機動戦士ガンダムSEED FREEDOMを見て【ネタバレ注意】
先日、というかこの記事を書き始めるほんの数時間前に映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』を見てきた。『機動戦士ガンダムSEED』の放送年は2002年。筆者は中学3年生で1年通して見るガンダムは実はこの作品が初めてだった。ただガンダムに詳しくない当時の筆者でもガンダムは『2つの勢力が戦争して巻き込まれた主人公がどちらかの勢力に属し、戦乱に翻弄されながら成長する』という漠然としたイメージは持っていた。しかしこの『SEED』、序盤こそは主人公キラ・ヤマトはその漠然としたガンダム像のとおりに運命に翻弄されていたが、親友アスラン・ザラとの死闘を経て目覚めたキラが憎しみの連鎖を産む戦争を断つためにとったことはなんと第3勢力になることだった。当時はそこに驚かされた。
そんな王道かつ革新的だった『SEED』そして続編の「SEED DESTINY』を経て公開された『SEED FREEDOM』がどのようなものだったかを述べていきたい。ネタバレを存分に含むので、まだ見てない方はブラウザバックをお勧めしたい。
この作品のキーワードの一つとして『愛』があげられる。本作の人物は『愛』に翻弄されている。
まずは主人公のキラである。『SEED DESTINY』でギルバート・デュランダル議長が提唱した遺伝子操作により人生をすべて決定づける『デスティニープラン』を否定し、議長を撃ったものの戦乱が治まることなくキラは心を塞ぎがちになる。まあデスティニープラン自体は普通に魅力的なので、本当に否定して大丈夫?とは思うが。そんな中で独立国『ファウンデーション』の宰相オルフェ・ラム・タオが現れてラクスに近づく様子を見て目を逸らしてその場を去ったり、その後ファウンデーションにラクスが連れ去られ、機体や母艦を破壊され敗走した際も「ラクスは僕の事なんて…」みたいなこと言っていじけたりと非常に「自分は愛される資格はあるのか」なんてことに悩む人間臭いキラが本編を通して見られた。個人的には今回の敵の能力もあり『スーパーコーディネーター』の重荷が下りたのはよかったが。
それから後述するアスランの『粛清』で目が覚めたキラはラクス奪還を決意し、オルフェとの最終決戦では「MSの性能の違いが決定的な差ではない」と赤い人のセリフのオマージュもしつつ相手との違いを「ラクスの愛」と堂々と言うキラを可笑しくも頼もしく、尊く思えてしまった。
そして今作、というかシリーズ通してのヒロインであるラクス・クライン。本作ではファウンデーションの精神攻撃の類を受けながらも一貫してキラを思い、デスティニープラン以降混乱を抑えられず思い悩むキラを戦いから解放してあげたいという気持ちでいた。揚げ物が多かったのもきっと愛情だろう。
ファウンデーションに捕まってからも自分を求め続けるオルフェに対して「必要だから愛するのではなく、愛するから必要」と言い切るラクスはぶれない。ただ、本当は不安で怖くて…というキラとは違う人間臭さを見せてくれた。
最終決戦ではボロボロになったストライクフリーダムをラクスがプラウドディフェンダーなるものに乗ってキラを助け、ぶっつけ本番でドッキング。キラとラクスが文字通り『共に戦う』のだ。すぐ隣で報連相から武器使用の承認出すのは笑えたが、複座式コクピットが前後ではなく隣通しなのは『どちらかが導くのではなく、横並びで共に歩んでいく』意思を具現化しているようにも見えた。最後裸になったのはたぶん『DESTINY』あたりで何回も見た映像の伏線回収のようなものだと思っているが、『着飾らないありのままの愛』と『しがらみをすべて脱ぎ捨てた自由』を体現したのだろう。きっと。
また今回の新規キャラクター達も愛に迷う人物が多かった。オルフェ・ラム・タオは同じコーディネーターの上位種である『アコード』であるラクスをひたすらに求め続け、自分こそがラクスとともに歩むにふさわしいと言い、キラを『戦うことしかできない』と否定し続けた。ただ前述のとおり「必要だから愛するのではなく、愛するから必要」というラクスから拒絶され、なぜ自分が愛されないのかと言いながら若干やけくそ気味に戦っていた。彼の敗因は自分にとって必要な者だけを愛し、その者にだけ愛を伝えることに固執しすぎたことと身近に自分を思ってくれる人に気づけなかったことだろう。少なくともイングリット・トラドールはオルフェを人として愛してくれていたはずだ。
そしてシンやルナマリアのザフト士官学校時代の動機、アグネス・ギーベンラートもその愛の迷い子のひとりと言えよう。「私は妥協しない」と言い、キラにアプローチするもまったく受け入れられずファウンデーションの『ブラックスコードナイト』の隊長、シュラ・サーペンタインに必要とされたと感じたアグネスは終盤ファウンデーション側に寝返る。ルナマリアとの最終決戦では彼女がシンと付き合ってることを『妥協』と言い放つも自身は相手のスペックばかり見て、自身もまた『月光のワルキューレ』というスペックだけで評価され自身が愛されていないことを嘆きながら最後はルナマリアに撃墜される。アグネスは生存したが、真実の愛を見つけられるだろうか。
