整理することを目的に発表されました。
本論文は、トランジションを分析するための主要なフレームワーク、テーマとしての広がり、トランジションというテーマが持つ特徴について具体的に述べています。
サステナビリティトランジションを捉えるフレーム
気候変動や生物多様性の喪失、資源枯渇など。かつてない規模の課題に直面する中で、持続可能な社会への移行をどのように進めていくか?という問いが2000年代初頭から本格的にアカデミアで議論されるようになりました。持続可能性を考えていく上で重要なのは、現状の社会の仕組みそれ自体を捉え直し、新しいシステムの構築に向けて根本的に変化を起こそうとする視点です。システム自体の移行に向けてアプローチをしていくために、サスティナビリティトランジションを扱う研究分野では、トランジションというダイナミクスを説明するための様々なフレームワークが参照されるようになりました。中でも多く用いられているのがMulit-Level Perspective(MLP)、Technological Innovation System(TIS)、Strategic Niche Management(SNM)、Transition Management(TM)など。システムをマクロな視点から捉えた理論からニッチに注目し、ミクロな視点でトランジションを捉えるものまで様々な理論が用いられるようになりました。それぞれの理論の詳細については今後別の記事でコラムとしてまとめる予定ですので、お楽しみに。
サステナビリティトランジション研究の広がり
サステナビリティトランジションが多元的かつ学際的な分野であることを背景に、多様な切り口でトランジションを推進するための研究が進められています。STRNは7つのテーマを2018年までに発表された研究の中から抽出しました。以下ではうち2つを統合して、以下の6つの観点から紹介します。
権力・政治から考えるトランジション
ガバナンスで捉えるトランジション
企業・産業の役割から見るトランジション
市民社会・日常生活・文化から介入するトランジション
地理的な特徴から考えるトランジション
倫理的に捉えるトランジション
政治と権力から考えるトランジション
政治学やガバナンス研究の分野ではサステナビリティトランジションにおいて権力構造や政治プロセスの重要性に注目しています。政治と権力が中心的要素となる理由は、トランジションに向かうプロセスが本質的に政治的な性質を持つからです。異なる個人やグループが望ましい未来像を描き、その実現に向けて行動する際には生じる意見の相違や利害の対立が生じます。特に、現在の主流の仕組みや慣行(レジーム)と、新たに生まれつつある革新的な取り組み(ニッチ)の間では、現状維持を望む勢力と変革を求める勢力との間で激しい対立が生じることがあります。この対立は、単なる市場競争を超えて、政策決定や資源配分、社会的な規範の形成など、より広範な政治的領域にまで及ぶことがあります。
政治的アクターの役割は極めて重要で、彼らは移行を大きく促進することもあれば、既得権益を守るために阻害することもあります。したがって、政治的プロセスを綿密に調査し、多様なステークホルダーとの協働設計(co-design)を行うことが不可欠だとする議論が進んでいます。
ガバナンスで捉えるトランジション
様々な分野でサステナビリティへの移行が議論されていますが、中でもこの移行を「管理と誘導(=ガバナンスしようとする)」するプロセスは、複雑で不確実な変化を望ましい方向に導くことを目指すものとして重要視されています。このプロセスには、政府だけでなく、企業、市民団体、研究機関など、様々な立場の人々が関わっています。このガバナンスのプロセスの特徴は、トップダウンな管理だけでなく、様々な立場の人々の相互作用によって形作られていく点です。
具体的な取り組みとして、様々な立場の人々が集まって協力関係を築き、共通の未来像を描く「トランジション・アリーナ」の創出が提案されています。このアリーナは、科学、政策、市民社会、ビジネスのアクターたちが競争的ではなく協調的な関係を築く場として機能します。ただし、既存の社会技術システムが深く根付いているために、このような協力関係の構築には様々な障壁が存在するため、これを「管理と誘導」するガバナンスが重要になるのです。トランジションにおける各段階でのガバナンスのあり方や、政策の最適な組み合わせ方、さらには変化を促進する「仲介者」の役割などが挙げられています。特に、エネルギー機関やイノベーション機関といった仲介組織が、どのように移行を促進し、既存のレジームを不安定化させ、移行の様々な段階で機能するかについて、研究と実践が求められています。
このガバナンスにおける「トランジションアリーナ」ついて、私たち研究会ではアカデミアが重要な役割を果たせるのではないかと考えています。研究者たちは、複雑な移行プロセスを分析し、効果的なガバナンスの方法を提案するとともに、実践的な場面においても中立的な立場から様々なアクターの橋渡し役として貢献できる可能性があるのではないでしょうか。大橋研究室では、半導体や畜産、持続可能な食など様々なテーマでトランジションアリーナの構築とその実践について研究を進めています。
