「気持ち悪い」しか根拠のない偽物こそが悪の元凶 前編
『結局は「気持ち悪いからイヤ」という感情論』
私のTwitterのTLは、相互フォローしている方々の属性が偏っているお陰で、表現問題に関するネタが多く流れて来る。そのため「表現規制すべし!」「オタクコンテンツ滅ぶべし!」という論調のツイートも頻繁に見かけるのだが、そうした意見を見る度にかなりの高確率でこう思う。「結局アナタの本音は ”気持ち悪いから嫌だ” だけなんでしょう?」と。
ただ、嫌悪感という本音をそのまま言ってしまうと意見が通らない事はわかっているので、あれこれ無理やりな理屈をゴテゴテと付け加え、その核の部分が見えないようにしているだけとしか思えないのだ。
少々藁人形論法的になってしまう事をお詫びしておくが、例えばこんな論調がそれにあたる。
と、今はだいたいこの2つが、その手の輩が用いる得意技の2大巨頭だと思う。先に断っておいたとはいえ、恥ずかしいほど藁人形論法そのもので申し訳ないのだが、これらについて簡単に反論してみよう。
(1)子供の目に触れるからゾーニングしろ、売り場から消せ
コンビニ売りの雑誌や、オタク系コンテンツが攻撃対象に選ばれる際に使われる主張である。ついこの間は、本屋に並んでいた一般向けライトノベルの表紙を非難する際に炸裂していた。
これに対して反論するとなると、まず言わねばならないのは「ゾーニングの意味を勉強してから人前で喋れこのスットコドッコイが」である。
そして「ゾーニングしろと言っておいて売り場から消せってのはどういう了見だボケ」と続く。この2つはゾーニングという単語の誤用を指摘するものなので、最初にぶつけてやるべきだろう。
それは何故かという説明もしておきたいのだが、長くなり過ぎるため今回は超ざっくりとしたツッコミだけ入れておく。詳しくは「ゾーニングの誤用と拡大解釈」にテーマを絞った有料記事を書いているので、お布施だと納得できる方はぜひお読みいただきたい。
かいつまむと、ゾーニングというのは都市計画などにも使われる「属性ごとに空間を分けましょう」という意味の言葉だ。これを小売店に当てはめると「客の目的や動線を考えた売り場作り」といった表現が近いと思う。
という事は、ゾーニングは「売り場に商品を置くため」という目的(もしくは大前提)がないと意味が通らないという事になる。
よって、ゾーニングせよと言っておきながら「売り場に置くな」と言っている人間は、言葉を知らない可愛そうな子か、もしくは誤用と解っていてもイデオロギーのためにそう主張しているかのどちらかだ。どちらにせよ議論が成立する相手ではないので、もし絡まれでもしたら即ブロックしよう。
また、「子供を盾にしてくる」というのがこの手の輩の特徴なのだが、子供の目にうんぬんについても反論は簡単だ。
上の記事でも詳しく書いたが、現状で日本のゾーニングはとても厳しいため、子供の目に入る場所に18禁コンテンツが置かれているという事は考え難い。もしそういう実例があるならば、それは早急に改善すべきだろうが、今やそのような例は殆ど無いはずだ。AVをはじめとするエロコンテンツに長く携わっていた私が言うのだから間違いない。エロを取り巻くゾーニングの厳しさはそんな甘っちょろいもんじゃない。
もし仮に小さい子供がエロコンテンツを目にしてしまったとすれば、その理由は店や会社が悪いのではなく、「親がゾーニングを破って子供をエロ売り場に連れ込んだ」か「子供がひとりで勝手にゾーニングを破って売り場に入った」以外には考えられないのだ。
では、連中はいったい何を根拠に子供を盾にしたり、ゾーニングがどうのとつべこべ言っているのかと言えば、オタクコンテンツを根絶やしにしたい人間が、自分が嫌いだからという本音を隠すための目くらましに「子供のため」という心にもない言い訳を口にしているだけである。
あいつらは罪なきところに罪を作ろうとして、その無理筋を通すためにウソにウソを重ねているのだ。
また、その手の輩は常套手段として 「末端の小売店を名指ししての不買運動」を起こしたりするが、それなどは全くの筋違いであり、ヤツらの卑劣さの象徴だと言えよう。
もし商品や作品の区分(18禁か一般向けか)に文句があるなら、専門家を抱えた審査団体なり、発売元(出版社など)なり、「その基準を決めた組織・機関」に抗議すべきであろう。
それをせず、真っ先に最も立場が弱い街の書店や小売店に不買運動を仕掛けてみたり、Twitterやメールなども駆使してあの手この手で迷惑をかけ、暴力的・圧力的な方法で思い通りにしようとするのは、テロリストの思考と同じではないか。テロリストの分際で「子供のため」なんて台詞を吐くのはご勘弁願いたい。
【一般作として流通に流せる商品を仕入れて、一般作の棚に並べ、値段を付けて売る商行為】これの何が悪いのか。また、それに対して直接手を下して妨害する権利が誰にあると言うのか。テメエのドス黒い感情を他者にぶつけて従わせたいだけのクソ野郎が、思い上がるのもいい加減にしろ。
