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伊藤和子弁護士(HRN)と私、「どちらの言い分が正しかったか」#1

伊藤和子弁護士(HRN)と私、「どちらの言い分が正しかったか」
#1  https://note.com/oharan/n/nf168419f7531
#2 https://note.com/oharan/n/nc4cb6efaec4f
#3 https://note.com/oharan/n/ndcbea62b4d66
#4 https://note.com/oharan/n/ndf5441b7c2bd
※ 専門的な話も多いので#1からお読みください


何回かに分けて伊藤和子弁護士や、彼女が主宰する人権団体HRNの主張に対する批判記事を掲載したが、実はあの一連の記事にはハッキリとしたオチがある。「どちらの言い分が正しかったのか」という結論が出ているのだ。

・伊藤和子弁護士の「AV強要問題」に対する反論#1
https://note.com/oharan/n/n29b4c6b00ce4
・伊藤和子弁護士の「AV強要問題」に対する反論#2
https://note.com/oharan/n/nf50dc98724a9
・伊藤和子弁護士の「AV強要問題」に対する反論#3
https://note.com/oharan/n/n4d4c127caa65
・伊藤和子弁護士の「AV強要問題」に対する反論#4
https://note.com/oharan/n/nf97dbf02c2e8

これらはAV出演強要問題に揺れていた当時に書いたものだったのだが、この記事をWEB媒体に掲載して貰ったその直後に、AV業界を揺るがす逮捕劇が何度も何度も巻き起こった。
その流れの中で、AV女優のプロダクションは立場が上の人間から順番に ”片っ端から” 逮捕されてしまい、経営面を見られる人間も、仕事で女優について回るマネージャーも致命的なまでに不足。その結果、小規模プロダクションの統廃合が一気に加速した。

そうした相次ぐ事件の中でも特に大きなものは「キャンプ場でAV撮影したらメーカーもプロダクションも、そしてAV女優までもが書類送検された」というもの。
これなど容疑を掛けられた人間が、プロダクション・メーカー・制作会社・出演者(AV女優含む)・スタッフら、総勢50名以上という大捕り物である。

この一連の事件について掘り下げれば、伊藤和子及びHRNの主張がいかにインチキだったかよく分かるので、(ま~~~~た長くなってしまって申し訳ないのだが)当時私が書いた記事を資料としてまとめさせていただく。

ただし数年前の記事なので、今となっては少々読みにくい部分もあるかと思われるが、なんせ日々新しい情報が更新されて行くリアルタイムの状態で連載していた記事なので、多少の違和感はご勘弁願いたい。

AV業界や、AVという表現手段が抱える問題点の殆どを網羅するような内容なので、お付き合いいただければ損はさせないはずだ。

AV業界は自滅する?大規模なガサ入れをした警察の真の目的とは
1『大型事件勃発』

※2016年6月の記事

大手AVプロダクションが摘発された事件に関して、様々なメディアが「AV出演強要!」といった煽りで報じている。報道メディアでも大きく扱われているので、おそらくそうしたニュースをどこかで目にした方も多いだろう。

だが、これらの報道内容には大きな間違いがある。今回の逮捕容疑は(現時点では)あくまで労働者派遣法に定められている「有害業務」に派遣した事であり、AVへの出演を強要したからではない。ここまで行くと誤読や書き間違いの範疇ではなく、もはや見出し詐欺であろう。

さて、過去に東京BN(※当時の掲載媒体)では、色々な角度からAVを含めたセックスワークの業界について記事にしてきた。その中には今回の騒動の肝になる部分について言及したものも多く、それらの記事は今となってはちょっとした預言書のようになってしまっている。

◇参考記事

・伊藤和子弁護士の「AV強要問題」に対する反論#1
https://note.com/oharan/n/n29b4c6b00ce4
・伊藤和子弁護士の「AV強要問題」に対する反論#2
https://note.com/oharan/n/nf50dc98724a9
・伊藤和子弁護士の「AV強要問題」に対する反論#3
https://note.com/oharan/n/n4d4c127caa65
・伊藤和子弁護士の「AV強要問題」に対する反論#4
https://note.com/oharan/n/nf97dbf02c2e8

※元の媒体が消滅しているため、当noteの該当記事のURLを貼っておきます

これらはHRN(ヒューマンライツナウ)の、いわゆる「AV出演強要に関する報告書」に対する反論・批判としてアップしたものだが、このテーマに興味のある方は、ぜひ全4話すべてに目を通していただきたい。

