『ACID/アシッド』家族愛を描いたフランスの秀作
■予算面を踏まえたディザスタームービー
メインプロットは家族の物語を軸に、
サブプロットは酸性雨という社会的な問題を背景としたフランス映画だ。
冒頭の暴動シーンは、物語全体に漂う不穏な空気感を効果的に演出しており、ドラマへの引き込みを巧みに行っている。
主人公はキレやすい父親、とにかく問題を起こす、
が、
娘の為にはたとえ火の中雨の中・・・
■酸性雨という題材の扱い
酸性雨をメインテーマにしたディザスター映画として扱えるかどうかは、
議論の余地が残る。
確かに、酸性雨は物語の背景として描かれているが、
あくまで家族の物語を際立たせるための要素として機能していると言える。
世界的に見ても、酸性雨等、自然環境をメインプロットに敷ける、
最近だと竜巻を本格的に題材にした「ツイスターズ」のような大作はハリウッド以外では困難だろう。
■フランス映画ならではの規模感と予算
本作は、フランス映画らしい小規模な製作規模で、
無駄を削ぎ落とした質の高い作品に仕上がっている。
米国のインディペンデント映画と比較しても遜色ないクオリティでありながら、よりパーソナルな視点から物語が描かれていて、
予算も日本円で3億円前後と推測する。
ちなみに邦画では配給・宣伝費を除いて純粋に制作費で3億円を予算で計上可能な作品はどんどん減少している。
フランスのみならず、ニューヨークやLAのインディペンデント映画産業では、作品規模に応じた最低賃金が規定されており、
キャストやスタッフの最低限の待遇が保障されている。
そのため、本作のような小規模の作品でも、
一定水準以上のキャスト、スタッフの技術でクオリティが確保されていると言える。
■ホラーやB級映画との比較
高クオリティで低予算なら、
ホラーやB級映画のようなヒット作を狙いたい所だろうが、
その種の作品はスタッフの高い技術力も必要不可欠だが、
キャストの技術、存在感も不可欠だ。
雨つながりの人気作?
「魔鬼雨」でいうと、
アーネスト・ボーグナインのような、
このおじさんなら、ワンチャン、酸性雨を気合いで降らせそうとか、
作品の世界観を背負える俳優の存在感、演技力や説得力、
特殊効果の技術力など、
様々な要素が組み合わさって初めて、
観客を惹きつける作品が誕生するのは言うまでもない。