【怖い話】猫おばさん

暑いですね。
こんな暑い日は怖い話が良いかと思います。
人生で私は霊っぽい体験を何回かしてきましたが、それ以上に人怖体験を数多くしています(そりゃそうなんですが)

今回お話しするのは、幼少~青年期の思い出話を妻にしていた時、ふと思い出した話です。妻に話したら怖い話が苦手な妻が大絶賛した(超恐怖した)話です。人によっては怖くないかと思いますが、どうかご了承ください。


これは私が中学校3年生の時の話です。

当時の私は高校受験が終わって一段落したことで、残りの中学校生活をのんびりと過ごしていました。
田舎町に住んでいましたので、娯楽と呼べるものはほとんど無く、やる事といえば友人と駄弁ったり、川に泳ぎに行ったりと、なんだかんだ日々を満喫していました。

そんなある日、私は町役場の入り口付近のベンチに座りながら、友人と一緒に駄弁っていました。なぜ町役場か?というと答えは簡単です。


自販機があるから


田舎ですから、マックやカフェがあるはずも無く…
それどころか自販機も中々見当たらない地域に住んでいた私達にとって、「椅子に座れる」&「飲み物がある」の2拍子が整った町役場は溜まり場として最適でした。

いつも通り、くだらない話に花を咲かせていると、駐車場の向こう側から見たこともないおばさんが近づいてきました。遠目から見て、おばさんは大事そうに何かを抱きかかえながら、役場の入り口に向かって歩いてきます。

何となく、挙動が気になったので、私は友人と話をしながら横目でおばさんを注意深く観察していました。すると、あることに気が付きました。

おばさんは大事そうに抱えた何かを優しい手つきで撫でていました。

遠目ではよく見えませんが、どうやらワンちゃんや猫ちゃんを抱えながら歩いているように見えます。
私はふと、ある事を思い出しました。


数日前。

その日も役場の前で駄弁っていたのですが、役場の入り口にはとある張り紙がしてありました。内容は「ペットに関する相談は○○棟の○○課にお願いします。」といったものでした。

この役場は田舎の施設にしては立派なものでして、正面に1棟、両脇に2棟という形で三角形になるように設立されていました。それぞれの建物の1階はガラス張りになっていて、職員の仕事の様子が見えるようになっています。立派な施設ですが、普段利用しない人は大抵正面の棟に入った後、左右どちらかの棟に向かわされています。

このおばさんもペットの相談をするために来たのだろう。
そして、例のごとく左右の棟に案内されるのだろう。
立派なのは結構ですが、利用者としては困ったものだ。

なんてことを考えながら、友人との会話に集中し直しました。

おばさんはゆっくりと役場の窓口まで歩き、応対した役員さんと話を始めました。初老の男性職員さんが困ったような、面倒臭そうな顔で対応しています。変なクレームでも付けられているのでしょうか。


20分ほど経過しました。

会話にもオチが付いたので、私達は解散することになりました。
帰る準備をしていると、さっきの猫おばさんが役場から出てきました。

「結構話し込んでたなぁ」などと呑気に考えていた私でしたが、おばさんが「抱きかかえているもの」を見た瞬間、凍り付きました。

おばさんは相変わらず、それを大事そうに撫でていました。
しかし、私にはそれが何かよく見えませんでした。

無理もありません。

そこには何も無かったんです…


私はゾッとして、小声で友人にそのことを話しました。
横目で見た友人も真っ青になりながら、私の方を見ました。
どうやら私の見間違いでは無かったようです。

おばさんは役場から出て数歩進んだ後、不意に立ち止ました。
私達は驚いて、おばさんから目線をそらして、役場の建物を見ました。

「しまった」

建物はガラス張りなので、反射しておばさんの姿が見える。
おばさんは鬼気迫る顔で役場を睨みつけていました。
私は可能な限り、意識を外に向けていました。

すると、微かにおばさんの声が聞こえてきました。



「許さないからね。あんたたちは私の猫を××したんだから…」



おわり。

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