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市場は何を評価したのか ストレートな資金調達の意味 9211 エフ・コード
足元ではグロース市場の企業のバリュエーションが低下しており、現在の水準でエクイティファイナンスをするグロース企業はほぼ皆無な状況。
市場で資金調達で話題になると言えば、MSワラントだったり、あまり好感できる調達案件が見当たりませんでした。(ありました?)
そんな中、1月6日に9211 エフ・コードが新株発行と売り出しを発表。
併せて上方修正も発表。上方修正は既存事業の好調に加え、M&Aによる上乗せを反映させたもの。
会社のリリースはこちら
市場の反応が興味深かったので内容を整理してみます。
・市場の反応:希薄化懸念に反して株価はプラスで引ける
・市場が評価したであろうポイント
上方修正を同時に発表したこと
黒字事業の買収で事業自身で回収可能であること
シナジーが出やすいこと
資本コストを意識していること
事業拡大が見込まれること
補足
・(改めて)エフ・コードはどんな会社か
・資金調達の概要
内容:18.1%超の希薄化
目的と使途:M&Aに係る借入金の返済
〇市場の反応:希薄化懸念に反してプラス
市場の反応を考える時、資金調達前までの株価が市場で適正に評価された結果だとすれば、エクイティファイナンスをすると、一株当たりの利益が希薄化する分だけ株価が下落する事が予想される。
いろいろな要素があり、そうならない例も多数あるが、現状では資金調達による希薄化がネガティブに捉えられるのではと想像していた。
今回の調達は最大18.1%希薄化する調達であったため、どの程度下落するのかを注目していた。しかし、株価の反応は次のようなものだった。
1月6日(金):
終値 2,466円
1月10日(火):
始値 2,316円
高値 2,650円
安値 2,251円
終値 2,591円(前日比+5.1%)
安値は前日比-9%近くまで下落したが、終値では同+5.1%とプラスで引けた。
発表後3連休があり、開示内容が市場で十分理解されていたためと思われる。
〇市場が評価したであろうポイント
・上方修正を同時に発表したこと
・黒字事業のため事業単独で回収可能であること
・シナジーが出やすいM&Aで成長していること
・資本コストを意識していること
・事業拡大が見込まれること
・上方修正を同時に発表したこと
既存事業が好調に推移したことに加え、2022年12月期下期に事業譲受を3件実行し、業績貢献したことを反映した修正。
希薄化というネガティブ材料と上方修正で業績好調であるポジティブ材料を合わせて発表することでネガティブ材料を一部打ち消すこととなった
・黒字事業のため事業単独で回収可能であること
”黒字企業/事業を合理的なEBITDA倍率でM&Aをする”という方針をとっている
5つの案件とも黒字でかつ合理的なEBITDA倍率でM&Aしているため、事業単独でもM&Aの資金を回収可能である。また、事業のみ買収(1件は事業を子会社化したうえで買収)することで買収に伴う人員も最小限に抑え、M&Aの金額を縮小しリスクを軽減している。
・シナジーが出やすいこと
5件のM&Aは同社の既存事業とシナジーが出やすい事業である。
シナジーの例としては、
増収効果:取得した事業が自社の既存事業の顧客部署と重なることからクロスセルにより顧客課題を解決することが可能
増益効果:共通するインフラコスト、マーケティングコスト削減など
など
![](https://assets.st-note.com/img/1673786857390-BxKlHPbo01.png?width=1200)
・資本コストを意識していること
5件のM&Aは金融機関からの借入による資金調達によって実施した。
資本コストには借り入れに係るコストと株式により調達にかかるコストがあるが、
借入コスト < 株式コスト
であり、借入にかかるコストのほうが低い。借入の割合を一定程度まで下げることで資本コストを下げてきた。
![](https://assets.st-note.com/img/1673786882236-ncAOxQbEjH.png?width=1200)
・事業拡大が見込まれること
