サイバーキッズ共和国との出会い
タイトルの通り、サイバーキッズ共和国というサイトをご存じだろうか。
小中高生向けのウェブサービスで、個人HPやブログが書けた。
テンプレートがあり誰でも簡単にHPが作れるので、アホなわたしもで小学生でHPを開設していた。
話の発端は忘れたが、同じクラスで仲良い友人A子がいた。
A子は小学5年生のときにわたしの小学校に転入してきた。当時、昔からの幼馴染らとクラスが離れてしまったわたしは同く漫画やゲームが好きなA子と意気投合し、すぐに仲良くなった。
そんなA子がある日、恥ずかし気にカミングアウトしたのだ。
「実は自分のHPをもっている」と。
HPって、あの?
何となくHPというのは大人とかプロがお金を払って作るものだという考えがあったので、それを自分と同じ小学生のA子が作ったということに驚いた記憶がある。
心のどこかでたぶんお父さんとか親戚の人に作ってもらったんだろうな、と思っていた。
(本当に失礼なんだけど)期待せずに教えて貰ったURLにいくとA子のHPがあった。
綺麗な背景画像があり、ブログと書かれたアイコンをクリックすると別ページに飛ぶじゃないか…!上手く言葉にできないけど、そこには「ちゃんとしたHP」があった。ちゃんとHPになっていた。
さすがに背景画像やアイコンは借り物だそうで、それらはHPを構成する素材と呼ばれ個人で無料配布しているサイトがあり、そこから拝借しているそうだ。
そして個人HPと言えば忘れてはいけないのがキリ番(アクセスカウンター)だ。
「あなたは〇〇の部屋の456人目のお客様です!」など、当時の個人HPやブログには必ずと言っていいほど設定されていたのがこのキリ番で、キリの良い数字を踏めばそのメッセージが「おめでとう!あなたは1000人目のお客様です。掲示板でキリ番報告してね!」とかに変わって掲示板誘導してくるのだ。
わたしはこのキリ番が大好きで、ずるだけど更新ボタンを連打しまくっていた記憶がある。
A子のHPは開設してまだそれほど日が経っていないせいかキリ番も3桁そこそこだったのだけど、それにしてもすごい。
更に詳しく話を聞くと、サイバーキッズ共和国というウェブサービスがあり、そこでは誰でも無料で簡単に自分だけのHPを作ることができるのだと言う。
A子もそのサービスを利用して自分専用のHPを持ったらしい。
利用層は主に小中高生で、オリジナル小説やイラストを載せている人がほとんどだった。あとは日常の出来事を綴ったブログとか、学校生活の悩みを相談し合うチャットルームなんかもあった。
A子のHPでは主に某任天堂ゲームのイラストやオリジナル小説を載せているようで、同い年ながらそのクオリティには感心した。
そうした創作活動を通してできたネット上の友人たちと夜な夜なチャットで他愛のない会話をしているそうだ。ぜひ仲間に入れて欲しくてA子にお願いすると快諾してくれたので、わたしもA子のHPのチャットルームに参加してみた。
いつも集まるのは夜20時とか21時らしい。たまたまその日は両親が夜勤でいなかったので参加することができた。小学生の娘がインターネットチャットで知らない人と話しているなんて、今でこそSNS大時代で知らない人と繋がることが「普通」になったけれど、当時はそれが何だかいけないことのような気がして不安もあった。
A子のチャットルームには2,3人の固定メンバーと、たまにしか参加しないメンバーを含め大体5人くらいが集まるらしい。
その日も3,4人はいたと思う。
緊張で手が震えながら「初めまして、A子(インターネット内のハンドルネームもA子だった)と同じクラスのおはぎです」と挨拶した。
すでにチャットルームで会話していたメンバーは快くわたしを歓迎してくれた。年齢とか住んでる場所とか趣味とか、学校であった事件とかそんなことを2時間くらい話していた。
メンバーの大半は同じ小学生で、中には中学生も混じっていてドキドキした覚えがある。
しかもその当時わたしはまだローマ字を習いたて(当時の小学生のカリキュラムに英語がなかったので塾でかじる程度だった)だったので、文字入力がとんでもなく遅い。人差し指でキーボードを一個一個タイプするから、一度の返信を打つ間に次の話題に進んでいるなんてこともザラ。
会話についていけない自分に少しだけ落胆もした。
そんなこんなで、夜はA子のチャットルームに参加することが増えた。
最初は両親の目を気にしていたが、実際のところ両親はテレビに夢中でわたしがパソコンで何しているかなんてよく見ていないのだ。それに気づいてからは心置きなくチャットに集中できた。
ある日チャットルームで会話していたら「おはぎさんはHPを作らないんですか?」と聞かれた。
A子の友達の半数は同じくサイバーキッズ共和国で個人HPを持っており、互いのHPを行き来して交流していた。
小学生あるあるなんだけど、当時の夢が小説家だったわたしは暇な時間によく原稿用紙にオリジナルストーリーを書いていて、それを友達に読ませて感想を貰ったりしていた。そのことをチャットで話していたら、HPを開設してオリジナル小説を掲載してみてはどうか、と提案された。
実は前々から興味はあった。
いつまでもA子と友人を共有せずに、自分自身で人間関係を広げたい!
それに個人HPを持ったりして急にステップアップしたA子に置いて行かれたような嫉妬もあったので、追いつきたいとか追い越したいみたいな感情も。
それにHPに載せた小説が大人気になって、サイバーキッズ共和国のアクセスランキング1位になれるかも…なんて淡い期待もあった。笑
よし、わたしもHPを作ろう!
続く。