ちなみに人類の命運がかかった戦いで痴話喧嘩なのは非常にシュールに見えるが、戦争の根幹は個人の感情から始まるもの。アムロとシャアもそうだったしそう考えればこのやり取りは実に『ガンダム的』であると言える。
もう一つのキーワードは『心の強さ』だろうか。MSの性能差が違いにならないなら、決定的な違いと言えばこれだろう。その強さを体現したのがアスラン・ザラとシン・アスカである。
まずアスランだ。キラとアスランの別れと戦場での再会から始まった『SEED』という作品のもう一人の主人公と言っても過言ではない。そんな彼でしか今回のキラの導き手はできないだろう。とにかく今作の彼は強い。初代オマージュでズゴックで現れたかと思いきや、キラを『修正』する際は向こうのパンチを一切受けず10発ぐらい全部ヒットさせ(ついでに止めに入ったシンにも2発ヒット)、ストライクフリーダムで出撃した後ズゴックに乗り換えて最終決戦に臨んだかと思えばそこからインフィニットジャスティスが出てきて敵を圧倒するといったところだ。
彼の心の強さは最終決戦で垣間見えた。本作の敵パイロットの一人、シュラ・サーペンタインがアスランの心を読もうとする。それに対してアスランはカガリの破廉恥な妄想を送り付け敵を混乱させるという手段に出たのだ。動揺したシュラはジャスティスをカガリが遠隔操作していたことに気づかず「大したことない」と一蹴され頭から出てきたビームサーベルで撃墜。破廉恥の勝利である(アスラン自体は非常にまじめな男であるが)。戦闘中に破廉恥な妄想をするぐらい大人の余裕をかますアスランはここでしか見れないだろう。
もう一人のシンは続編『DESTINY』の主人公であったものの最後はデュランダル議長にまっすぐな感情を利用され、キラに主役の座を奪われる形になった不遇のイメージが強いが、今作では和解したキラの部下としてイモータルジャスティスに乗って活躍する。キラに認めてもらえないことに葛藤し、ブラックナイトスコードに撃墜されるも、キラにもちゃんと頼られ終盤デスティニーに乗ると水を得た魚のように無双するシーンは圧巻であった。
その無双シーンでやはりブラックナイトはシンの心を読もうとするも、まったくできない。それは彼は無心で戦っているからだ。オーブで家族を喪い、戦場で心を通わせた少女・ステラとは敵味方となり戦場で死に別れ、最終決戦ではレイも喪い…大事なものを喪いながらも戦い続け、悲しみを乗り越えてきた男のメンタルはそんなにやわじゃない。さらに敵が精神攻撃で闇に落とそうとしたときにはシンを守るために出てきた亡霊のステラが相手に「闇が深すぎる!」とかえって絶望させ、ブラックナイトを全員返り討ちにするのは痛快だった。
今回キラも引っ掛かった精神攻撃だが、その対策は『何も考えない』か『さばけないような強力な情報(トラウマ、破廉恥な妄想)』をぶつけるということか。
最後のキーワードは『祭り』である。本編でお祭りがあったわけではなくSEEDファンが望んでいた、あるいはそれ以上のものが見せられまさに本作は『ガンダムSEEDのお祭り』と言えよう。書きたいことはいっぱいあるが、これ以上長文になってしまうのもなんだからあの頃に戻れる感動のお祭りポイントを最後に箇条書きにまとめようと思う。
笑いと感動のお祭りポイント~私はこれで15歳に戻れました~
・カメオ出演するカズイ、サイ、バルドフェルト。ミリアリアは一言だけだがセリフあり。
・シンがヒルダの胸を触るラッキースケベ。
・『ラクスはそうは思わん』とか言いだす元婚約者のアスラン
・ほぼ当時のままのストライクフリーダム、デスティニー、インパルス
・『ニコルのような』ミラージュコロイド作戦。ニコルは劇中で2回も殺された。
・『戦術バジルール』
・『トダカ一佐仕込み』の百発百外し
・イザーク、ディアッカがそれぞれデュエル、バスターで出撃
・デュエル、バスターがミーティア換装
・インパルスは全パーツ換装
・ソードインパルスはルナマリアカラーの赤
・アカツキでレクイエムのビームをはじき三度不可能を可能にする男、ムウ・ラ・フラガ
・ストライクフリーダムを完璧に乗りこなすアスラン(ドラグーンも使用)
・やっぱりポンコツなアーサー
・ステラ「シンを守る!」→怪物の幻想→敵「闇が深い!」→デスティニー無双で撃墜
・ストライクフリーダムようBGM『ミーティア』
・戦闘中にカガリで破廉恥な妄想をするアスラン
・頭からビームサーベルを出すインフィニットジャスティス
・デスティニーからのデュ―トリオンビームでインパルスが回復。そんな機能あった?
・シンとルナマリアでレクイエムを破壊。レクイエムはオーブに向けられていたのでシンは本当の意味でオーブを守ったことになる。
・ドラグーンは多すぎるマイティ―ストライクフリーダム
・ガーベラストレート?じゃないけど刀でとどめを刺すマイティ―ストライクフリーダム
・戦闘中にカガリで破廉恥な妄想をするアスラン
これを見てより『SEED FREEDOM』に興味を持って2回目、3回目と見に行く方が1人でも多く現れることを願う。
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