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『年末の戸締まり』の話

神保町裏路地日記(57)
2024/12/30㈪

 年内の最終営業日です。毎年この日は有り難いことに皆さんご挨拶に来てくださるのでお店もてんやわんやです。常連さんに甘えさせてもらいつつ何とか乗り切るというのが通例ですが、今日はどうなることやら。

 飲食業に携わるようになってから、一年通して一番好きなのが12月の最終週なんです。「一年間お世話になりました。」「また来年もどうぞ宜しくお願いします。」そんなご挨拶が出来るから。これを言えることがとても幸せで、毎年毎年最後まで気が抜けないのだけど、心ではとても楽しみにしている。

 皆も年末ってそういう感じなんでしょうか。僕にとって年末の仕事は、たくさん部屋がある中を一つ一つ巡って綺麗にして、戸締まりをしていく感覚です。「それでは、失礼します。」と言って丁寧に戸を閉める。それが全部の部屋で出来たら、僕の一年が終わる。このくらい丁寧に生きられたら良いなぁと思います。

 思うのですが、やはり頭で考えるのと体が動くのでは勝手が違うようです。忙しさにかまけてそれが疎かになってしまうこともあるし、中途半端になってしまうこともあったりして、そういう事は後々後悔したりして、なかなか全てが上手くいくということが無い。これじゃいかんなぁと反省することばかりです。

 それでも毎年気がつけばこの時期がやってきて、やっぱり大して準備が出来ているわけでもなく、日々を必死にこなすうちに年が暮れていきます。
 毎年ちょっとずつ気をつける。そうして気をつけるうちにそのうち出来るようになったら良いなぁと思います。もちろんお店のことばかりではなく、妻や家族に対してもそうです。自分の忙しさにかまけて人に優しく出来なくはなりたくない。
 「丁寧に、美しく」一年を締めくくる美学的なものは、自分の中にしっかりと持って育てていきたいと常々そう思うのです。

 今日はどんな一日になるかな。

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