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連載8 第二集 1~3月編 『かみさま きょうも おひさまを つけてくれてありがとう』あきとまさきのおはなしのアルバム '88 


【写真・第2集の表紙】

一・二・三月
あき 三才二か月~四か月
まさき 一才四か月~六か月


#79 3才児健診から帰って


私 「おじいちゃん、今日、あきはとっても偉かったんですよ。体重測定の時なんか、自分からどんどん脱いで、ひとりで測りに行ったりして」
おじいちゃん 「ようし、あき、偉かったなあ。さあ、ここへ頭を出せ。撫でてやるぞ」
しばらくして…
私 「あら、あき、そんな所に屈んで何してるの?」
おじいちゃん 「おっかさんにも、撫でてもらおうと思って、あきは、さっきっからそこへ頭を出して待ってるだよ」

#80 母の大失敗


私とキュリーとあきの三人、暗い駅のホームに降りたった。
私 「キュリー、ツーザ ステップ(階段のほうへ行って)」
キュリー、しばらく左右を見回してから、大きくシッポを振って、右へ向かって歩きだした。ところが、人気のないホームのこと、あきは、心細くなったのだろう。
あき、私の手を引っ張りながら 「おかあさん、ちがうヨ。ちがう ちがう」
私 「そう?へんねえ。ノー。キュリー、バック」
私は、キュリーに注意して、向きをかえて歩こうとした。しかし、今度はキュリーの足が進まない。とうとう四肢をふんばって止まってしまった。
私 「へんだわ。ねえ、あき、本当にこっち?ねえ、あき…」
私がしつこく尋ねたので、疲れきっていたあきは、べそをかきはじめた。その時、後ろから、大きな声。
駅員さん 「危ないですよ!奥さーん、そこに、じっとしていてくださーい!」
ホームの外れから、落ちないように、キュリーが懸命に止めてくれていたのだった。危ないところだった。
私 「ああ、キュリー、ごめんなさい。あき、ごめんね。ごめんね…」
キュリーの判断を疑ったこと、幼いあきに責任をかしたこと、本当にいけなかった。もう二度と、こんな失敗をしてはならないと、私は強く自分に言いきかせた。

#81 おばあちゃんは、なぜここにいたの?


あき 「うらの やまの てっぺんに あったって いう おしろは、どんな おしろだったの?」
私 「そのことなら、おばあちゃんに聞いてごらん。おかあさんは、後からこの家に来たから、このあたりの歴史はよく知らないけれど、おばあちゃんなら知ってるわ。おばあちゃんは、このお家で産まれて、ズーッと山を見ながら、大きくなったのよ」
あき 「なんで おばあちゃんは、ズーッと ここに いたのか わかる?」
私 「あきは、なんでだと思うの?」
あき 「おかあさんが くるのを ズーッと まってたんだよ」

#82 私は家族の光?


夫、私の膝を枕に寝ようとする。
あき 「あきも!」
夫「おとうさんの枕だゾ」
まさき 「アッコ アッコ」
まさきまで、だっこを求めて、私の膝によじ登って来た。
私 「重いヨ。重いヨ」
しばらくの押しあいへしあいの後、ついに子供達が膝を獲得。おいだされてしまった夫、しみじみと、
夫 「そう言えば、この間、おかあさんが書いた手記に編集者の人は、『私の光は、家族の愛』とかってタイトルをつけてくれたけど、あれは、どうもヘンだと思ったんだよ。やっぱり『私は家族の光』にすればよかったな」
私 「本当にそう思う?ヤッター!」

#83 伸びろよ伸びろ、松笠よ


あき 「おかあさん、やま、いって きたヨ。ばあちゃんに、まつかさ とって もらった」
私 「よかったねえ。あき、ちょっとここ、めくってごらん。種が入っているでしょ?」
あき 「ほんとだあ。なんで はいってるの?」
私 「松笠と一緒に、種が土の上に落ちるでしょ。そこから松の芽が出て、ドンドン大きくなって…」
あき 「このくらい?」
私の膝に載って、松笠のついた枝を、高々と上げる。
私 「もっともっと」
あき 「じゃあ、このくらい?」
私の胸に飛び付いて枝を振る。
私 「いやいや、もっともっと」
あき 「このくらいかー?!」
あき、片足を私の肩に、片足を私の頭に載せ、伸びあがって、松笠の枝を振り回す。
おばあちゃん 「危ねえ危ねえ、おっかさん、つぶれっちゃうよ。コラコラ」

#84 一番目の春


あき 「おかあさん、みつけたヨー。きが きいろ。きてー、きてー」
私 「どこどこ?… あっ、これは、きっと黄梅よ。毎年このあたりではね、春は、一番初めに、この枝に来てとまるの。それから順々に回って行って、後、二か月もしたら、町中が春で一杯になるわ」
あき 「あき、おばあちゃんに おしえて くる。ハルダヨオーって おしえて くる」
あき、家を指して駆けもどって行く。
私 「あきー、お買い物に行くんじゃなかったのー?」
あき 「また あとでねー。あき、だいじな ごようなんだー!」

