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連載14 第三集 1~3月編 『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89



一・二・三月


あき 四才二か月~四か月


まさき 二才四か月~六か月



【写真・第三集の表紙】

#144 ポタポタ焼き


明日は、ドンド焼き。
夫と子供達で稲の花を作るという。ところが…
夫 「おい まさき、そんなに水を入れんなよ。あーあ、ペシャペシャ。しょうがねえ、粉でも入れろ。え?ひと袋も入れたのか?おっと、こぼすな、こぼすな」
と、こんな調子。やっとおだんごにして柳の枝につけたけれども、子供達が枝の下を走る度、ポタポタ落ちる。
あきとまさき 「ワーイ、ポタポタやきだーい!おもしろい おもしろい!」
バタバタバタ… ポタポタポタ…
夫 「やめろ、やめろ!それにしても、くっつかねえダンゴだなあ。小麦粉、入れすぎたのがまずかったかなあ」
私 「キャー。小麦粉?」

#145 冬枯れの道で


あき 「あっ、かわいい おはな さいてる」
私 「よく咲いたわね。寒いでしょうに…」
私は、そう言いながら先を急いだが、子供達が来ない。戻ってみると、花を囲んでしゃがみこんでいる。
まさき 「マサチ、ハーハーハーって チテルの」
あき 「あきと まさきで、おはな あっためて あげてんだよ。おかあさんが して くれるみたいにさ」

#146 兄弟げんか


ケンカをして、まさきが泣いてしまった。キュリーは、まさきにすり寄って心配そう。
まさき 「チュータン いいこね。あき バカ」

#147 夫婦げんか


あき 「おとうさんと おかあさん、けんかした こと あった?」
私 「ないよ、あんまり」
あき 「ウーソだーい。あったヨ。かけぶとんの とりっこしてた こと あったモーン」

#148 てっちゃん


小学校一年生のてっちゃんは、活発で、まさきのあこがれ。でも、大きな子ばかりの中にいる今日は、てっちゃんも勝手が違うらしい。
まさき 「てっちゃーん、てっちゃーん、ガンバレー!… へんねえ、てっちゃん ちいちゃく なっちゃった」

#149 ピーターパンに夢中


あき 「おかあさん、きょうも あきが ねてる とき、あきの こころんなか、あるきまわって みた?そしたら、なんて かいて あった?」
私 「ピーターパン、ピーターパンて、あっちにもこっちにも」
あき 「やっぱり そうか。ウフフ… ねえ、おかあさんは、ねてる とき、なんの ゆめ みた?」
私 「みんなで空を飛ぶ夢。ピーターパンが先頭で、次があきで、その次がまさきで。おかあさんは、一番後ろから、まさき、おっこっちゃわないかなあって、はらはらしながら行ったわ」
あき 「じゃあ、あきと おんなじ ゆめだね。でも、ちょっと ちがったよ。あきが せんとうだった。だって、あきは、ピーターパンより はやく とべるんだもん。そいでね、おかあさんは、あきと まさきが つくったげた くびかざり ふたっつ して、あかい スカート はいて とんだの。ああ、おもしろかった」

#150 棒剣


あき 「おーい まさきー、いくゾー。ぼうけん ぼうけん」
まさき 「オー、チュッパツチンコウ!」
崖っぷちの狭い道を裏山へ登って行った。ところが、なかなか帰って来ない。はらはらしていると、突然ふたりが、裏山から転がるように降りて来た。
まさき 「カアタン、ぼうけん いったヨ。ぼうけん ぼうけん」
あき 「あき、ぼう いっぱい ひろっちゃった。これ けんに して、まさきと ピーターパンごっこするんだ。『ボウ ケーン』なんちゃって」

#151 おじいちゃん


あきとまさき 「おじいちゃん、どこ いくの?」
おじいちゃん 「お仕事だよ」
あき 「じいは としよりだから、すこし やすめ」
まさき 「やすめー」
おじいちゃん 「そうだなあ。よしよし、よしよし」
ふたりの頭を、かわるがわる撫でてくれる。
おじいちゃん 「それじゃあ、行くからな。かあちゃんと、いい子で待ってろよ」
ふたり、まだ木枯らしの吹きこむ縁側の戸を大きく開けたまま、いつまでもおじいちゃんを見送っている。
あきとまさき 「じいちゃん、じい、はやく かえって きてねー」