ここから先は、上の4記事の内容を頭に入れていただいたという前提で進めるが、今回の逮捕劇はプロダクション虐めが目的ではない。
すでに大手メーカーもガサ入れされており、問題とされる作品に出演した女優達(の自宅)にまで捜査の手が及んでいると聞く。
警察の捜査は今月いっぱいには終わりそうなので、「警察が何を狙っていたか」が解るのはそれ以降になるだろう。少なくとも、大手プロダクションを1つ捕まえて終わりという単純な話ではない。

また、警察に被害を訴えた元AV女優の一件だけをどうこうという話にもならない。この一連の捜査の後、おそらくAV業界は「存在の根幹」を揺るがされる事になるだろう。

例えるならば、パチンコ業界が突然”三店方式”を全否定されるようなもので、そうなったらパチンコ・パチスロなど、単なる違法賭博でしかない。
実際にどこまで攻め込まれるかは警察の思惑次第だが、大袈裟ではなくAV業界ではまさにそれが起きようとしているのである。
これに対して、強く危機感を持てているAV業界人は、おそらく殆どいない。よって、もう助けられないかもしれない。

先に挙げた参考記事の中で、私は「現行法でもAVは違法」と断定口調で述べ、それ故にHRNの「新法や監督省庁の設置など無意味どころか逆効果だ」と結論付けたが、その指摘の正しさがまさかこれほど早く証明されるとは思わなかった。この”時間的余裕”を見誤った点だけは悔やんでも悔やみきれない。

私と同様に、AV業界の危うさや、実は合法である根拠などないという点を指摘し、業界に危機感を持たせようとしていた人間は何人もいるのだが、彼らの活動が実を結ぶより、警察が撃ってくる方が早かった。
事ここに及んでは、既存のAVビジネスは忘れて次を考えるよりない。これまで通りのやり方にしがみ付いていては、業界すべてが警察の狩場となり、裸になるくらいしか道がない女性から、自立手段を奪う事になる。

果たしてこれが「女性の味方」を自称するHRNの望んだ事だったのだろうか。

次回からは、より具体的に、AV業界の何がどうマズイのか、何が狙われたのかを解説して行く。

2『事件を理解するための基本情報』

※2016年6月の記事

さて、前回は敗戦の弁に終始してしまったが、今回からはプロダクション逮捕というニュースに関連して、具体的にAV業界特有のグレーな部分を解きほぐして行く。おそらく外部の人間には解らない話だらけになるだろうが、これがAV業界や風俗業界など「性を売る商売」の実態である。

・AVにモザイクが必要な本当の理由
そもそもの話を最初にしておきたいが、皆さんは「AVはモザイクが入っているから合法」と思い込んでいなかっただろうか。過去の記事で何度も述べたが、実はこの点が大間違いなのである。

AVはモザイクが入っているから許されているのではない。モザイクの向こうで性行為(性器の抜き差し)をしておらず、またモザイクによって局部(一昔前なら陰毛なども含む)が隠されているから合法と看做されていたのだ。より具体的に言うと、前者により”労働者派遣法・職業安定法”を回避し、後者により”わいせつ物ではない”と言い張る仕組みだ。これ以外にも”売春防止法”をクリアする必要もある。

よって、モザイクが入っていようといまいと、性行為(いわゆる本番)が行われていたら、それは有害業務とされ、出演者が(被害者として)訴え出ればいつでも誰でも今回のような結論になる。これが正解なのだ。

ところが、AV業界も歴史が長くなり、業界が立ち上がった当時に最前線で戦っていたベテラン達が次々と鬼籍に入られている。そして次第にこのような根本の部分が忘れ去られ、「モザイク入れとけば合法」と思い込んでしまったツケが一気に回って来たのだ。モザイクを入れるだけでは、性を縛る法律の一部しかクリア出来ないというのに。

余計な一言を付け加えるが、この点についてはAVユーザーにも責任の一端がある。昔ながらの濃いモザイクや、局部のアップが少ない作品に対して苦情が寄せられる事がよくあるのだが、それがAVの寿命を縮めてしまった。

「もっとモザイクが薄い方がいい」「もっと局部の抜き差しが解るシーンを入れろ」「何本も出演しているAV女優じゃヌケない、初々しい子を出せ」

こうしたご要望をメーカーやプロダクションが真摯に受け止めて実現させたら逮捕されたという現実を忘れないで欲しい。

・契約書(出演承諾書)の内容について
今回の騒動で、契約書に関して指摘する声が多かったように思う。例えば「モデルとして契約したのに実際はAVだった」といったように。しかし、すぐ上で説明したように裸のお仕事を縛り付ける法律のせいで、仕事がAVだったとしても「カメラの前でセックスするお仕事です」と書く訳にはいかない。ギリギリのラインが「成人向け作品への出演も含む」といった一文だろう。

