連載5 第一集 10~12月編 『おかあさん 木があかくなってきたよ』あきとまさきのおはなしのアルバム '87
【写真・第1集の表紙】
10・11・12月
あき 2才11か月~3才1か月
まさき 1才2か月~4か月
#60 ヤマビコ
あき、山へ向かって「オーイ、セツー!」
ヤマビコ「…セツー」
あき「メシ モッテ クレヤー!」
ヤマビコ「…モッテ クレヤー」
私「あき、それおじいちゃんのまねでしょ。ヤマビコも一生懸命あきのまねしているね」
あき「ヤマビコ どんな かお?」
私「さぁ、おかあさん会ったことないから知らないなァ」
あき「よんで くれば わかるよ。オーイ、ヤマビコヤーイ、コッチ コイヨオ!」
ヤマビコ「…コイヨオ」
あき「ミズ クレルカラサー」
「ホレッ、コノ イシー、コノ ヒラペッターイ イイ イシモ クレルカラサー!」
「コイヨオッタラ、ハッヤックーッ!」
ヤマビコ「…ハヤクー」
#61 朝の訓辞
私「おとうさん、脱水機の調子が悪いんだけど、ちょっと見てくれない?」
夫「今、時間ないから、また後でな」
あき「おとうさん、ジカンは つくりだす ものですヨ」
#62 サバイバルオヤツ
私「こんどはニンジンですよ。ハイ これは あきちゃん。ハイ これは まさきちゃん」
あき「ワーイ!あきの すきな あまい にんじんダァ」
まさき「ウマ ウマ ウマ ウマ」
あき「あき、あたらしい フォークが いいヨ」
私「どれでも同じだと思うけどナァ。エート、どこへしまったかしら… やっとあったわ」
あき「ワーイ… アレッ、まさき、あきの にんじん みんな たべちゃったヨォ!」
私「エッ。でも大丈夫。お鍋にまだ残っているからね。ハイ、あきちゃん、どうぞ」
あき「イッタダッキマース。アレッ、にんじん やっこくて フォークじゃ よく ささらないや。あき、あたらしい おさじが いいナァ」
私「じゃあ、引き出しをここへ持ってくるから、あきが探してね」
あき「ないなぁ… エート エート… あった あった。ヨーシ、アッタゾー。アレッ、また まさき、あきの みんな たべちゃったヨ。あきのが ナーイ、ウワーン!」
私「マァ!」
#63 まさきとあき
まさき「アッチャー アッチャー」
あき「まさき、それは かれはだよ。カーレーハー カーレーハーだよ」
公園への道を手をつないで歩く二人。
まさき「アッチャー アッチャー」
あき「まさき、それは ドングリだよ。たべられないからね。おくち いれちゃ だめだよ」
私「まさき、お兄ちゃんとお手々つないでいいねぇ。おかあさん、あきがいてくれると うんと安心だわ」
あき「あき、まさきんとこ つれてって くれるんだよ。あき エライ?」
私「エライ エライ」
まさき「ぎゃあ!」
私「どうした?!」
あき「マサキ オチタ」
#64 床屋さんごっこ
私、二人が遊んでいる部屋へ入っていく
あき「ハイ、おしまい。まさき いいこ いいこ」
まさき「アーハー アーハー」
私「二人とも仲良く遊んでたわね。何してたの?」
あき「あき、カミ きったんだ」
私「アラ、あき。おかあさん、まさきちゃんがいる時はハサミ使わないでっておねがいしたでしょ。ハイ、ハサミは返してね。それから、切った紙は集めてちょうだい」
あき「あき、まさきちゃんの カミ、ぜんぶ ふくろへ いれといたヨ」
私「エッ、まさかカミって、まさきちゃんのお髪?」
あき「そうだよ。まえの カミとー うしろの カミとーって きって あげたんだ」
私「ウワァ、ヒドーイ ジャリッパゲ、アキー!」
あき「だって まさきちゃん、なかなかったヨ。なァ」
まさき「アーハー アーハー アーハー」
