ウェルビーイング綾 演奏会編
演奏編
ゴンちゃんの人形劇が終わって、さいごはお歌の生演奏。
メインがゴンちゃんなのに、トリは演奏なのかと。
プログラムを作るときに何にも意見したことはなかったけど、実はほんとうにこれでいいのかとけっこう迷った部分ではありました。
人形劇でけっこう盛り上がったところをかっさらう形になって、ゲストに失礼ではないの?
そしてメインのあとに演奏して場がきちんとしまるのか?
りさちゃんのお歌を、ちゃんとみんなは聞いてくれるのかな?
何回か頭の中でシミュレーションしてみたけれども、参照となる経験が少なすぎて最後がどうなってるのかほんとよくわからん。
でもまあ…とりあえずくまちゃんは許してくれる気はする!
実際にお会いしてお話ししたくまちゃんの心の広さと、前日のひとひのステージである程度の確信が持てたので、当日には迷いは全くなくなっていました。
しかしこれがまあ実際、蓋を開けてみればなんとも最高で完璧なステージ割だったのです。
楽器体験コーナーがそのまま演奏のステージに、ギターのたかをくんとパーカッションのさぁやちゃんと、ボーカルのりさちゃんの3人組。
りさちゃんは私の高校の同級生。
昔よくカラオケに行っては「りさちゃんの歌はすげーなぁ。なんでいつも鳥肌がたつんだろう?」と思っていた。
プロの歌手の人は別として、私がお歌を聴いた中でいちばん歌が上手い人。
昨年の暮れごろ家族ぐるみでごはんを食べに行き、そのときはじめてりさちゃんの旦那さんに会う。それがたかをくん。
年明け〜年度末にかけてなにかと仕事をお願いすることがあって、その流れで音響のことを相談したらまさかの全部やれますだったことは前述の通り。
そのたかをくんと20年来バンドを組んでいるさぁやちゃん。
私とはイベントの2ヶ月前に知り合ったとは思えないほど気があう。
家も近所だし、実家も近所だし、幼少期も今も生活圏が丸かぶり。そもそもなんで今まで会わなかった?くらいの人。
演奏会の序盤は、人と話したりしていて何の歌だったかもあんまり覚えていない。
やっぱりりさちゃんは歌が上手だな〜と思いながらなんか仕事をいくつかしてて。
さすがにちょっと疲れたから座って聴きたいなって、よっこいしょと座ったところが曲と曲の合間だった。
「じゃあ次は、かなちゃんからリクエストいただきました曲をやらせていただきます」
というりさちゃんのアナウンス。
え?
リクエスト??
さぁやちゃんには一応リクエスト出しといたんだけど。
りさちゃんにきちんと頼んだ記憶がない。
わたしがリクエストしたとしたらこのイベントを企画しているときに、ふいに何度か耳に入ってきていた中島みゆきの「糸」それしかない。
運転している車内で急に聴きたくなって、この曲ってめちゃくちゃいい歌詞やんけと。
で、とても今回のテーマに沿っているなって思ったので4月の下旬ごろさぁやちゃんにLINEした気がする。
「ひとひで聴きたいですか?綾?」
と聞かれ、そりゃ綾だねって答えてそのままだったような。
その後会ったときに一回曲目を聞いたかな?
