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孤独のグルメに登場した地元民に愛される洋食キッチン(キッチン友/白楽/洋食キッチン)

つい何週間か前の話になるが、知人が「横浜の方に行き着けの良い魚屋があるんだよ。息子がマグロ好きならそこで買ってみなよ」と教えてくれた。
「ほほう」と興味を持つと、なんと有り難いことに、車でその店まで連れて行ってくれるという。

これはイイ話とばかりにホイホイ乗り込み、やって来たのは東急東横線の白楽駅から程近い六角橋商店街。この商店街は非常に賑わっていて、業種の幅も広く、東京23区以外でここまでの規模の商店街がしっかり生きているというのは、非常に珍しいケースだと思われる。

この辺の詳しい話は、私が書いた商店街本に書いてあるので、もしよかったら読んでね!
ちなみにこの本は、真夏の最悪な気候の時に、東京中の商店街を実際に歩き回って靴を何足も履き潰し、足をマメだらけにしながら商店街とその周辺の生活動線まで見て回った上で書いたという、あまりにも無駄に力の入った内容でございます。

さて、そんな宣伝はともかく六角橋の商店街について語らせて欲しい。この街は、我が愛する板橋区にも似た雰囲気があるのだが、ぶっちゃけ板橋の大山商店街なんかよりも、はるかに昭和感がある。

また造りも独特で、基本は大通りと路地が組み合わさった碁盤の目のような形なのだが、メインの大通りに沿うように、上がアーケードになった細い路地(仲見世通り)がある。
大通りの方はいたって普通の活気ある商店街という雰囲気なのだが、味があり過ぎるのは仲見世通りのほう。

ストリートビューなどを見ていただくと、雰囲気が伝わると思います

この写真は特に寂れた場所を写した為に廃墟チックだけれども、実際はこんな感じのガチレトロなアーケードの細い路地に、多くの店がひしめき合っている。
店の内容も普通にお魚屋さんだったり、飲食店だったり、ガチャガチャのカプセルトイを収集してセット売りしているようなお店だったりと、何でもアリな感じ。

あまりにも面白すぎる商店街なので、これはこれでいつかレポートしたいなとも思うのだが、今回は商店街ではなく洋食キッチンが主役なのをいま思い出した。我ながら驚いた。

ちょうどお昼時だったので、お目当てのマグロが美味しいという魚屋さんに「この辺りでオススメのお店ある?」と聞いてみたところ「ベタだけどキッチン友さんはおいしいですよ」と教えられたのだが、道順を適当に聞き流してしまい、迷路のような細い路地を彷徨い歩くハメに。
やっとの事で辿り着いたそのお店は、ご覧のようなナイス過ぎる外観。

だが、この店の雰囲気を見て何かモヤモヤを感じた訳で……。
それもそのはずで、これは後で分かる事だが、この店は孤独のグルメで取り上げられており、私はオンエアを見てこのあまりに独特過ぎる佇まいに強烈なインパクトを受けていたのだ。
あまりにも偶然の出会いだったためすぐには思い出せなかったが、店の外観を見た際に感じたモヤモヤの理由はそれだったのである。

この店は孤独のグルメの存在など関係なく、普通に地元民に愛されまくっているようで、店内は通い慣れていそうなお客さんでほぼ満席。ギリギリ2階のテーブルが一か所だけ空いていた。
そういう状況だったため、入店時にマスターから「今からだと1時間くらいかかりますよ」と声をかけられたのだが、逆に「味を確かめたい!」と気になってしまい、覚悟を決めて籠城戦に突入。

注文から本当に1時間して、やっとお料理が到着。そりゃこの注文数を、狭い厨房でお父ちゃん1人で捌いてたら、そりゃ時間もかかるよね。

で、写真は知人が頼んだペテカツランチ。これにご飯と味噌汁が付いて850円と中々に良心的な価格。
薄目のカツはサクサクで、そこに昔ながらの洋食屋さん味のデミソースがかかっている。
これは危ない、スナック感覚でサクサク食べれてしまうのは非常に危ない!
付け合わせのスパゲティなんかも「これこれ」という味付けで、40を過ぎたオッサンとしては郷愁を感じさせる見事な ”あの洋食キッチン味” だ。

だが、ペテカツ以上に「これだ!」と感動したのが、写真の友風焼き(ライス付き800円)。
これは大量の玉ねぎと豚肉を、ニンニク醤油系のタレで炒めた逸品で、言うなれば神保町などにある学生向けキッチンを思わせる悪い味である。
ニンニク醤油と豚肉の卑怯すぎる組み合わせに、ほんのり甘い玉ねぎが加わって、そりゃ旨くない訳がないだろうと。気付いたら米もなくなるわ。

いやあ、商店街にはオンリーワンな雰囲気と活気があって、それだけで楽しい気持ちになれるのに、こんな良い洋食キッチンまであるなんて。思わず「お金持ちになったら白楽にセカンドハウス借りたい」と口走っていた。

全然お店を回れなかったので、次回はもっとゆっくりお散歩してみたいなと思った次第である。


ちなみに、知人に教わったこの商店街の魚屋さんで買ったマグロですが、インドマグロの赤身が柵ひとつ千円しないくらいで、味がとても良く、息子と女房にあっという間に食い尽くされました。

いいんですよ、いっぱい食べて下さるのは嬉しい事ですし、傷ませても仕方ないですし。でも、正直に言えばもう少しお父さんもマグロを食べられるかなと思っていたんですが……。
いえ、女房様と息子様が喜んでくださったならそれで満足なんですけれどもね。……ね。

[店名] キッチン友
[住所] 神奈川県横浜市神奈川区六角橋1-7-21
[TEL] 045-431-1152
[営業時間] 12:00~22:00(平日のみ15:30~17:30休み)
[定休日] 水曜(月2回水木連休)


◇ 著書の宣伝です
『魚屋がない商店街は危ない 東京23区の商店街と地域格差』
MM新書・マイクロマガジン社
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「商店街の衰退は街の格差を生む。繁盛している商店街は住民の教養が高い。では、商店街が廃れた地域の住民は…?」
板橋区の旧宿場町の商店街出身の私が、東京23区の主だった殆どすべての商店街と、商店街を中心とした生活動線を歩いて回り、その結果を1冊の本にまとめました。
滅びゆく存在となってしまっている商店街こそ、「誰もが豊かに」という日本の文化レベルの高さを底支えしている存在だったのです。

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荒井禎雄(フリーライター兼主夫)
皆様からの金銭サポートがあると、子育てに追われる哀れなオッサンの生活がいくらか楽になると思わせておいて、息子の玩具やお菓子や遊園地代で殆ど溶けます。