#65 クリニックでの内緒話
あき「おかあさん、ここ なにしに きたの?」
私「この病院のお医者さまが、おかあさんの目を 見えるようにしてくれるかも知れないって聞いたから、来てみたの。あきだって、おかあさんの目が見えるようになった方がいいでしょ?」
あき「オカアサン、ミエナクテ イイ」
私「アラ、ナンデ?」
あき「あき、トイレの おみず ある とこ おしえて あげる。オモチャも ホラって みせて あげるもん」
私「だから見えなくてもいいの?」
あき「そうだよ、おかあさん」
私「あき…」
#66 あき、三歳の誕生日
私「今日は、あきの夢を聞いておこうかな。あきは大きくなったら、なにになるの?」
あき「バキュームカーの おじさん。それと、ゴミ あつめる おじさん」
夫「あき、偉いぞ」
私「ねぇ あき、あきはもう少し小さい頃は、おとうさんになるって言ってたけど、おとうさんになるのはやめちゃったの?」
あき「おとうさんにも なるよ」
私「ワァ」
夫「まさきは何になりたいだろうなァ」
私「モチロン野球の選手よ。なんでも遠投しちゃうし。昨日なんか、サランラップをみんなはずして、芯だけにしちゃってネ。それを振り回しながら、今度はこたつに飛び乗ったの。それで、電気の紐をエイッ、エイッって打って、野球の練習をしてたのよ。本当に熱心な練習ぶりだったんだから。ウフフ…」
あき「ギャハー アハハー」
夫「アハハハ」
まさき「アーハー アーハー」
ケーキを囲みながら皆で晴やかに笑う。
#67 食欲の秋
まさき「ウマウマ モグモグモグ…」
私「まさき、本当によく食べるね。エライエライ」
まさき「オー」
カラのお椀を母の手にのせる
私「ハイ、おしまいね。もうおなかいっぱいでしょ。ごちそうさましようね」
まさき「ズズズズーッ」
私「アレッ、ワァ、机にこぼれたのは吸わないで。ハイ、拭こう拭こう」
まさき「チューチュー」
台布巾を吸い始めたらしい
私「ン?キャー!モウ、マイッタア」
#68 12月のトイレ
あき「おかあさん、ゆげ ついた ウンチ でたヨ。あき、あったかい もの たべすぎたんだね」
#69 冬、我が家の朝
あきとまさき、曇った窓ガラスをこすって遊んでいる。まさきは、冷たい手で父の顔に触る。
まさき「タータン、キャッ キャッ」
夫「冷てぇなあ。ヤメロ、ヤメロ、ヤメテクレエ」
まさき「キャッ キャッ」もう一度
夫「まいったなぁ。しょうがねェ、起きるか」
夫は、まさきを抱いて階下へおりる。キュリーしっぽを振る。パタパタ パタパタ
私「キューちゃんも行きたいんでしょ。さあ、あきも行こう」
あき「ちょっと まってて。あき、あさ みてるんだモン。ネッ、しろく なって きたでしょ。あさは よるから できるんだねェ」
#70 まさき、私にしがみつく
まさき「ウワーン ウワーン!」
私「どうしたの?」
あき「あきが かまったの」
私「まさきは、あきのたった一人の弟よ。なんでかまうの?!」
あき「ダッテ カワイインダモン」
#71 まさき、伸びあがる
まさき 私の背中で「パクパク パクパク」
私「まさきちゃんたら、雲でも食べたがっているのかしら」
あき「カキだよ。きの えだに ひとっつ のこって ゆれてる」
まさき「ウンマー ウンマー パクパクパク」
#72 まさき、吠える
リキ(犬)がキュリーに吠える 「ウー… ワン!」
まさきは身構えて、ありったけの声で吠え返す
「ウー ワン!ワンワン!」
リキ「……」
#73 マサキ、自分でする
まさき、キュリーのハーネスと引き綱を玄関へ引きづってくる。
私「ありがとう。それと、まさきのクックは…」
まさき「チュッチュ チュッチュ」