#152 らくがき


あき、家へ入るなり 「ありゃっ!」叫んだきり、感心したように、家中を見て回っている。
あき 「だって スゴイや。まさき、うちじゅう いろ ぬっちゃったよ。ヒーターもー、つくえもー、トイレの ともー、この かべもー。あっちも ぜーんぶ。しろくて つまんないから、まさきが いろ ぬって くれたんだネ。そうだ ほら、フレデリックの ほんに かいて あったよネ。『ふゆは、はいいろで つまんないから いろを ぬりました』って。なっ、まさき」
まさき 「エヘヘ… きれいでチョ?」

#153 ネコタン


まさき 「ウワオー!まってー ネコターン!」
まさきは、二匹の猫を追いかけて、田んぼの中へ入りこんだ。まさきが、ずっと下の田んぼで、足が泥にめりこんで、動けなくなっているのをキュリーが発見。靴は、とっくにどこかへ落として来たらしい。まるで泥の固まりのよう。
まさき 「ネコタン いっちゃったよ。ゴアン たべ いったのかなあ?また、あそんで くれるかな」

#154 おとうさんのシャツ


まさき 「あっ、これ トウタンの」
まさきは、取り込んだばかりの暖かな洗濯物の中から、夫のシャツやズボン下をひきずって行って、広げたり、自分にあてたりしながら笑っている。
まさき 「おおきいねえ おおきいねえ。マサチ、オオチク なりたいなあ」

#155 危険


通りを渡ると、いつもまさきは、私の手をほどいて、すぐ横の公園へ駆けこむ。今日も、そうだと思っていた。
私 「キュリー、ツーザパーク。フォローまさき(公園へ入って、まさきの所へ行って)」
ところがキュリーは、渡ったばかりの道へくるりと向きを変え、足の爪で道路をカシャカシャとひっかいて普段と違う。
私 「キュリー、どうしたの?まさき?まさき!早く!」
その時、急ブレーキのものすごい音。まさきは、私の腕に飛び込んできた。驚いた子供達が、公園から、パラパラと駆けて来る。
まさきは、道を渡る途中でシャベルを落としてしまい、私と手を放してから、一人で道の真ん中へ取りに戻ったのだそうだ。
車から降りた青年 「ボク、大丈夫か?カーブでよく見えなくて、やあ、すみませんでした」
私は全身に寒気を感じて震えながら、まさきの小さな手とキュリーのハーネスを、きつく握って帰った。

#156 ガンバレ宣伝カー


町議会議員の選挙が近いので、宣伝カーが、町中を走り回っている。
あきとまさき 「がんばってー がんばってー!」
宣伝カーのうぐいす嬢 「かわいらしいご支援、ありがとうございます」
あきとまさき 「がんばってー、がんばってー、センデンカー!」

#157 節分


あき 「まさき、この マメはね、まくんだよ。いいか?おにはー そとー、ふくはーうちー!」
まさき 「オニアー トトー フクアーウチー。やっぱり やーめた」
豆の入った升をかかえて、黙々と食べ始めた。
あき 「ばあちゃん、まさきったら まめまきの マメ、ぜーんぶ たべちゃったヨ」
おばあちゃん 「ほう、そりゃあ、一番まちがいねぇわ。アッハッハッ…」

#158 あきちゃんへ おかあさんより(初めての手紙)


あき 「あき、おべんとうの なかに おかあさん いれて くれた おてがみ、ちゃんと よめたヨ。おともだちも みーんな よんだ。『おかあさんより おおきく なあれ』って、かいて あった」
私 「よく読めたね。でも、あのね、ウフフ… 『おかあさんより』は、下に書いてあったでしょ?それは、おかあさんからのお手紙ですっていう意味で、最後に読むの。それでも、あきに自分で手紙を書けるなんて、音声ワープロのおかげね」

#159 キューちゃん、ありがとう


マーちゃんとまさきが、いなくなってしまった。マーちゃんのおかあさんが、捜してくださったが見つからない。
マーちゃんのおかあさん 「困ったわ。キューちゃんなら知ってるかしら」
私 「聞いてみるわね。キュリー、ファインドウェイ ツーザマサキ!まさきを捜して。お願い」
キュリーは、公民館の地下の入り口へ私たちを導いて止まった。
マーちゃん、地下室から 「オカアシャーン!」
まさき 「オカアタン、みーつけた!」
私 「ああ、よかった。キューちゃん、グッドガール」
マーちゃんのおかあさん 「キューちゃんは、知ってたのね。ありがとう」

#160 目の見えない本物のおかあさん


お話のクライマックスで、まさきが起きてしまった。自分の絵本のほうを読んでと、ぐずりだす。
あき 「せっかく おもしろかったのに。おかあさん、ふたりいたら いいな。めのみえない ほんもののおかあさんと、めのみえる もう ひとりの おかあさんと。そいで、ほんものの おかあさんが、あきの もの」
私 「あきは、目の見えないおかあさんのほうでいいの?」
あき 「あったりまえだよ。ほんものの おかあさんだもん。めの みえる おかあさんは、てんじ よめないから、つまんない」