企業と産業の役割から見るトランジション
イノベーション研究、マネジメント理論、マーケティング、金融システム論などの分野では、サステナビリティトランジションにおける企業と産業の役割を多角的に捉えています。これらの分野の視点は、技術開発から市場形成、制度変化までの幅広いプロセスを理解する上で重要です。
企業は新製品・サービス開発や市場創造を通じて移行に重要な役割を果たし、新たな技術の開発や革新的なビジネスモデルの創出が、サステナビリティへの移行を促進する重要な要素になりえます。同時に、企業は社会的な言説や問題の枠組みを形成したり、政策立案者へのロビー活動を行ったり、業界標準を開発したりすることで、より広範な制度的変化にも影響を与えています。
企業や産業がトランジションを推進していく上で以下のような観点が議論がされています:
新技術の成功には、技術開発だけでなく、それを受け入れる市場の形成、関連する産業のバリューチェーンの構築、そして適切な規制や制度の整備が同時に必要であること。
こうした複雑な課題に取り組むため、企業は他の企業や組織と協力関係を築く必要があること。
新しい取り組みに対しては、既存の仕組みや既得権益からの抵抗が大きいことが多く、企業と産業の側面からもこれを乗り越える努力が必要であること。
市民社会・日常生活・文化から介入するトランジション
社会学、行動学、消費者行動論、文化人類学といった分野では、トランジションを推進するための市民社会や個人の日常生活、文化的側面に注目しています。これらの分野では、移行プロセスにおける「ミクロ」レベルの重要性を指摘しています。 サステナビリティトランジション研究の視野は、政府や大企業だけでなく、地方自治体や市民社会、個々人の日常生活に至るまで、様々な規模と性質のアクターに広がっています。特に、草の根の市民レベルの活動、文化的な変化、社会運動なども重要な要素として認識されるようになりました。
ここでは日常的実践の重要性も強調され、消費パターンや生活様式の変化が移行において重要な役割を果たしていると考えられています。
地理的な特徴から考えるトランジション
トランジションの形は、地域やコンテクストによって大きく異なります。例えば、再生可能エネルギーへの移行を見ても、都市、地域、国によって、その進み方や採用される技術、政策が異なることがわかります。なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。経済地理学、制度地理学などの研究分野では、移行の地理的な違いを以下のように考察しています。
地域のビジョンと政策:前述のように政治と権力はトランジションに大きな影響を及ぼします。国だけでなく各地方自治体や地元のコミュニティが掲げる将来像や、それを実現するための方針は、地域のアクターたちの行動指針となります。
地域の文化や規範:環境への意識の高さ、地域に根付く文化やしきたり、地域内のネットワークにおける信頼関係など、インフォーマルな決まりや力も、トランジションの形に大きな影響を与えます。
地域資源:自然資源の有無や、産業の特徴、技術的な専門性、人材の能力など、地域が持つ資源によって、可能な選択肢や投資の方向性が変化します。
また、地理的トランジションにおいて特に注目すべき点は、トランジションは一つの場所に閉じられたものではなく「地域から地域へと伝播」していく性質を持っていることです。ある地域での実験的な取り組みが、ネットワークを通じて他の地域に広がり、そこでまた地域の文脈に応じた形に発展していくのです。例えば、発展途上国におけるトランジションでは、単に先進国の技術を導入するだけでなく、その地域に根ざした実験的な取り組みから、より持続可能な独自の発展経路が生まれつつあります。また、急速な都市化が進む中で、「スマートシティ」のような新しい概念も、それぞれの都市の文脈に応じて異なる形で実現されています。トランジションを地理的な視点から捉えることで、持続可能な社会への移行が、画一的なものではなく、地域の特徴を活かした多様な形を取りうることが見えてきます。
倫理的に捉えるトランジション
哲学、倫理学、開発学、社会政策などの分野では、サステナビリティトランジションに向かうプロセスに対する倫理的側面に注目しています。移行を進める際に倫理的側面、特に分配、正義、貧困の問題は切り離せません。環境問題だけでなく、貧困や人種、性別、年齢、民族間の格差といった社会的な課題も、トランジション研究の対象となりうることを指摘しています。これらの問題は社会構造に深く根ざしていますが、革新的な実践や構造的な変革によって解決される可能性があることを強調しています。未来を構想する際には、できるだけ多様な可能性を考慮することが重要ですが、同時に倫理的な観点から、どのような未来が望ましいのかを慎重に判断する必要があるとする議論が進められているのです。
このように、サステナビリティトランジション研究は、多様な分野で議論され、複数の視点を統合することで、サステナブルな社会への移行という複雑な課題に総合的にアプローチしています。この広範な視野があってこそ、現実世界の複雑な変化プロセスを理解し、望ましい未来への道筋を描くことが可能になるのです。
