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一重というアイデンティティ

私は一重です。


容姿のことで言われた一番遠い記憶として、叔母に「大人になったら二重にでもすればいいよね」と言われた記憶がある。
小学校入るか入らないかの頃だったと思う。


小学生の高学年になり、周りの子でアイプチを始めた子が出てきた。


中学生になり、ある男子から「二重だったらかわいいのにね」と軽く言われた記憶がある。わたしは彼へ好意を抱いていたわけでもないのにショックだった。

思春期のわたしは、彼から二重の顔じゃないと可愛くないんだ。ということを学んだ。
母に「なんでわたしは二重じゃないの?」と聞いたことがある。
すると「大丈夫だよ。大人にあると瞼が垂れてきて二重になるんだよ。だから焦る必要なんてないよ」と言われた。当時のわたしは、とっても素直な性格だったようで「そうなのか、別に急いで二重にならなくていいのか」と納得した。


中学校を卒業し、友人と人生初の化粧品を買いに行った。
小学校、中学校と長い期間遊んでいた友達とも離れ、高校生で新しい顔をいっぱい知ることになった。こんなにもかわいい子が沢山いるんだと驚いたが、すっぴんとの違いのも驚いた。化粧は魔法だ。

高校で出来た友人に、わたしが一重のままでいることに驚かれた。お遊びでアイプチや二重テープなるものをやってもらったことがある。しかし、一重の力が強すぎて何をやってもだめだった。
「わたしは二重になれない運命なんだ、それなら一重の人生を全うしよう」と訳のわからない使命感がうまれた。


社会人となり、初めて就職したのは化粧品販売。
接客することが好きであったこと、その当時に化粧品が好きであったことから選んだ。
わたしの教育係の人は母と同世代だった。優しく包み込んでくれるのに、友達のような距離感で話せるという、とても魅力的な大人の女性だった。いつからか憧れとなっていたその人から「一重素敵だね。特に下を向いたときに色っぽくて美人だよ。二重はかわいいって印象の方が強くなるから羨ましいなって思っていたんだ」と言われた。かわいいを飛び越えて、美人と言われる人生が来るなんて思いもしなかったため、これは夢?と思った。



中学校の男子に言われた言葉で傷ついたわたしに言ってあげたい。
「大丈夫よーあんた20年後に褒められるよー」って


二重の方が人生うまくいくし、幸せだと思っていた時期もあるけど、
今はこのまま一重でいたいし、これが自分らしさだよなと思っている。
きっとそれまでも自分の目を嫌いと思ったことはないんだと思う。
けれど、誰かに認められたことで、このままで良いんだって自分で自分を認めてあげるきっかけになったのだと思う。



容姿のことでコンプレックスは沢山あったけど、年を重ねて愛せるものが増えてきた。みんな同じように歳をとるのよ。シワを消す方法を考えるより、そんなシワも愛せるような歳の重ね方を考えていきたい。