そうした点を一切説明しないとか、騙すとか、違約金で脅すといった手段を使う悪徳プロダクションに対しては庇う気持ちなどサラサラないが、しかしこうも考えてみて欲しい。契約書に具体的に明記できない以上、口頭で散々説明したとしても、後から「騙された!聞いてない!」と言われたら、プロダクションの側には弁解する武器がないのだ。

「契約内容の説明を録音しておけば」と思う方もいるかもしれないが、そんな音源を残していたら、有害業務に就かせる目的で女性を勧誘している証拠になるだけだ。AVプロダクションの仕事とは、このように八方塞がりでもあるという点をご理解いただきたい。

そんな状況だから、プロダクションとしては身の安全の為にも「疑似本番でお願いできませんか」と言いたいところだが、それを言ったらメーカーの方から「そんなんじゃ商売にならない、お前のところの女優なんか使わない」と言われてしまう。だから女の子に仕事(金)を渡したいプロダクションは、メーカーが望むままに”本番できる女性”を集めてくる。

このニュースではプロダクションだけが悪者として扱われているが、実際にはプロダクションにそれをヤラせている(そうせざるを得ないようにしている)のはメーカーである。言ってみれば、AVメーカーはリスクの大部分をプロダクションに負わせているも同然なのだ。これについては警察もとっくに理解しているので、今後何かしら新しい展開が報じられるだろう。

また、こうしたAVメーカーの「プロダクションに押し付ければいい」という考えの卑劣さを指摘し、プロダクションだけの問題ではないと言ってのけたのが、実はかの伊藤和子弁護士である。彼女の言動には疑わしい点も多く、どうしても批判が先に立ってしまうが、この点に関しては実に真っ当な判断をしている。

・労働者派遣法の適用は妥当なのか?
今回のケースでは労働者派遣法に抵触するという理由になっているが、この点もAV業界の存在を根底から否定するものだ。実際にどういう結論になるかは裁判が終わってみなければ解らないが、仮にこれで有罪判決になってしまうと、セックスワーク全般に流れ弾が行く可能性がある。

というのも、労働者とは法律で定義されており、何らかの事業に使用され、それによって賃金が支払われる立場の人間を指す。

だが、AV女優や風俗嬢は法的に微妙すぎる仕事であり、容易に管理売春などが成立してしまうため、「個人事業主がマネージメントの部分を外部委託している」という芸能タレントにも似た契約内容になっている。

この部分を警察が「実質的には雇用関係だろう?」と突いて来たという事は、AVや風俗の業界の建前など一切考慮してくれないという事である。したがって、世にあるほぼすべてのセックスワークが同じ事をやられても不思議ではない(というか現に風俗の業界はすでにヤラれ尽くしている)。

そして、この点については地裁レベルではすでに決着が付いていると言っていい。ここ十数年の間に似たような裁判はいくつか起きているのだが、その殆どでプロダクションがAVモデルを募集・派遣または紹介する行為は「公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」であり、「労働者派遣法ないしは職業安定法に抵触する」、ようは「AV=公衆道徳上有害な業務である」と結論付けられているのである。判例がすべての世界であるから、これらを覆すのは難しいだろう。

この「何を以て有害と判断するのか」については、実はセックスワーク業界が戦う余地のある部分ではあるのだが、今の状況を考えると、おそらく法の改正へ向かうといった流れに持って行くのは至難の業だろう。仮にそう動こうにも味方がいなさ過ぎるし、今からセックスワーカーの為に政治家や知識人が火中の栗を拾いに来てくれる事など期待できない。

仮に「エロ=有害という考え方でいいのか」という点を議論し、また法に反映させたいと思うならば、AVも風俗もマンガもアニメも映画もTVも芸能も小説も、ありとあらゆるエロに関する業界がひとつにならねば難しい。間違っても「小説や映画は芸術だからOKだけどAVやアニメは」といった選り好みをさせてはならないし、また”相手の分断作戦”に乗る事もあってはならない。

だがしかし、その仲間に入れて貰うには、AV業界はヨゴレ過ぎるのである。AVが上に挙げた業界の仲間入りをさせて貰うためには、もっと世間一般の常識が通用する業界にし、AV業界でしか通用しない村ルールや、アウトロー要素を極限まで減らす必要がある。果たして今のAV業界にそれが出来るのだろうか。


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