そしたらなんか教えてくれなくて、糸については歌えるかわからんようなことを言っていたような言っていないようなよくわからん。
とりあえずそれ以降は、今一生懸命自分の持ち場を作り上げているこの人たちの進行を妨げることになるのは嫌だなと思って話題にだしたことはなかったはず。
そもそも演奏はさぁやちゃん、たかをくん、りさちゃんの持ち分だからいろいろ口出すところではないということもあり、糸いいねといったことすらすっかり忘れていたはず。
でもきちんと私の思いをすくいあげて、ちゃんと形にしてくれてたんだ。
そのあたたかくてやさしいやわらかい想いがどっと押し寄せて、イントロが始まったらもう、涙がとめどなく溢れてしまった。
こんなにも私の小さな思いを大事にしてくれてる人たちがいること。
こんなにも時間がない中、一生懸命練習してくれていたこと。
3人のやさしい想いが私のハートを強く揺さぶり、体育座りの膝に突っ伏して大号泣。
観客席のど真ん中にいるのでおそらく誰からも見える位置に座っていたのだけど
人目も気にせず心のまかせるままに泣いてしまった。
ふと顔を上げたらすぐ近くにりさちゃんの娘、たおちゃんがいた。
口をぽかんとあけて、不思議そうに私の顔を覗き込んでいる。
「ねえなんでないているの」
なんでだろ。言葉が出なかった。
「ままのうたしゅごいから、ないてるの」
うん、そうだね。
その通り。
うなずくと、彼女は得意げにふふんと笑って走り去っていった。
まるで自然からうまれ出てきた妖精さんみたいだ。
キラキラと笑顔を振りまいて、空気を輝かせてった。
りさちゃんの放つことばのひとつひとつが私の心をやさしく鳴らし
そしてみんなの心が平和の音を奏で、まるでその和音が演奏に乗って聞こえてくるようだ。
縦の糸はあなた
横の糸はわたし
織りなす布はいつか誰かを暖めうるかもしれない
そうだ。
私たちは、あつまりそれぞれの個性を織りなして表現することで
このちいさな妖精さんたちを守るあたたかい布になれるかもしれない。
縦の糸はあなた
横の糸はわたし
織りなす布はいつか誰かの傷をかばうかもしれない
そうだ。
ちいさく純粋な心が、この場所以外のどこかで今にも傷ついているかもしれない。
私たちが今日やりきったことは、その傷をやさしくかばってあげられる布になるかもしれない。
私がやるといったこの動きが大きな動きにつながって今のこの感謝の涙につながったように。
一人のやる!という決意があるだけで大きな波を起こしてたくさんの心を救えるかもしれない。
それは大風呂敷でしょうと笑う人がいるかもしれないけど
この二ヶ月の奇跡を実際にそばで見てきた人たちは、きっと私の話を真剣に聞いてくれるだろう。
人は誰しも人の役に立ちたいと思っているもの。
それがあどけない笑顔を守るためとなれば、さらに喜んで力を貸してくれるに違いない。
縦の糸はあなた
横の糸はわたし
逢うべき糸に出逢えることを
人は幸せと呼びます
ほんとうに、私は幸せ者です。
ちっぽけな私ひとりの「やりたい!」をみんなが応援してくれた。
くまちゃんがそれに応えてくれて。
ひとひの浩子さんが背中を押してくれて。
キオラのちくりんが日程を調整してくれて。
飲食店さんたちがお店をしめてかけつけてくれて。
プロの大人達が子ども達の楽しめる体験メニューを考えてくれて。
たかをくんがさぁやちゃんを呼んできて、りさちゃんがお歌を歌ってくれて。
そしてこんなにもたくさんの子どもたちと大人たちが笑顔で今日の1日を楽しんでくれて。
これを幸せといわずして何と言うのでしょう。
こんな場をこれからもたくさん作っていきたいと心に決めた日。
この動きがたくさんの笑顔を増やすことになると確信しました。
私と同じ親たちを癒し、娘と同じ子どもたちを笑かし。
そうした機会が増えたならどんなにたのしいことでしょう。
未来がこわいと思っている子たちが、今この瞬間を楽しむことの素晴らしさを学べて。
立派な親にならなければと日々奮闘するお母さんが、肩の力を抜いておいしいごはんを味わえて。
明日死にたいなと思っていた人が、やっぱり明日じゃなくてもいいかなって思える。
そんなイベントをこれからも季節のたびに繰り返していけたらと思います。
きっとこれを使命と銘じ、しっかりとまじめに地道に重ねていくことで
10年遅れと言われた宮崎が10年進んだ誇らしい場所になると思う。
私一人ではできないから、やっぱり今後もくまちゃんはじめたくさんのみんなにお願いしながら、織りなす布をどんどん大きく厚くしていこう。
そしてもっともっとたくさんの人を包み込める、暖かい場所を作れるように私自身大きな人になろうと誓った。
To be continued
このくまちゃん宮崎公演が終わったあと、私はとてつもない大きな宝物を手にしていました。
ずっとずっと欲しいと切望していた大切な仲間。
それからその大切な仲間とはじめる新しいプロジェクト。
みんなが胸にときめきを抱き、未来に向けて現在進行中です。
思いもかけぬ大きすぎるお申し出に最敬礼を示しつつ、今私たちはそれを形にすることを楽しんでいます。
皆様にこのドキドキをご披露する日がくることを、みんなでとっても楽しみにしています。
その日まで、ごきげんよう。