まさきは、台所のすみっこへ走っていって、自分の小さな靴を持って戻ってくる。
私「まぁ、そんなところにあったの?えーと、アラ、おかあさんのクックもないわねぇ」
まさき「チュッチュ チュッチュ」
まさき、今度は押入れをゴソゴソやって、私のブーツを出してくる。
私「見つからないわけだわ。ありがとう。それと、また、まさきの靴がないわねえ」
まさき「チュッチュ チュッチュ」
まさきは、逆さまに履いた長ぐつの片足を私にさわらせる。
私「まさきちゃん、自分で履いたの?ワァ、スゴイ!」
#74 『アンクルトムの小屋』を観て
あき「ドレイゴヤって なぁに?」
皆、一生けんめい テレビを見ていて答えない。パチッ。あき、スイッチを切ってしまう。
おじいちゃん「わかった、わかった。教えてくれるから、テレビをつけて、ジイにダッコしろ。…いいか、奴隷小屋っていうのはな、お金で買われた人たちが逃げないように閉じ込められている豚小屋のような所だ」
あき「やっつけられてるねェ。チぃ でたねぇ。いたいねェ」
おじいちゃん「言うこと聞かねぇと、ああに叩かれるんだと」
あき「カナシイ オハナシダネェ カナシイ オハナシダネェ…」
#75 クリスマスの朝
あき「だめだヨ。あきが ボタン とめるんだから」
私「ゴメン、ゴメン。だって、いつもやってちょうだいって言うから」
あき「あき できるもン。ヨーイショ ヨーイショ… アレッ、きつく なっちゃった」
私「これは、ちょっとひどいよ。一番ボタンさんが、下の方の穴から顔を出しちゃったし、二番さんと三番さんは、上へいってる。一番上のボタンから順番にはめなくちゃ。いい?」
あき「アッ アッ、ダメ。あき やるんだもん」
私「アッ、ゴメン。待ってるね」
あきは、長いこと奮闘していたが
あき「デキタ!」
私「どれどれ… あっ、本当だ。ちゃーんとできてる。サァ、セーターも挑戦してみようか」
あき「これは うさぎさんが まえだから… こうやって こうやって… デキタ!」
私「スゴイ、スゴイ。なら、今度は靴下よ。これも、いつも履かせてあげてたけれど、自分でできるかナ」
あき「あき できるよ。ヨイショ ヨイショ。アレッ、かたっぽ へんに なっちゃった」
私「足の形をよく見てね」
あき「アッ、そうか… デキタ!おかあさん、さわって」
あきは私の前にキオツケの姿勢で立つ。
私「どれどれ… ワァ、できてる。全部着れたね。ちゃーんと着れたね。おかあさん、最高のクリスマスプレゼントをもらったワ。あきー」
あき「ヤッタ!ヤッタ!」
二人、抱きあって喜ぶ。
#76 公園で
公園で三人の兄弟が遊んでいる。あきは、棒きれを振りまわして、その中へ割り込もうとする。
さやかちゃん「ああ、もういや!わたしたちが せっかく あそんで いるのに、このこったら じゃまばっかりするんだもん。たかちゃん、チャンバラでもして このこの あいてして やってよ」
たか君「いいよ。さあ、こい。まけないゾ」
あき、めちゃくちゃに棒を振りまわす「エイッ!」
たか君「ちがう ちがう。それじゃ、あぶないヨ。しょうがない、にげるが かちだ。コッチ こいよ。コッチ、コッチ」
あき「マテー!マテー!」
あきは懸命にたか君を追いかけるが、どうにも追いつかない。くやしまぎれに砂を投げる。
みんな「すななんて なげちゃ ダメ!ダメ!」
私「棒は捨てなさーい!砂なんて投げちゃダメよ!… 聞けないの?!じゃあ、おかあさん帰るわね」
あき「おかあさーん おかあさーん、ウワーン!」
みんなは心配して、あきの傍に集まってくる。
「だいじょうぶ。おかあさん いかないって。なかなくて いいんだヨ」
あき「ヒック ヒック…」