#161 雛飾り


あき 「おかあさん、おおきく なったら どれに なる?」
私 「そうねえ、お姫様がいいかな」
あき 「じゃあ、あきは、おとのさま。まさきは?」
まさき 「マシャキ、あかい ボンボリ!」

#162 結婚五周年記念日


家族で、レストランに行くことになった。子供達も、大喜び。ところが…
ボーイさん 「すみませんが、犬は、他のお客様のご迷惑になりますので、お断りいたします」
夫 「これは盲導犬です。家内の目になって働いてくれている犬ですから、家内と離すわけにはいきません。それに、よく訓練ができているので、他人の迷惑になるようなことはないと思いますよ」
ボーイさん 「たとえそうだとしても、犬は、衛生面で問題があります」
私 「そうなると、私もここから出なければならなくなってしまいます。そうならないために、キュリーは、お風呂にも入っていますし、今も、子供達と一緒にブラシをかけて、熱いタオルをしぼって拭いてから、この洋服を着せて来ました。念のため、この敷き物も敷いています。盲導犬から人間にうつる病気もないので、保険所でも、盲導犬は、入れるように指導してくださっていると思います」
しかし、いくら話しあっても、今回ばかりは、わかってもらえなかった。
ボーイさん 「しょうがありませんね、今日は、席にもついてしまったことだし、お客様も少ないので、まあ許可しますが、次回はお断りしますので、よーく心得ておいてください」
それだけ言って、向こうへ行ってしまった。
夫 「そう、しょげんなよ。あの仕事熱心な彼だって、キュリーの立派なのを見たら、わかってくるさ」
私 「そうなんだけど… なんだか、せっかくのお祝いがだいなしになっちゃったみたいで悲しいのよ。もしみんなが、犬がいていいとか、悪いとかいう論議の前に、犬と力を合わせて生きようとしている人間がいるんだって… そのことをまず見てくれるんだったら、こんな扱いにはならないはずなのに」
一方、利用客は、キュリーがテーブルの下で静かに伏せていたので、私達が帰りに歩きだすまで、キュリーの存在に、気づかなかったらしい。
女の人 「まあ、ワンちゃんがいたのね」
男の人 「おっ、盲導犬だね、頑張れよ」
私 「はーい。ねっ、キュリー」
明るく答えようとしたとたん、涙が落ちた。私に抱かれていたまさきは、その涙を指につけて、不思議そうにしている。
あき 「おとうさん、こんどは もっと おもしろい とこに いこうね」
(このレストランでは、後に、オーナーの方が理解してくださり、快く受け入れてもらえるようになりました)

#163 すべり台の上で


まさき 「ポッカポッカ あったかいねえ。ホーイ、おひさまー!おひさま、マサチんとこ みて わらってる」
私 「お日様、何て言った?」
まさき 「マサチー、オオチク なったかーい!って いった」

#164 消防自動車マサキ号


まさきは、「しょうぼうじどうしゃジプタ」の絵本が大好きで、日に何度も「よんで よんで」と持ってくる。そんなある日…
1階の台所あたりから、水のザンザン流れる音。私が階段を駆け降りると、床は水びたし。私の顔にも、ホースの水が、いきなりピシャッと飛んで来た。
私 「キャー、こらっ!」
まさき 「ジュッジュッジュー ジュッジュッジュー。たちまち かじは きえました」

#165 あっちむいてホイッ


あき 「おかあさん、あっち むいて ホイ しようよ」
私 「おかあさんに、できるかなあ?」
あき 「できるさ。いい?じゃんけん パー」
私 「じゃんけん、グー」
あき 「あき、かっちゃった。あっち むいてー ゲンカンー」
私は全くひさしぶりなので、あわてて玄関とは反対の窓の方を向く。
あき 「キンコンキンコーン。あきの いった とうり。うまくできたでしょ」
まさき 「マサチも やるー。じゃんけん パー。あっち みてー げんかーん!」
あき 「キンコンキンコーン。まさきも うまいゾ」

#166 のぞいてたんだョ


あき 「おかあさんは、なんで おばあちゃまの おうちから、この おうちに ひとりで きたの?」
私 「おとうさんと別々にいるのは、ちょっと寂しいなって思ったからかな」
あき 「やっぱり そうか」
私 「知ってた?」
あき 「もっちろん。てんごくに いた とき、くもんとこ あな あけて、のぞいてたんだヨ」
私 「それで、おかあさんたちの所へ来てくれたのね」

(連載15へ続く)

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