サステナビリティトランジションの特徴
拡張し続けているサステナビリティトランジション研究の切り口ですが、最後にこれらを俯瞰することで見えてくるトランジションの7つの特徴をご紹介します。
特徴1 Multi-dimensionality and co-evolution 「多様な要素の絡み合い」:様々な要素が互いに影響し合いながら共に進化
私たちの社会やそのシステムは技術、市場、消費習慣、文化、インフラ、政策、産業構造、サプライチェーンなど、さまざまな要素から成り立っています。このためサステナビリティトランジションを推進するプロセスでは、これらの要素や次元が同時に変化します。
移行は直線的なプロセスではなく、複数の要素が相互に影響し合いながら共に進化していく、複雑な過程です。たとえば技術の進化が新しい市場を生み出し、それが消費者の行動を変え、さらに政策やインフラの整備に影響を与えるというように、さまざまな要素が絡み合っています。このような相互依存の関係性は持続可能な社会への移行を実現するための鍵となります。
サステナビリティトランジションを成功させるためには、これらの多様な要素を理解し、協調して働きかけることが重要です。
特徴2 Multi-actor process 「多様な人々による参画」:様々な組織・人が協力しながら推進
サステナビリティトランジションには、学界、政治、産業界、市民社会、家庭など、さまざまなアクターや社会集団が参加しています。これらのアクターやグループは、それぞれ異なる資源、能力、信念、戦略、利益を持っており、協力しながら変革を進めることが求められます。
たとえば、学界は研究を通じて新しい知識を提供し、政策決定者はその知識をもとに法令や施策を策定します。また、企業は持続可能なビジネスモデルを提案し、市民社会はこれらの取り組みを支援する役割を果たします。このように、さまざまな視点やアプローチが融合することで、より効果的なトランジションが実現します。
ただし、トランジションは単一の理論や学問分野だけでは対処できない非常に複雑なプロセスです。社会の多様な側面や利害関係が絡み合うため、異なる分野の専門家や利害関係者が連携し、総合的なアプローチを採ることが不可欠です。このような協力が持続可能な未来を実現するための鍵となります。
特徴3 Stability and change 「現状維持vs変革」:現状を維持しようとする力と変化を推進しようとする力のせめぎあい
サステナビリティトランジションのプロセスには現状維持と変革が対立する難しさがあります。たとえば脱炭素を目指して電気自動車(EV)の推進を進める際、既存のガソリン車産業やそれに関連する製造業、インフラ、物流、商流など、深く根付いた既存のシステムが変革を阻む存在となりえます。このような状況では、既存の関係者や利害関係者が保守的な動きを見せる一方で、新たに変革を目指す勢力が常に拮抗することになります。
この相反する二つの志向をどのように調整していくかは、トランジションを考える上で非常に重要な観点です。既存の産業を完全に排除するのではなく、共存や共生を図る方法を模索することが求められ、これには関係者間の対話や協力が不可欠であり、相互理解を深めるためのプラットフォームの構築も重要です。
また、政策面でも変革を促進するインセンティブを提供しつつ、既存の産業や労働者の利益を守るバランスが必要です。このような調整を通じて、持続可能な未来に向けたトランジションが円滑に進むことが期待されます。
特徴4 Long-term process 「マラソンのような道のり」:長期的視野で取り組む段階的な変革
一般的に、サステナビリティトランジションは長期的かつ段階的なプロセスを伴います。急進的な技術革新や新しい実践は、まず小さなニッチ分野で出現し、広く普及するまでには長い時間がかかります。また、既存のシステムを不安定化させることや、既存のアクターの抵抗を克服するには、時間と努力が必要です。このような背景からトランジションは一朝一夕には実現しない複雑な過程となります。
トランジションを進めていく際には各段階ごとに取り組むべき内容が変化していくため、段階的に進めざるを得ないというのも大きな特徴です。初期段階では新しい技術の試行や小規模なプロジェクトの実施が重視されることが多いですが、次第に規模が拡大していくと社会全体への実装が求められます。この段階では、既存のインフラや政策を見直す必要が生じ、利害関係者間での調整や協力が不可欠になります。
最終的には、トランジションが進むにつれて、持続可能な社会を実現するための新たな制度や価値観が形成され、既存のシステムが次第に変化していくことが期待されます。このように、長期的かつ段階的なアプローチを通じて、持続可能性への移行が実現されるのです。
特徴5 Open-endedness and uncertainty 「不確実性への挑戦」:確実な答えや未来がわからない中での探索
あらゆる領域において、有望なイノベーションやイニシアティブは複数存在しますが、将来的にどれが優勢になるかを予測することは非常に難しく、不確実性を伴っています。このため、トランジションの経路は一つに決まることはなく、複数の選択肢が存在するのが一般的です。
