ハジキ(拳銃)者

 〜もし貴方の前に、嫌な奴を叩き伏せる暴力が手に入ったとしたらどうする?〜

 下らない考えだ。クラスのやつの『お願い』で焼きそばパンを買いながら過ぎった考えを振り払う。当然僕の自腹でだ。

 勉強も運動もクラス内のコミュニケーションも冴えない僕がクラスの『おもちゃ』になるのは当然の帰結といえた。

 そうだ。僕はいじめに遭っている。

◆◆◆

「おいお前、俺カレーパン買ってこいつったよなぁ!」

「え!?で、でも確かに焼きそばパンだって・・・」

「あ?口答えすんのか?」

「おいおい、お使いなんか子供でもできるんだぞ?」

 担任が笑いながら言う。いじめっ子は成績優秀、体育の成績も良く教師からの受けがいい。彼らが言うにはこの学校にいじめなど存在しないらしい。


 放課後、僕は日課のいじめっ子達の『運動』に付き合わされた。昼休みの件のこともあってか、今日は一段と激しかった。カバンも荒らされノートもグチャグチャだ。今日も親に怒られるだろう。もちろん親は僕が『いじめなどに遭う恥ずかしい子』である事を嫌う。

 助けてくれる人なんか誰もいない。もはや諦めてすらいる。

 僕は、はじき者だからだ。

◆◆◆

 憂鬱な気持ちで家に帰り、これまた日課になりつつある説教をくらい、部屋に篭る。

「なんだこれ......?」

 机を見ると小包みが置いてあった。送り主の名はない。懸賞に応募した覚えもない。親がプレゼントを買ってくれる事なんてありえない。

 訝しみつつ包を開ける。

「え……?」

 目を疑った。

そこにあったのは“拳銃”だったからだ。

「いや、オモチャだよな……?」

 手に持ってみる。緊張のせいか手が震える。弾丸が装填されている。

 ただの中学生である僕は拳銃なんて見たことも触ったこともない。だけどわかる。

 「これ……本物だ……」

 もし貴方の前に嫌な奴を『殺して』しまえる暴力が手に入ってしまったら……?

【続く】

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