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刻を選ぶ者たち 2

「それでは橘様、改めまして、ようこそLLYOW(リーオー)へ。この度は設定死をご希望とのことでよろしいでしょうか?」

「はい」

「ありがとうございます。この度、橘様の担当をさせていただきます藤堂と申します。それではまず弊社についてご説明させていただいてもよろしいでしょうか」

「あ…パンフレットもいただいて読みましたので大丈夫です…けど」

「そうでしたか。ありがとうございます。しかし、決まりとなっておりますので、少々お時間いただきますが、改めてご説明させていただいてもよろしいでしょうか」

「ああ、はい…わかりました」

「ありがとうございます。それではまず社名のLLYOWですが、live life your own wayの略で、自分らしく生きる、自分のやり方で生ききる、と言う意味でございます」

「へー。そうだったんですね」

「はい。パンフレットをめくるとまず最初に大きく書いてあります」
藤堂は伏目がちに笑いながら言った

「あ…すみません」
薫が慌てたように言うと

「いえ、パンフレットの裏表紙は見ない方が多いので。では次に安楽死と尊厳死の違いについて、ご説明させていただきますね」

「え…それって設定死に関係あるんですか?」

「申し訳ありません。こちらも一応決まりとなっておりまして、続けさせていただいてもよろしいでしょうか?」

この担当者、よく見るとイケメンだな、など思いながら薫は適当に答えた
「あ、はいはい、どうぞ」

「ありがとうございます。ではまず、「安楽死」についてご説明させていただきます。
安楽死というのは、耐え難い苦痛を持つ患者様の生命を意図的に終わらせる行為を指します。
安楽死には医師や他人が直接介入して患者様の命を終わらせる「積極的安楽死」と、患者様に延命治療を行わないことで自然死を迎えさせる「消極的安楽死」の二つの形があります。
「積極的安楽死」とは、医師が薬物などを使って、患者様の死を引き起こす行為です。例えば、致死薬を投与することが含まれます。
「消極的安楽死」とは、患者様に対する延命措置を行わず、自然な死を待つことです。例えば、人工呼吸器や栄養補給を停止することが該当します。
そして安楽死は、患者様が望んでいる場合でも、国によって法律で厳しく制限されていることが多いのです。
まず、ここまでで何かご質問はございますか?」

薫は安楽死や尊厳死についてはなんとなくの定義しか理解していなかったが、この先も自分には関係ないと思っていたので、あまり深く考えずに答えた。
「いえ、特に大丈夫です」

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