#85 にいちゃんがイナイゾ


あきと夫が、コンサートにでかけた夜。私とまさきは、祖父母のところへ行っていたのだが、まさきは、ふいに母の手をひっぱって、部屋へ戻った。
まさき 「イーターン イーターン… いないねえ。イーターン イーターン!」
洗面所やトイレのドアまで全部あけて、一生懸命兄を捜すまさき。それでもいないとわかると、今度は、大急ぎで祖父母のところへ戻って、また捜す。往復すること二回。
私 「まさきが、あんまり熱心にあきを捜すものだから、私、なんだか胸が一杯になっちゃいました」
おばあちゃん 「やっぱり兄弟だねぇ」
おじいちゃん 「今度っから、どこへでもふたあり連れて行ってやらんとダメだぞ。そうだ、おっかさん、まさきにリンゴをむいてやれ。それから、じいが、オベチャに入れてやろうなあ。まさきは、風呂が好きだから」
まさき、跳び上がって拍手。祖父をひっぱるようにして、元気にお風呂場へ向かった。

#86 あきはお雛様


あきに呼ばれて、私がそばへ行ってみると、あきが、お気にいりの花柄の夏がけを体に巻いて、階段の上に座り込んでいる。
私 「あき、どうしたの?そんな所に座っちゃって」
あき 「あき、おひなさまに なったんだヨ」
 

#87 小鳥になって大空へ


小鳥の飛び立つ羽ばたきの音。
まさき、私の手をとって 「ピョンピョンピョンピョーン ピョンピョンピョンピョーン パタパター パタパター」
まさき、小鳥が跳ねながら道を横切って、畔のふちから空へ舞い上がって行った様子を、私に伝えようと、一生懸命まねをしてみせる。
私 「そうなの。小鳥さん、ピョンピョンピョンピョーンって飛んでいったのね」
まさき 「ピョンピョンピョンピョーン パタパター パタパターって、ピョンピョンピョンピョーン パタパター パタパターって…」
畔の縁に立って、大空を見上げながら、今にも飛び立とうと羽ばたいていたまさきの姿は、どんなふうであったろうか。

#88 きれいだネ、かわいいネ


まさき 「にいたーん、あったおー、あったお-」
あき 「ほんとだあ。あおい はな、ここにも あった。おかあさん、さわって」
私 「きれいだね。かわいいねえ… お花もね、褒めてあげると、喜ぶんですって。おかあさんの小さい頃、おじいちゃまが、よくそう教えてくれたっけ」
あき 「きいてるの?」
私 「もちろんよ」
あき、小さな花に唇を寄せて「きれいだネ。かわいいネ。きれいだネ。かわいいネ。ようし、これで、よしっと。あき、さっきの はなにも、いって くるよ。まさき、こーい!」
まさき 「オー!」
ふたり、今来たばかりの道を、元気に駆け戻って行った。

#89 どろんこ遊び


あき、玄関に私を呼んで、全身どろまみれの服を得意そうにさわらせる。
私 「スンゴーイ、よく汚したわねぇ」
あき 「あき、エイくんとー、ミユキちゃんとー、すなんなかに みず ながして あそんだの。エイくんはね、しま つくったの。ミユキちゃんはね、いけ つくったの」
私 「あきは?」
あき 「みず はこんだの。バケツに いれてさ、なんども なんどもね」
私 「いい子だったのね」
あき 「エイくんもね、あきんとこ、いいこに なったねって いったヨ。また あした、あそびに くるって。ああ、よかった。アハハハ…」

#90 おかあさん、お化粧してあげる


まさき 「アータン アータン」
まさき、私の顔をしきりに撫でる。特に口のあたりは念入りに。しばらくして、私は、まさきの手がべとついているのに気がついた。それに、なにやら甘い匂い。
私 「あき、ちょっと来てみてくれる?ねえ、まさき、なにか持ってる?」
あき 「あれ?まさきの おてて、ももいろ。おかあさんの おかおも、ももいろしてる。おもしろいねえ」
私 「ん?… あっ、口紅!折っちゃったのネー」
私、あわてて洗面所に行き、顔を洗う水をためようと、洗面台の中をさぐり、二度ビックリ。なんとそこには、化粧品一式が、丁寧に水につけてあった。
私 「ウワ~、やられたー!」

#91 ジャングルジム


ピラミッド型の大きなジャングルジム。はじめて乗れた あきだったが、
あき 「こわいヨオ!ウワーン!」
私は、助けに登った。ところが、すぐ後ろから、まさきが登って来た。降りたいあきに、登りたいまさき。二人とも、両手両足をジャングルジムから離して、全身で私にしがみついてしまった。
私 「困ったなあ。よーし、ハッ!」
子供達を両脇に抱えて、ピラミッドのてっぺんから、スカートのままヒラリッ。
まさき 「わーい、キャッキャッ!」
あき 「おかあさん、スーパーマンみたい!」
泣き声を聞いて、駆けつけてくださった、ご近所の明美おばさん「よかったかーい?はあ、たまげた」

#92 入園のお買い物


私 「お弁当箱でしょ、お箸でしょ、お箸箱でしょ。今日は、いっぱい買ったわね」
あき 「うん、あき、おべんとう だいすきなんだ」
私 「そうよね。あきが幼稚園に行くようになったら、おかあさん、毎日作ってあげるからね」
あき 「あき、ようちえん いかないヨーダ」
私 「なんで?いやなの?」
あき 「ううん、やじゃ ないけどさ、アシタ いくんだ」

(連載9へ続く)

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