春って大嫌い
春って大好き。
出会いの季節なんて言うし。
なんせ、彼と4か月ぶりに会えるから。
いつの間にか、春が好きな理由は、
自分の誕生日があるからではなく、彼氏と会えるからだった。
勿論、楽しかった。彼は私の暮らす街まで来てくれた。
いっぱいちゅーして、ぎゅーして、他愛もない動画とって、ベットでえっちして、スーパーの買い物袋を持ってくれて、メリーゴーランドに付き合ってくれて、味の濃すぎた鮭のホイル焼きを「おいしい」と言ってくれて、散り始める桜を一緒に見に行ってくれた。
そんな世界一幸せな春の4日間の最終日、今日。
私の友達が彼氏と別れ、彼氏の友達が彼女と別れた。
私は彼氏との短い春休みを終え、恋しい気持ちを抑えて遠距離に戻った。
同じ時に、別の場所で愛し合っていた3組のカップルは、
互いに異なる節目を迎えた。
私と彼は、少なくとも愛を深めた4日間の春休みだったが、
その頃、友達は残酷で苦しい別れの瀬戸際だった。
結果的に、3組のカップルのうち、
2組の築いた愛の運命は、運命ではなかった。
彼と過ごしたこの街に、いきなり一人で放り込まれた気分の私は、
別れ話を聞く名目で、その気分を紛らわすために友達と焼肉に行った。
ごめんけど、話の内容が入ってこない。
友達の口から出てくる、別れた彼氏への文句や未練の感情は、
私からすると他人事だった。
友達は口にした。「復縁できるなら、したいなって思ってる。」
思ったのはただ一つ。「彼とはこうなりたくないなあ。」
ふしぎなかんかく。
話をしているだけで、言葉では言い表せない不安が襲ってくる。
今、私の彼は、彼の友達の別れ話を聞いている。
どんな気持ちになっただろうか。
私と同じく「こうなりたくない」と思ってくれているだろうか。
彼の友達が彼女と「別れた理由」は、わからない。
けれど、もしも彼にとって、彼の友達の「別れた理由」に
共感出来る部分があったらどーしよう。
春の4日間、改めて感じた彼との愛は、予想以上に自分にとって無くてはならないものになっているのだと心の中で悟った。
まあ、別れてほやほやの友達の前で、そんな私の愛や不安は語れなかった。
語る代わりに、自分のポエマー心に問いかけた。
「この不安は何なの?」
彼と居たさっきまでは、愛が地球を救えると信じられるほど、
確かに、心が、100に満ちていた。
なのに、今は。
心が、一瞬にして0だ。
0というか、何というか。
空っぽだ。
なんで?
ポエマーはこう答えた。
「愛の成長は、その愛を失う恐怖を成長させる」
とりあえず、彼と会うために頑張っていたダイエットが
一瞬で無駄になるほど、無心で肉を食べた。
友達のやけ食いに付き合ったあと、桜を見に行った。
一昨日、彼と見た桜の木の1つは、もう葉桜に代わっていた。
その桜を眺めながら、友達が言った。
「彼のことはまだ好きだけど、復縁しても、また同じ結果になる。
お互いのためじゃないからしない。」
失った愛が、心を前進させる糧になっていく友達をみて、
愛の散るはかなさを知った。
春って大嫌い。
別れの季節なんて言うし。
なんせ、彼と4か月間の別れが始まるから。
いつの間にか、桜も皆の心も、地面に捨てるように生まれ変わっていく。
彼と4日間隣で寝ていたベットで独り、
写真フォルダを見返して、動画の彼の声を聞いた。
安心しながらくすっと笑えた。
私だけは、生まれ変わらず、春の思い出を離さずに、むしろ溺れた。