前期2022年12月期下期の3件のM&A(下図)に加え、今期2023年12月期の1件のM&A(「KaiU事業」)により事業拡大が見込まれること。
黒字事業を買収したため、売上だけでなく、利益も上乗せになる
![](https://assets.st-note.com/img/1673818537021-g5NHAc36ld.png)
*「KaiU」の取得:サブスクリプションファクトリー株式会社が運営する「KaiU」事業を新設分割して設立する株式会社KaiUの残株式を取得、2023年1月31日に子会社化する予定
新設分割会社の株式取得(子会社化)による コンバージョン改善型Web接客ツール 「KaiU」の事業取得について
ということで、グロース企業がストレートに成長資金として資金調達した例でした。
*資金調達と市場の反応に絞って書いたので、基本情報を以下にまとめておきます。
<(改めて)エフ・コードはどんな会社か>
「CODE Marketing Cloud」 が主力サービス
「CODE Marketing Cloud」とは
サイト閲覧ユーザーに本当の店舗で店員が接客するような快適なお買い物体験を提供する。
ユーザーのサイト内行動を分析して、訪問回数、訪問ページ、利用端末、サイト内遷移、滞在時間、訪問タイミングなどの行動データをもとにWebサイト内のユーザー一人ひとりに最適なWeb接客を実現する。
![](https://assets.st-note.com/img/1673786932251-Rf7vveVUeP.png?width=1200)
・導入事例サイト
・施策事例
”予約ページ誘導”
ホテルやツアーのサイトで、一定時間滞在しているユーザに対して、お得なクーポン情報や施設情報詳細のポップアップを表示させ、「適切なタイミング」で予約ページへと促すことができます。
なぜこの施策?
一定時間の滞在が見られた場合、予約意欲がかなり高いユーザであると見受けられます。そこでクーポン情報等を提供することにより、さらに予約への意欲を高め、「成果率の改善」に繋がります。
こんなサイトにおススメ!
ホテル宿泊やツアー等の、予約が必要となるサービスを提供している企業様におススメです。
・顧客企業
BtoC顧客を中心に累計1000社以上の顧客が導入しており、直近数年ではBtoB領域の顧客が増加傾向とのこと。大手企業の導入事例も多数ある。
![](https://assets.st-note.com/img/1673787030634-n5D9s8DoXj.png?width=1200)
<資金調達の概要>
詳細はリリースをご確認ください
・調達金額と希薄化率
想定調達金額:18.6億円
希薄化率:18.1%
*いずれもOAを含む(OAオーバーアロットメントについては後述)
需要予測期間:2023年1月13日(金)~1月19日(木)
条件決定日:2023年1月17日(火)~1月19日(木)
つまり、この期間の株価によって調達金額が決まるということ
・資金調達の目的と使途
①成長資金の確保
資金使途と金額(単位:百万円)
最も大きいのは
M&Aに係る借入金返済 1,237百万円
M&A対価支出に伴う手元現金の手当 530百万円
事業拡大に伴う人件費および人材採用費 100百万円
②株式流動性の向上
投資家層の拡大
外部株主増加に伴うガバナンス強化
株価ボラティリティの平準化
*用語について
OAオーバーアロットメントとは
https://www.nomura.co.jp/terms/japan/o/overallotment.html
正式には以下のようなものだが、簡単に言えば、
”予想以上に買いたい人がいれば、追加で売ります”
ということ
需要動向を踏まえた販売、およびその後の流通市場における需給の悪化を防止することを目的として導入された制度で、当初の募集・売出予定株数を超える需要があった場合、主幹事証券会社が発行会社の大株主等から一時的に株式を借り、当初の売出予定株数を超過して、募集・売出しと同じ条件で追加的に投資家に販売すること。
この追加的な販売株数(募集・売出し株数の15%を上限)を調達するべく、借りた株式を返還するために、主幹事証券会社は、発行会社または株式を借りた大株主等から、引受価額と同一の条件で追加的に株式を取得する権利を付与されることとなる。これをグリーンシューオプションという。