若手社員で卓上CNC作ってみた
きっかけ
ある日、何気なくYouTubeを眺めていると、海外を中心に「卓上CNCを自作してみた」というプロジェクトが流行っているのを発見。中には、3Dプリンターを駆使して格安でCNCを作る事例もあり、興味を持ちました。
弊社でも3Dプリンターを所有しており、治具の一部や小さな部品を作成する程度には使用していましたが、正直なところ、「まだ活用しきれていない感」がありました。そこで、「せっかくならもっと有効活用できるように」ということで、3Dプリンターをフル活用しつつ、卓上CNCを作ってみるプロジェクトをスタートすることにしました。
プロジェクトの目的
1. 若手社員のスキルアップ
このプロジェクトの主な目的の一つは、若手社員のスキルアップでした。若手社員が一つの専用機を0から経験出来る機会はあまり多くなく、失敗しても良い環境で様々な試行錯誤を通じて成長が見込めると考えました。また、普段自分が担当しない工程についても実際に設計から組立、ソフトウェア開発までを情報共有することで、各自のスキル幅を広げることができました。
2. 新しい技術の習得
普段の業務ではなかなか触れる機会のない技術に取り組む機会として、このプロジェクトは大きな意味がありました。具体的には以下の技術を習得しました。
3Dプリンターで機械設計を行うノウハウの蓄積
部品の設計から印刷、実際に組み立てた際の精度検証まで、3Dプリンターを使った一連のノウハウを得ようとしました。3Dプリンターによる機械設計にはサポート材の考慮や強度、寸法精度の出し方など、独特のノウハウが必要です。Gコードの生成と最適化
CNCは「Gコード」と呼ばれる機械制御用のコードを元に動作します。普段はマシニングセンタ等でしか触れないGコードですが、今回はPythonで自動的にGコードを生成し、効率的な加工が可能なように最適化するプログラムを作成しながら、Gコードの中身を学びました。Arduinoを用いたマイコン制御とステッピングモーターの制御
卓上CNCでは、マイコンを使ってステッピングモーターを正確に動かす必要があります。今回はArduinoというマイコンを使い、Gコードに従ってモーターを動かすプログラムを開発し、CNCを制御しました。Pythonを用いた制御ソフトウェアの作成
CNCを制御するためのソフトウェア開発も、重要な部分です。Pythonを使って、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を持つアプリケーションを開発し、Gコードの生成・送信・制御が簡単に行えるようにしました。
3. 低価格での自動化提案の実現
これまで、「数十万〜100万円の予算で自動化したい」というご相談に対して、提案が難しいことがありました。しかし、今回の卓上CNCプロジェクトを通じて、低価格での自動化提案の可能性を模索しました。これにより、より多くのご相談にお答え出来るようになることが目標です。
■プロジェクトの進め方
プロジェクトは5月にスタートし、9月の展示会で展示することを目標に進行しました。業務の合間を縫って進める形でしたが、進捗報告やタスクの確認は、毎月開催していた「若手会」で行いました。若手会では、プロジェクトの進捗状況を確認し、次のステップを共有することで、メンバー全員が一体となって作業を進めました。
■チームメンバー
設計:Nさん (機械設計6年目)
電気:Tさん (電気配線2年目)
ソフト:O (プロジェクトを提案した人。前職でソフトウェア開発の経験あり。社歴3年目)
組立:Yさん (社歴2年目。前職でも組立を経験)
お手伝い:N君 (社歴1年目、20代前半)
■スケジュール
プロジェクトは5月にスタートし、9月の展示会で披露する形で無事に完了しました。全体で約5カ月弱の期間で完成しましたが、日々の業務と並行して進める中でも、各メンバーの貢献が大きく、予想よりもスムーズに進行できました。
■今後の記事投稿
今回の卓上CNCプロジェクトの詳細について、今後さらに数回に分けて記事を投稿する予定です。次回は、3Dプリンターを用いた機械設計のプロセスや、設計時に気をつけたポイントについて詳しく解説していきます。ご興味がある方は、ぜひ次回もチェックしてみてください!