17.『ハロウィン・サバイバル』
登場人物
・篠崎 真二 主人公。あだ名は”しんしん”
・鬼頭 勇治 大人しい生徒。パソコン部の部長。
・佐藤 卓也 1か月前に転校した。
「ねえ、“しんしん”・・・ちょっといい?」
鬼頭勇治が篠崎真二のところへやってきた。鬼頭はパソコン部の部長で、クラスメイトの中では大人しい生徒だが、篠崎とは仲が良かった。
鬼頭は篠崎の近くに顔を寄せた。元々小声でボソボソと話す鬼頭だが、今回はさらに声を小さくしているようで、軽音部の仲間で篠崎の近くに座っている山口里香や島田美穂に会話を直接聞かれたくなさそうだった。
「ねえ、”しんしん”。ちょっと見てほしいものがあるんだ」
鬼頭はそう言って右のポケットからスマホを取り出した。
「僕のスマホ・・・、今は圏外になっているけど。ほら、さっき佐藤君からメッセージが入っていたんだ」
鬼頭はスマホの画面を篠崎に直接見せた。
「佐藤?」
篠崎は少し意外な顔をした。佐藤卓也は元3年A組の生徒で、あまりクラスに馴染んでいなかったが、1か月ほど前に他校へと転校になった。そのためもちろん今日の3年A組のハロウィンパーティーには参加していない。
「”しんしん”ここを見てよ・・・。これは今から30分くらい前に受信したメッセージなのだけど」
鬼頭のスマホの画面を見た篠崎に驚きと緊張が走った。
鬼頭のスマホの画面には、短いメッセージが表示されていた。
【ハロウィンパーティーの日、お前たちはただ一人を除いて皆殺しになるだろう。ハロウィン・サバイバルの始まりだ】
メッセージの送信者は確かに佐藤卓也となっていた。
鬼頭の説明によれば鬼頭と同じパソコン部の安藤やほかの何人かにも同じメッセージが届いていたそうだ。メッセージはどうやら一斉送信されたらしい。
「今はね、僕のスマホの電波は圏外になって、このことを佐藤君に確認のしようもないのだけど・・・どう思う?」
鬼頭は深刻な顔で続けた。
「ちょうどさっき僕はみんなの前で話したよね。アッテンボローの都市伝説シリーズ第13巻「ハロウィンのカボチャ男」という本のことを紹介した。そして、その本に書かれた”60年前にアメリカのとある高校で開催されたハロウィンパーティーで起こった惨劇事件”。そして、ハロウィンのカボチャの仮面をかぶった怪人が高校の生徒全員の首をはねたという殺害方法」
鬼頭は篠崎の目を見た。
「い、いま起こっているのは・・・、ま、まさにそれと同じ状況では・・・」
篠崎は無言のまま鬼頭を見返した。たしかに状況は本の内容と酷似しているのかもしれない。
「それに・・・なぜこのことを、この場にいないはずの佐藤君が言い当てているのだろうか?」
鬼頭は混乱と動揺でなかなか思考が定まらないようだった。
「ハロウィン・サバイバル・・・」
篠崎は何も答えず、その言葉だけを声に出した。
”ハロウィン・サバイバル”。この言葉が3年A組のクラスメイト達に広まるには、もう少し時間が必要だった。
(つづく)