そういう世を荒らす悪党は、世のため人のため、テロ防止法で裁かれて小菅にでも閉じ込められてくれと切に願う。
(2)女の性が消費されている
これなどゾーニングの誤用以上に意味がわからない。例えば一般向けのライトノベルの表紙にアニメ絵の巨乳娘が描かれていたからって、何が消費されて、誰が不利益を被ると言うのか。で、お前はその当事者なのか。
オタクコンテンツ叩きをしている界隈や、フェミニストを自称する連中は、どうしてこう何でもかんでも当事者面してしゃしゃり出て、"いっちょ噛み" しようとするのだろう。お前らはチンピラがやってる事件屋か何かか。テロリストの次は事件屋と瓜二つとは、本当にタチが悪い。
これまたそもそもの話になるが、こういった主張をする人間には、動物としての本能をどこまで認めるのかを先に明言して欲しい。というのも、人間もまた自分のDNAを残すために生きている動物である以上、異性の肉体に性的好奇心を持つのは仕方のない事だからである。それが悪い事だと言うならば、そりゃもう生命そのものの否定だ。
仮にそういった生殖行為を含めた「生命」そのものを否定したいという思想の持主なのであれば、ハナからまともに取り合ったりしないので、そこだけは予めハッキリさせておいて欲しい。
ついでに言うと、女性に感じる魅力を表現する事が消費でけしからんと言うならば、「じゃあお前は男性に対する欲求や願望はないのか」とも問うてみたい。「イケメン」でも「背が高い」でも「マッチョ」でも「やせ型」でも「メガネ男子」でもいい。肉体に関する事以外に、例えば「金持ち」「医者か弁護士」といった条件面でもいい。それらの殆どは動物的な生殖本能が根っこにある価値観なので、男が女に向ける「顔・胸・脚・尻……」への欲求と同価値のものである。これに対して何か反論はあるのだろうか。
この「消費」という言葉についてはもう少し掘り下げたいのだが、連中と同じ使い方をするならば、少女漫画に出て来るイケメン王子様キャラや、ジャニーズアイドルなどは、男の性が消費されている例という事になる。BLマンガなどは言うまでもない。他にはガラスの仮面の紫のバラの人なども、(性的かどうかは微妙としても)女性が男性を都合よく消費したいという願望の表れと言えなくもない。
このように「性の消費」などという意味不明のいくらでも拡大解釈可能な造語は、安易に使うと自分達への反論や、意趣返しとして使われるので、自分の首を絞めないためにも、もう少し具体的な言葉に置き換えて主張すべきだと忠告しておこう。
モヤモヤした意味のよくわからない言葉を好んで使うのは、自分の主張に自信がない証拠である。意味がハッキリ通じてしまう単語を使うと、簡単に論破されてしまうので、そもそもの言葉の意味自体をボヤかしておきたいだけなんだろう。少なくとも、私はそう見下した解釈をしている。
『あらゆる文化を片っ端から滅ぼしたいのか?』
さてさて、我々は大前提として子孫を残さねばならないのだが、そのためにはつがいとなる異性を見付けるために、何らかの記号が必要である。「この相手とならば子供が作れそうだ」という記号だ。それが胸や尻だったり、経済力や筋肉である。
そうである以上、二次元作品でも三次元作品でも、異性を表現する場合にセックスアピール的な要素が加わってしまうのは(ある程度は)仕方がない。ある程度というのは、法に触れないとか、被害者を出さないという意味である。
こうした「女性を被写体にする、モデルにする何らかの作品」が売られている事が「性の消費でけしからん」と言うならば、上に挙げた女が男に求める要素を表現物に加える事も「性の消費でけしからん」としなければ話がおかしい。それは明らかな男女差別になる。
こんな子供の口喧嘩のような幼稚なロジックを振りかざし合うと、その先には魅力ある文化が何もかも滅び去った、廃墟のような社会が待っている。
少し話が飛ぶが、アメリカでトランプ大統領が誕生した際に、専門家がこのような理由を挙げていた。 「ポリコレの旗を悪用して暴れ回る連中に国民が疲れ果てた」 と。日本は何年も遅れて、それを後追いしているのであろうか。だとすれば、先を行くアメリカがどうなったか考えれば、この先の日本がどう流れて行くかも想像がつくだろう。
と、ここまでダラダラと書いてみたが、結局のところこういう無理筋なロジックを振りかざす人間の頭の中にあるのは「気持ち悪い」という自分の感情だけなのである。
その薄っぺらさを誤魔化すために、なんやかんや理屈めいたものが必要で、その結果こねくり回して回して回し抜いた挙句に出て来た台詞が「ゾーニングが~~」と「性の消費~~」だったのだ。
そう考えると、あの界隈のTwitter論客達のダブルスタンダードや、論理破綻や、ヒステリックな言動も、すべてに納得が行く。
(続く)
皆様からの金銭サポートがあると、子育てに追われる哀れなオッサンの生活がいくらか楽になると思わせておいて、息子の玩具やお菓子や遊園地代で殆ど溶けます。