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モネ 連作の情景

モネ 連作の情景
@大阪中之島美術館 2024.2.10 – 2024.05.06

自然の光と色彩に対する並外れた感覚を持ち、柔らかい色使いとあたたかい光の表現を得意とし、自然の息遣いが感じられる作品を数多く残した印象派を代表する画家のモネ。

同じ場所やテーマに注目し、異なる天候、異なる時間、異なる季節を通して一瞬の表情や風の動き、時の移り変わりをカンヴァスに写しとった「連作」は、モネの画業から切り離して語ることはできません。移ろいゆく景色と、その全ての表情を描き留めようとしたモネの時と光に対する探究心が感じられる「連作」は、巨匠モネの画家としての芸術的精神を色濃く映し出していると言えるのかもしれません。

大阪中之島美術館HPより抜粋

今年の3月に行ってきました。

大人気で、チケット売り場に長い列ができていました。
モネ・フェルメール・ゴッホは、日本での人気が高いですよね。

セキセイ(株) アゾン®︎ アーティストツインリングノート・メモ
絵画コラボの商品ラインナップからも人気がうかがえます



今回のモネの絵画で見たかったのは「筆触分割」。



色彩を学び、絵の具での表現では
混色によって明るさが減る(=減法混色/CMYK)
ことを学びました。

逆に、テレビやモニターなど
暗闇でも見ることができる
発光体での表現は
混色によって明かりが増します
。(=加法混色/RGB)

例えば、1灯のライトで部屋を照らすのと
3灯のライトで照らすのでは、
数が増える方が明るくなりますよね。



絵の具などの色材に当てはまる
減法混色では、

絵の具を混ぜたり重ねたりすることで
光がどんどん吸収されるので
絵がどんどん暗くなっていってしまうんですね。


印象主義で代表的な
マネ・モネ・セザンヌ・ルノワールなどの画家たちは、

・アカデミーが高貴なジャンルとした歴史画ではなく風景画を描き
・風景画を描くのに戸外で制作し
・パレット上で混色しない小さな筆触で一瞬の情景を書き
・アカデミーのサロンに入選しにくいので、独自のグループ展を開催した

という特徴があります。



ここで使われた「筆触分割」という技法は
画面に筆の跡を残さないもので、
パレット上で絵の具を混ぜ合わせず
一つ一つの色を隣り合うように配置することで、
網膜上で擬似的に混ざり合ったように認識させる
という
アカデミーの完成基準と相反するものでした。

自然の明るい「光」の表現のために
写実性を犠牲にしたとも言えます。

形や立体感にフォーカスすれば
絵の具や筆を重ねて陰影を表現することになります。

緩やかでくっきりとした形をなさない表現方法は、
自然の明るい光を画面で表すためのものなんですね。


言葉で説明するよりも
写真で見た方が「筆触分割」の技法が
わかりやすいので写真を載せます。


この藤を描いた絵画、

藤の習作(1 9 1 9 ‒ 2 0 年 、ジ ヴ ェ ル ニ ー)



近くまで寄るとこんな感じで、全く印象が違います。
逆に言えば寄ると何の絵かもわからないです。


展覧会の構成は1〜5章に分かれており、
章を追うごとに制作年数を重ねていくのですが、
私たちがイメージする、THE モネ的な作品は
殆どが5章付近に描かれているんですよね。

5章では作品もとても大きく、
こんなに大きな作品を、筆触分割の技法で描くのは
どれほど難しいことだろうと
自然を捉える画家の執念と情熱にゾッとするほどでした。


セザンヌの有名な言葉、
「モネはひとつの眼にすぎない。しかし何という眼なのだろう」
その言葉の的確さを、一つ一つの作品が物語っていました。


睡蓮(1907年、ジヴェルニー)


「睡蓮」は今回の展覧会のチラシにもなっていたのですが、
緩やかで境界を感じないタッチやおぼろげな形など
近くで見ると印象が異なるのを感じていただけると思います。



ある程度の距離をとって見ることができるようにか、
台座が大きく設けられていたのも印象的でした。



モネの作品は
明度は高いですが
彩度とコントラストが低く、
明るく優美な印象を与えるので
インテリアにも取り入れやすいものが
多い印象です。


ルノワールは、
「チューブ絵の具が発明されなかったら印象派も生まれなかった」
とまで評したと言われ

アトリエ内で活動していた画家たちが
チューブ絵の具の発明から外で描くようになり、
太陽光の下の自然の美しさを
描いた印象派の光の世界。

外の光を絵画に収めた作品を
現代は室内に飾ることができる事にも
何だか趣深いものを感じます。


第一回印象派展から150年の今年、
10月12日からはあべのハルカス美術館で
印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
の特別展が始まるので、そちらも楽しみです。


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