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『自由研究には向かない殺人』アルキメデスは手を汚さない

本作は、従来の推理ドラマの枠組みを大胆に逸脱し、
殺人事件の捜査を高校生の自由研究というユニークな視点から描いた作品である。

従来のドラマが、
腕利き刑事やカンの鋭い探偵といったプロフェッショナルな視点から、
動かぬ証拠やファクトを積み上げ、事件を解き明かしていくのに対し、

本作は、動機や犯人の人物像に深く感情移入し、
あの人はいい人、
というような、
極めて主観的な子どもの感想のような視点から事件に迫る。

このドラマの最大の魅力は夏休みの自由研究ベースの、
主人公ピップの「子どもらしさ」にある。

大人未満、子ども以上の絶妙な年齢にあるピップは、
未熟ながらもまっすぐな眼差しで事件に向き合う。

その視点からは、
大人が見落としてしまうような細やかな感情や、
事件の背景にある複雑な人間関係が浮かび上がる。

ピップの捜査方法は、従来の推理ドラマとは一線を画す。

インスタや様々なアプリを駆使し、
時にはコックリさんにも尋ねながら、

まるでパズルを解くように事件の真相に迫っていく。

その大胆かつ独創的な手法は、

SNS世代特有の繊細さ、
論理、思考ではあるが、

劇中のセリフでもでてくる古典的なシャーロックとワトソン、

あるいは日本人であれば「アルキメデスは手を汚さない」の高校生の新鮮さを彷彿とさせる。

更には、

ピップの捜査は単なる天才的な推理ゲームではない。

それは、大人たちの作り上げた世界に対する思春期の少女の反抗でもあり、
真実を求める純粋な探究心でもある。

ピップは、友人、大人、そして自然との対峙を通して、
自己の成長を遂げていく。

このドラマのもう一つの特徴は、原作からくるオープンエンド的な構成である。

シーズン1で描かれた事件は、決して完全な解決には至らず、

99%は解決するが、新たな謎が浮かび上がってくる。

「自由研究には向かない殺人」は、
単なるミステリードラマにとどまらない。

それは、現代社会における人間関係、

とりわけSNSに左右される真実、
捏造される事実、

そしてそれらを乗り越えていく成長を描いた青春群像劇でもある。

このドラマは、視聴者に、固定観念にとらわれず、

多角的な視点から物事を考えることの大切さを教えてくれる自由研究の課題ともなるだろう。

知らんけど

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