たか君「おばちゃん、このこ なんで すな なげたり しちゃうんだろうね?」
私「ごめんね。あきは、まだ三才になったばかりなの。それに、あきは、ゆうじ君みたいに、いいお兄ちゃんや、お姉ちゃんがいるわけじゃないから、遊び方が、よくわからないんだと思うのよ」
さやかちゃん「ソッカー。じゃあ、みんなで あそんで あげようよ。なにが いいかナァ…。オニゴッコなら できる?」
あき「オニって オメンするの?そいで、まめ、ぶつけるんでしょ」
たか君「ほんとうに しらないんだねえ。ボク、よく おしえて あげるよ。アノネ…」
皆で一生懸命にオニゴッコの仕方を教えてくれたが、まだあきには、よくわからない様子。
ゆうじ君「ボク、いっしょに にげて あげる。それなら いいでしょ」
あき「ウン、ワーイ!ワーイ!」
それから、みんなでオニゴッコが始まった。タカオニ、コオリオニ、動物園ごっこなど…そして夕方。
私「帰る時はね、みんなにバイバーイって言うのよ。そしたらまた遊んでもらえるからネ」
あき「バイバーイ!」
みんな「バイバーイ!」
ゆうじ君、走って見送りにくる 「バイバーイ!また あそんで やるからなァ、チビー!」
あき「また あそぼうねー。バイバーイ!」
#77 身体障害者の日の集いに参加して
聴覚障害者の方々と合席になった私達。
私たちのところへは、様々な人が話しかけてくれたが、聴覚障害の方々のところへは、手話のできる二名程しか、直接には声をかけない様子だった。
まさき、聴覚障害のみんなの方へ身をのり出して「バーバー バーバー」
けいさん「バーバーバーバー」
まさき「キャッ キャッ キャッ」
けいさん「ド ウ ゾ」
まさき「ウーマ ウーマ キャッ キャッ」
まさきは、みかんをむいてもらい、喜んでいる。
私「手話を使わなくても赤ちゃんには、話しができるんですね。ヨーシ、私もお話ししちゃおうっと。」
私は、口話と、下手な指文字で話しを始める。
私「ワ タ シ ノ ナ マ エ ハ ヘ ロ サ ワ リ エ コ デ ス」
みんな拍手。パチパチパチー。
#78 かよちゃんと仲良く遊べたよ
かよちゃん「アーキーちゃーん。こうえん いこう」
あき「テレビ みようよ。サッチャンの テレビ やってるよ。ネッ ネッ」
あきは、かよちゃんを抱きかかえるようにして、家へ入れてしまう。
かよちゃん「カヨコ、テレビ ツマンナイ」
あき「じゃあ、ハサミ かして あげるよ。それと カミもね」
かよちゃん「ワア、うれしい。カヨコ、かみ きる。ジョキ ジョキ ジョキー。はい、ちいさな さんかくが できました」
あき「あきも カミ きる。ジョキ ジョキー。あきは おおきい さんかくだゾォ」
かよちゃん「こんどはね、ジョキッ。さんかくに おくちが できましたぁ。パクパクパク」
あき「あきも おくち つくろうっと。おおきい おくちだゾォ。パクパクパク」
まさき「ウーマ ウーマ パクパクパク」
あき「まさき、あきが パクパクって いったから、たべるんだと おもって、まちがえちゃったんだねェ」
かよちゃん「ウフフ… じゃ、カヨコ おいしい もの つくって あげる。おかしが いいですか?ジョキ ジョキ ジョキー。はい、どうぞ」
あき「あきも おいしい もの つくって あげる。エート エート… じゃ、ラーメン。ジョキ ジョキ ジョキー。はい、まさき」
かよちゃん「この ラーメン、バナナみたい。ウフフ…」
あき「アハハハハ…」
私「仲良く遊べるようになったのね。ついこの間まで二人とも赤ちゃんだと思っていたのに。もう三才になったんだもんね。春になったら一緒に保育園に行こうね。ああ、なんだか楽しみになってきたナァ」
(連載6へ続く)