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「今日の加害者は明日の被害者」ネットの誹謗中傷は無限に被害者を生み出す #1

「今日の加害者は明日の被害者」ネットの誹謗中傷は無限に被害者を生み出す
#1  https://note.com/oharan/n/n719398bd26f8
#2 https://note.com/oharan/n/n5b160b7ed2e5
#3 https://note.com/oharan/n/n7fc56bb3a5c9

女子プロレス界の柱になるはずだった……

大きなニュースとして報じられたので、ご存知の方も多いと思われるが、女子プロレスラーの木村花選手が亡くなった。
木村花選手は、女子プロレスラーである木村響子さん(2017年引退)の娘で、母娘2代のプロレスラーとして大きな注目を浴びていた。

母である木村響子さんは2003年にJWPからデビュー。その後はフリーランスとなり、プロレスだけではなくパンクラスにも出場。格闘技戦での実力が高く評価されていた薮下めぐみと対戦し、TKOで破るなど、低迷期の女子プロレス業界を支えるべく、八面六臂の活躍を見せた人物だ。

そんな響子さんの娘であり、なおかつハーフで容姿にも優れていた事から、花選手は早くからアイドル的な期待のされ方をしていたのだが、彼女のファイトスタイルや言動は直情的で荒っぽいヒール的なもの。
そうでありながらも、オーソドックスな技術にメキシコ式の関節技を取り入れたりと地に足が付いており、今後間違いなく女子プロレス業界の要として成長してくれるものと思っていた。

私がプロレスラーとしての彼女を気に入った理由は、持ち技が増えて以降もミサイルキックやブレンバスターといった基本の技を大切に使うところだった。特に、垂直落下式ではない背中から叩き付けるタイプのブレンバスターを、毎回ちゃんと説得力ある決め方をしていたところが印象に残っている。派手な技としては、変形のグラウンド卍やキン肉マンのオメガマンが使っていたカタストロフドロップのような必殺技もあり、小技から大技まで色々とバリエーションが増えて来ているなと感じていた。

近頃は日本人の女子プレスラーが(むしろ男性選手よりも)海外で高く評価され、人気選手が次々と世界最大手のWWEと契約に漕ぎ着けている。
将来的には、花選手も絶対にそういうポジションに行くだろうと、プロレスファン・業界人は誰もが思っていたはずだ。
ルックスが良く、セクシーなコスチュームを着てくれて、なおかつ基本に忠実なムーブが出来る(逆に言えばマジメに練習しなきゃ出来ない)と、成功が約束されたも同然だった選手だけに、彼女の死という現実に対してどんな言葉をひねり出せばいいのか、未だに答えが見付からない。正直な一言を漏らすなら「なんでだよ」である。

テラスハウスというリアリティショー

木村花選手の死因についてはまだ明かされていないし、そこについてツベコベ能書きを垂れて目立ちたい訳ではないので、なるべく触れたくはないのだが、原因のひとつに挙げられているのはテラスハウスというTV番組と、それに対する視聴者の過剰反応があったのではないかと言われている。
……いや、言われているというか、それしか理由がないというレベルで断定されている。

このテラスハウス(通称テラハ)は、世界中に類似品がいくらでも転がっている、いわゆる ”リアリティショー” で、一軒家に見ず知らずの男女が共同生活をし、そこで起こる悲喜こもごもを流すという内容。
これは日本に限らず、アメリカやイギリスなどで昔からある手法で、原則として「台本はないもの」という建前で、「演者がリアリティのある生々しい人間ドラマを見せる」のが基本的なスタイルとなる。

日本ではテラハ以前にあいのりや未来日記といったコンテンツも人気になっており、どうしても女性向けの恋愛系ばかりな印象を受けるが、そもそもは電波少年だとか、元気が出るテレビだとかもリアリティショー要素が強い番組であるし、ドッキリ系の番組など根本的に全てがリアリティショーだと言っていい。よゐこ濱口の「獲ったどー!」の無人島生活なども同様だ。
このように恋愛系以外のリアリティショーも数多く制作されているのだが、最近では女性視聴者の反応が良いためか、「リアリティショーといえば恋愛モノ」 という状況になってしまっている。

こうした恋愛系リアリティショーの主な視聴者層は2~30代の女性だという統計が出ており、テラハもご多分に漏れず、若めの女性をメインターゲットとしている。
また、そうした若い女性と話題を合わせたくて追い掛けている男性視聴者も多いようで、テラハは今現在の 「恋愛バラエティの覇権」 を取った番組であると評価できるだろう。

ところが、このテラハ自体もそうだが、リアリティショーには様々な問題点が潜んでいるのである。

リアリティショーの抱える問題点

すでにあちこちで報じられているが、海外まで含めると「リアリティショーが要因となって自殺した」という悲劇が数十件という規模で起きている。

この新潮の記事に詳しいが、欧米でも韓国でもリアリティショーがキッカケでバッシングが起こり、それが弁解不能のリンチに発展し、当事者が自殺するまで収まらないという状況になってしまっている。
今回の木村花選手の件も、それらと全く同じ流れになってしまった。

どうしてこのようなバカげた展開になってしまうのかと言うと、性格の歪んだ私は 「こんな番組を面白がるような視聴者は人間としての質が悪すぎるからだ」 と斬って捨てたいのだが、それでは単なる暴論になってしまう。
よってもう少し尤もらしい話をせねばならないのだが、最大の要因は「リアルなのかリアル風なのかさっぱり分からない」ことと「人生経験の足りない若年層がメインターゲット」であるという点にあるのではないかと思う。
その2点がSNSなど番組外のツールを通じて、最悪の形で特定人物に対して作用してしまうのだろう。

さらに言えば、このテラスハウスという番組は特に質が悪く、数年前から様々な問題点が指摘されていた。
とある週刊誌(フラッシュ)にすっぱ抜かれたケースでは、テラハには全て台本があり、番組内で告白するなど派手な事をするとプラスαで金が貰えるシステムだとか、制作陣による演者へのパワハラ・セクハラが日常茶飯事であるとか、数年前の時点で打ち切りになっていておかしくないレベルの諸問題が暴露されていたのである。

ところが、その後もフジTVは劇場版を公開したり、Netflixで番組を継続するなど、問題点が全く改善されないまま今に至っている。

テラスハウスとは、元々が 「そういう番組」 だったのだ。


といった所で、少々長くなってしまったので一度区切らせていただく。
次回は「謝った対策が招くであろう更なる悲劇」について述べる。


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荒井禎雄(フリーライター兼主夫)
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