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もう一人の母 ~のりちゃん~

私には 実母の他に もう一人 母がいる
その名は のりちゃん
のりちゃんから たま~にいただく 
「ありがてえ お言葉」を
今後残していくための プロローグである

嵐のように来て 嵐のように去っていく

夫が 息子二人を連れて出かけてくれたので
片づけと買い物でもして ゆっくりしようと思っていたら
のりちゃんから LINEが来た
「タライ要らない? 持っていくから 2時頃行きたいんだけど」
すぐに返事を返さないと
10分ほどで 「ねえ!」と電話が掛かってくる(笑)
今日もそうだった

「居ない」とか「別の日にして」とかは ほとんど通用しない(笑)
来ると言ったら 来るのである
家に来たら 大量の手土産を広げ 
マシンガントークをして 帰っていく
こちらもたまに お礼のつもりで お菓子かなんかを渡したりすると
「もう気を使わないで こっちが好きでしてるんだからぁ」と言いながら
シャーッ!と自転車を走らせ 帰っていく

私は心の中で いつもこう例えている
嵐のように来て 嵐のように去っていく~

~本日の手土産~
タライ・食パン・サンドイッチ・葡萄・お菓子

のりちゃんとの出会い

のりちゃんは もちろん血のつながった私の母親ではない
でも 私にとっては もう一人の母親のような
とてつもなく大事な存在である

正しい関係性は 私の高校時代の同級生のお母さん
まじで 娘のように 可愛がってくれている

出会いは 私が高校1年の時
同級生直子のお母さんが のりちゃんだった
私は 当時厳しい女子校に通っていた
大学受験まっしぐらで 風邪をひいても休むな!
という なんとも言えない校風に
私も直子も 馴染めずにいた

そんな直子とは 打ち解けるのが早く
家にも 何度か遊びに行った
直子の 両親は 個性豊かな人で
父親は「大工」、母親(のりちゃん)は「小学校の先生」だった
二人とも 声がでかくて 最初会った時はびっくりした
初対面から 私は下の名前で呼び捨てにされ
「おい〇〇! よぉ来たなあ~」
「もう帰るんか!ちょっと待て 俺の大事なこの置物持って帰れ!」とか
言われちゃって・・・
あれ!? 私 親戚の娘かなんかだったかな?
と思うくらい 風通しと 居心地のよい家だった

どんな人とも 分け隔てなく付き合い
困ったときは いつでも誰でもいらっしゃいという
すんばらしい家族だった

父親から逃げた先は

私の父親は 家族に暴力を振るう人だった
高校2年のある日 
きっかけは なんだったか忘れたが
父親にものすごい剣幕で怒られた 殴られたのかもしれない
「このまま一緒にいたら 父親にぶっ殺される!」
と思ったことだけは 確かである

みんなが寝静まった頃 多少のお金を握りしめて
部屋着で家を飛び出したのである
頼ったのは のりちゃんだった

近所の タバコ屋の軒先にある公衆電話を めがけて走り
父親が追いかけてきたら どうしようと震えながら 
電話をした先が のりちゃんだった
私「家出した。今から行ってもいい?」

お揃いの弁当を持って

バスと電車で 1時間ほどのりちゃんちに行ったのを覚えている
そこから 1週間ほどのりちゃんちに居候させてもらっていた
母親がのりちゃんの家に 高校の制服やら教科書を届けてくれたので
のりちゃんの家から 直子と一緒に学校に通っていた
直子と お揃いの弁当を 毎日持ってきていることを
同級生に すこし不思議に思われながらも
大ごとにしないように 静かにのりちゃんちから 学校に通っていた
「そろそろ修学旅行が始まるので 帰ってきたら・・・」と
母から説得され 1週間ほどで 家に帰ることになったのだが
のりちゃんなら もっと居させてくれたかもしれないし
なんど助けを求めても 助けてくれただろう
その時から のりちゃんは私にとって 絶対的な味方になった
あの時 のりちゃん一家に助けてもらったことは 
一生忘れることはないだろう

のりちゃんの娘代わり?

当時から 型にはまらないタイプだった直子は 高2で高校を辞めた
そして今は 遠いアメリカの地で 夫と二人の娘と暮らしている
すぐに娘直子に会えないこともあってか
のりちゃんは 私を娘のように思ってくれて
年に何度も 訪ねてきてくれる
両手に 手土産をいっぱい抱えて(笑)

ふたりは相談相手

のりちゃんには 実の母親には話せないようなことも
相談したりする
子どものこと 夫のこと 仕事のこと
母親のようでいて 母親ではないから話せるのかもしれない
のりちゃんも 本当の娘ではないからこそ
私に話せることもあるようで
遠く離れて暮らす 娘直子の話を良くして帰る
「直子がこんなこと言って信じらんないんだけど!どう思う?」とかである
私は 直子の立場になって答えたり
のりちゃんに寄り添って話を聴いたりする
40歳になった私と 74歳ののりちゃんは 
親子のような距離感の 良き相談相手なのである

良きタイミングでやってくる

のりちゃんは いつも良きタイミングでやってくる
この間 長男が学校をずる休みした時も
急にのりちゃんがやってきた
「ほんと今日はツイてた! だって長男くんに会えたんだも~ん!」
と長男に抱き着き 大笑いして喜んでいる
学校に行き渋っている 長男についても
「母親の大丈夫だよ~って言葉に 子どもは安心するんだからぁ」と
励まされた

実はのりちゃんも 
娘の直子が 高校から学校に通わなくなった
「私だってさあ 学校から 娘さんが来ていませんって
電話が掛かってきた時はさぁ びーっくりしたよねぇ(笑)」と笑っている

「あれこれ心配しなさんな そのまんま ぜ~んぶを 受け止めてあげてぇ」
と 笑って エールを送られる
そうは言ってもねえ と思う時もあるが 
高校を辞めることを受け入れ 大検を受けさせて
そのあとは娘を信じて アメリカまで送り出した
この のりちゃんが そう言ってくれると・・・
小さなことで うじうじ悩んでいる この私でも
なんだかのりちゃんみたく ちょっとだけ強くなれる気がするのだ




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