未来はオープンエンドなものであり、サステナビリティトランジションは不確実性と常に向き合いながら進むプロセスです。例えば、特定の技術や政策が成功するかどうかは、社会の受け入れ方や経済の変化、さらには自然環境の影響など、多くの要因によって左右されます。予期しない結果や新たな課題が発生する可能性もあります。
このような状況下では、柔軟性や適応力が重要になります。新たな情報や状況の変化に応じて、戦略を見直し、必要な対応を迅速に行うことが求められます。つまりトランジションは単なる計画にとどまらず、実際に進行しながら進化していく動的なプロセスなのです。このダイナミックな特性を理解することが持続可能な未来に向けた道筋を模索する際の指針となります。
特徴6 Values, contestation, and disagreement 「多様な意見の交差点」:様々な価値観や考えが交錯する場
さまざまなアクターがトランジションに関わるため、異なる価値観や意見、さらには論争の衝突を避けることはできません。この衝突は、既存の利益を保ちたい側とそれを変えたい側との間で生じる相違を含んでいます。現状を維持したい既得権益を持つアクターは新しい技術や政策の導入に対して抵抗を示し、その一方で、変革を望むアクターは新しいアプローチを求めるため、対立が生まれます。
このような価値観や利害の相違は、トランジションの過程で必然的に発生するものです。しかし、こうした衝突を乗り越え、対話を通じて共通の理解を深めることが重要です。利害関係者間でのオープンなコミュニケーションを促進し、異なる意見を尊重しながら協力していくことで、持続可能な未来に向けた効果的なトランジションが実現される可能性が高まります。
最終的には対立を恐れずに多様な意見を受け入れ、それを活かすことで、より豊かで包括的な社会の構築が可能となります。
特徴7 Normative directionality「望ましい未来への指針」 持続可能な未来に向けて皆が共通して目指すべき方向を示す
「目指すべき方向を示す」とは、サステナビリティトランジションにおいて、関与するアクター間で共通の目標や指針を設定することを意味します。トランジションでは異なる背景や利害を持つアクターが協力関係を築くことが求められますが、その際には、何を目指すのか、どのような価値観を重視するのかを明確にする必要があります。
例えば、脱炭素社会を目指す場合、具体的にはどのような温室効果ガスの削減目標を設定するのか、再生可能エネルギーの導入割合をどのように計画するのかといった具体的な指標が必要です。これにより、各アクターは自らの行動や取り組みが全体の目標にどのように寄与するかを理解しやすくなります。
また、明確な目標が設定されることで、各アクター間のコミュニケーションや協力が円滑になり、取り組みが一体となって進むことが期待されます。逆に、目標や基準が曖昧なままでは、各アクターの意見や行動がバラバラになり、トランジション全体の進行を妨げる可能性があります。
このように、方向性に対する価値判断や目指すべき目標の明確化は、トランジションを効果的に進めるための重要なステップです。
サステナビリティトランジション研究のまとめ
サステナビリティトランジション研究は、複雑な社会変革プロセスを理解し、持続可能な未来への道筋を探る学際的な分野として発展してきました。この分野では、環境問題や社会的な課題に対処するために、さまざまな専門領域が統合され、相互に影響を与えながら研究が進められています。
研究の発展に伴い、研究者たちは方法論の再検討を行い、より効果的なアプローチを模索しています。たとえば、定量的なデータ分析だけでなく、質的な研究手法や事例研究が重視されるようになっています。具体的な事例を通じて、実際のトランジションのプロセスや課題を深く理解することができるため、これが研究の重要な特徴となっています。
一方で、詳細な事例研究が重視されることで、文脈やケースごとの個別固有の要素も多く見られ、得られた知見をどのように体系化していくべきかが課題となっています。特定の地域や状況に特有の要素が、他の場所での適用を難しくすることがあるため、固有性の尊重と、より広範囲への展開をどのように進めていくかは今後議論が必要です。さらに、サステナビリティトランジションにおけるシステムの複雑性をどのように扱うかも大きな論点です。このように、サステナビリティトランジション研究は、持続可能な社会を実現するための多様なアプローチと課題を包含する、ダイナミックな分野として進化しています。
今回はトランジション研究における、サスティナビリティトランジションについて解説しました。noteでは今後もトランジションデザイン研究について様々な記事をお届けしますので、次回以降もぜひお見逃しなく!持続可能な未来に向けた探求の旅を一緒に楽しみましょう!
著者
著者:
藤崎 真生子 井上 敬斗
編集:
木許宏美 尾﨑豊
イラスト:
柳瀬梨紗子
東京科学大学 環境・社会理工学院 大橋研究室
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