アメリカのトレイルで沼の水を飲んだ話
人間が生きるにあたって、水というものは最も大切なものだ。食べ物も必要だけど、それ以上に水分がなくなったら、すぐに生きられなくなる。
◇ ◇ ◇
アメリカの人気ロングトレイル、ジョン・ミューアトレイル(JMT)を歩いた時のこと。5日目は、これぞJMTという景色が広がっていた。標高2000m以上の所にある湖。どの湖も綺麗で、ひとつとして同じものはなかった。
すごい、すごい。
夢中でシャッターを切る。
それまでトータル340kmを歩くことに不安しかなかった私が、ようやく楽しめた景色たちだ。
この日は体の調子も良かった。いくらでも歩ける。本来泊まろうと思っていた場所に到着したのが15時半。まだ元気だ。
翌日はレッズメドウという場所から、バスに乗って街へ降りる。今日歩く距離が長いほど、明日休める。今日は頑張ろう!
そう思った私は、急遽予定を変更して歩き続けた。あと5kmほど歩こう。小さな湖が沢山あるから、水も汲めるはずだ。
17時、今日の野営地を見つけた。地図上では小さな湖がある。テントを設営して、水を汲もうと湖の側に行った時、あることに気がついた。
湖とは呼べない。これは沼だ。
おそらく連日の晴天も影響しているのだろうか。そこには田んぼ程度の水しかなかった。
他を探そう。なんだか川の音がする気がする。その先をしばらく歩いたが、一向に水場がない。
これ以上歩いたら時間がかかる。暗くなるまでにご飯を終わらせたい。
結局戻ってきて、沼のような水を濾過して飲むことに決めた。
ずっとお世話になっているソーヤミニで濾過をする。それから煮沸消毒、ここまでしたら大丈夫だろう。うっすら色が付いているのは見ないことにした。
アメリカで買った塩味の袋ラーメンを、その水で煮る。食べると何だか草の味がするような。…大丈夫だろうか、私。
水を使わないご飯にしたら良かった。最小限の水はあるし、明日は2時間歩けば街に降りられるのに。なんでリスクをおかして変な水を摂ったりしたんだろう。
それ以上に流れている綺麗な水を事前に汲んでおけば良かった。湖の水があることに頼りすぎた。
色んな後悔はしても、草の味がするラーメンを食べたことに変わりはない。
明日か明後日、下痢とかになっちゃうのかな。いやだな。
20km歩いて疲れているはずなのに、その日は不安で眠れなかった。
◇ ◇ ◇
翌日、全くお腹は下さなかったが、生理がきた。不安はPMSのせいだった。
そして、別日に塩ラーメンを食べたら、普通の水でも草の味がした。なんだ、もともとまずいラーメンだったのか。沼の水への心配は杞憂に終わった。
何はともあれ、水は大切だなと思ったお話。
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