「低価格ライター問題」 十数年前に経験したある出来事 #1
「低価格ライター問題」 十数年前に経験したある出来事
#1 https://note.mu/oharan/n/n2f783cd9b952
#2 https://note.mu/oharan/n/ne4e03c870812
スマホゲーが低価格ライターを生んだ……?
先日、TwitterのTLでこのような記事を見かけた。
この記事では、パズドラなどのいわゆるスマホゲーの大ヒットをキッカケとし、有象無象の攻略サイトが誕生したこと、それに伴って超低価格で仕事を発注するサイトと、それを受けてしまうライターとが現われたことについて述べられている。
なかなか興味深い記事だなと読み進めたのだが、ふと思い出したことがある。今から十数年前に在籍していた、とある人気サイトについてだ。
上の記事では「スマホゲームの隆盛が低価格ライターを」という因果関係が語られているのだが、実はWEB系ライターの低価格化はずっと前から始まっていたのである。
探偵ファイルとの揉め事
知っている人は知っていると思うが、私は00年代初頭に大繁盛していた ”探偵ファイル” というサイトでプロデューサーをしていた。どれくらい繁盛していたかというと、毎日のPV数の平均が数十万件、サイトの広告料だけで月に4,000万円は儲けがあったというくらい繁盛していた。
そんな探偵ファイルは、ガルエージェンシーという ”自称日本一の探偵事務所” が経営母体となっており、売防法違反やら恐喝やらで前科盛り沢山の渡邉文男という男(ガルの創設者)がBOSSを名乗り「探偵ならではの情報を提供する」をコンセプトに人気を博していた。
私はそこで実際に働くようになる以前から、探偵ファイルの編集長や記者達と親交があり、協力関係にあったのだが、より大きく儲けるためにアダルト版の探偵ファイルを作ることになり、そのタイミングでプロデューサーとして中に入ってくれという話になったのである。
※以下、あまりの憎悪の強さから話がすっ飛びます
ところが、探偵ファイルをワンマン経営していた渡邉という男と見事なまでに意見が合わず、プロデューサー就任以降、私の仕事は渡邉へのダメ出しばかり。
なんたってあのバカは順法精神の欠片もなく、探偵ファイル名義で立てているBBSに、探偵ファイルのアカウントで無修正のエロ画像を貼り付け、「これでPV稼げるだろ!」とドヤ顔をするレベルのポンコツだったのだ。
アダルト版の探偵ファイルをやって大きく儲けたいのはいいけれど、このレベルの大馬鹿野郎を教育するところから始めねばならないというのは中々に難易度が高かった。
結果、ダメ出しばかりしていたら自己愛だけで生きているような渡邉が私を避けるようになり、気付いたら探偵ファイルをクビになっていた。
その塩対応で流石にブチキレ、そっちがその気ならば本気で揉めましょうと、探偵ファイル・ガルエージェンシーのウソを暴き立て、ついでに渡邉文男が隠したがっていた前科前歴も全部晒してやったのである。
※私が所持する渡邉に関する記事のほんの一部
私が渡邉と揉め始めた当初は、渡邉がメディアを使って垂れ流していた「日本一の探偵」だの「裏社会に精通する男」だのといった肩書きを信じている人間が多く、心配してくれる声も多かったのだが、私はその時点ですでに「渡邉とは虚言癖の持ち主であり、単なる口先だけのバカである」と見切っていたので、恐ろしいと感じた事など一度もなかった。
結果、渡邉は海外逃亡、ほとぼりが冷めるまでネット上で活動する事もなくなり、私も私で飽きたのと金銭的にキツくなってしまった事により放置。そのままグダグダになって今に至る。
渡邉との抗争についてはこの辺にしておくとして、私は低価格ライターが誕生したキッカケは、この探偵ファイルではなかったかと思っている。
探偵ファイルの方法論
探偵ファイルは当時としては画期的なやり方をしていた。普通は人を集めてナンボのメディアというと、タレントなど著名人を使って、その求心力でアクセス数をかき集めるというのが「今も」当たり前だと思う。
しかし、探偵ファイルはそれをやらず、ライター・記者を自前で揃え、彼ら彼女らをタレント化していくという逆転の発想で運営していたのだ。
これならば薄給でこき使えるし、プロダクションがある訳ではないので中抜きもなく、どんな危険な仕事でもさせられる(ちなみに探偵ファイルは当然ですが超ブラックです)。
後にドワンゴがニコニコユーザー(生主)の中でも特に数字を持っている人間を抱え込み、自社の専属タレントのように使っていたが、あれと全く同じような事を、探偵ファイルは00年代の前半に完成させていたのだ。
ちなみに、探偵ファイルのこの手法は、WEB系の広告代理店業界に激震をもたらした。当時から広告屋をやっている人間がいたら話を聞いてみて欲しいが、この頃の探偵ファイルは未だに「広告効果」においてレジェンド扱いをされているはずだ。
なんせ、当時まだ日本人が「ネット広告」というものに慣れていなかったせいもあり、探偵ファイルの人気記者が顔出し名前出しで書くいかがわしい商材の提灯記事が、恐ろしいほどの成果を上げたのだ。
パチンコや競馬の攻略法だろうと、出会い系だろうと、健康サプリだろうと、探偵ファイルで取り上げるとバカ売れし、会員数が激増し、それはそれは広告媒体として超優良物件だったのである。
しかも、使っているタレントは全て自社スタッフなのだから人件費も考えなくていい。これが芸能人など使おうものなら法外なギャラを請求されたり、そもそも「そんなヨゴレは出来ない」と断られるはず。
そんな極限まで費用対効果に優れていた事が、当時の探偵ファイルの最も凄かった点である。
山木や大住、キムにチバにえりすにマックに……といったキャラの立ったスタッフに恵まれた奇跡もあるが、探偵ファイルは他に行き場のない危う過ぎる素人を何人も抱え込み、その中から運よくタレント化する人間が現われ、独自路線の人気サイトとして人気と収益を維持していた。
ただ、記者の誰もが山木や大住だった訳ではなく、中には社会性が無さ過ぎてトンデモない事件を起こす人間が続出した事もいつか書き残したい。
そうしたリスクと背中合わせの方法ではあったが、日本人がネット自体に慣れていない時代に、やり逃げのように大きな結果を残したのである。
だが、それが後の世に悪い影響を与えてしまった。
(続く)
※ 本文は以上です
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