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2020年九州電力の電力需給と再エネ出力制御の今後について

2021年度4月、九州電力管轄の
再エネ出力制御の運用方法が変更になり、
指定ルールの制御回数が増加しています。

その原因を
2020年の電力需給を振り返りながら考察することにします。
※あくまで個人的な試算・見解です。ご理解ください。

●現状把握
運用方法変更を受け、
指定ルールの発電事業者が驚いているようです。
その内容は、
 ・昨年度まではなかったのに、
  毎日のように連続して制御がかかる。
 ・輪番 → 一律ということは制御の回数は増えるけど、
  1回の制御率は減ると思っていたがそうでもない。
といったことです。
なぜこのようなことになったのか、考察していきます。

●デュレーションカーブ(参考)
デュレーションカーブを用いることで
私は今回の事象を理解できたので、まずはその説明です。

デュレーションカーブとは
時間とは無関係に小さい順にならび替えた曲線のことです。
例を用いて説明します。
九州電力の2020年の電力需要を用いて時系列表示します。

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想像通りですが、需要が季節によって変化しています。
これを小さい順に並び替えます。

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これがデュレーションカーブです。
1年間分のデータ(24時間×365日)を並べましたが、
特定の時刻のみピックアップすることも可能です。

デュレーションカーブを用いることで
需要に対して供給過多の日数や電力量が可視化できます。

ちなみに電力は貯蔵が困難なため
需要と供給は常に一致しています。
つまり、「再エネを制御しすぎた!」なんてことが
あってはいけません。

また、太陽光発電は天候に左右されます。
需要が多い日に天候が悪ければ、
他の発電設備で賄わなければいけません。
刻一刻と変化する電力需給に安定した電力を送電する
電力会社には感謝です。

●2020年度の出力制御実績(概要)
デュレーションカーブ使う前に
2020年度の出力制御実績の概要を確認します。
・制御回数:60回
・旧ルールの1発電所あたりの制御回数:21~22回
・指定ルール 〃 :6~7回

2020年度はまだ30日を超えていないので
旧ルールが優先的に制御されているのが分かります。

また、低圧の指定ルールは
8班に分けての輪番制とのことですが、
2~3班などまとめて制御することがあることも
調べている中で分かりました。

●九州電力の電力需要と再エネ制御量
2020年の九州電力の電力需給データを用いて、
12:00~13:00の供給(発電)デュレーションカーブを
用途別に示します。
併せて再エネの出力制御量も表示します。

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九州地方の需要以外にも四国方面への供給、
揚水を活用していることが分かります。
意外と再エネの制御量が小さい気もします。

エリア需要と再エネ制御だけピックアップします。
時間を絞らず、2020年のデータ丸ごと表示します。

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それなりに?制御されているようにも見えますが、
太陽光による供給量の4%しか制御していません。
これについては後ほど電源構成を見ていくことにしますが、
先に制御量をもう少し深堀りします。

●ルール別出力制御量
旧ルールと指定ルールの比率を調べます。
もう一度12:00~13:00に絞ってみます。

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上の図から太陽光の制御量(赤色)だけをピックアップして、
旧ルールと指定ルールに分けて表示します。
※出力制御実績の件数や供給量から想定しました。

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旧ルールの方が制御回数が多いことは前述の通りですが、
優先的に制御されている分、制御量も多いことが分かります。
さらに容量別(特高・高圧・低圧)に分類します。
※オンライン旧ルールは指定に含む

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低圧の指定ルールは
回数では6~7回制御されていましたが、
制御量は全体の7%しか制御されていません。
逆に高圧の旧ルールは
制御量の50%を占めていました。

●九州電力の電力供給量
次に12:00~13:00の供給のデュレーションカーブを
電源構成別に示します。

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太陽光とそれ以外に分類してみます。

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正午に絞ればすでに再エネ35%達成のようです。
これに出力制御量を追加してみます。

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こうしてみると供給量の5%制御も納得です。
※全日・全時間集計では4%になります。

●さらなる太陽光設備の増加
九州電力送配電の資料によれば
2020年9月末設備量998万kWから約8万kW/月増加し
2021年度の制御量は4.6%(+0.6%)に増加するそうです。

なお、2020年のデータから単純に
太陽光発電電力量が1.1倍となり
需要がそのままだった場合、
4%だった制御量は14%になります。
 ※太陽光発電電力量 / 制御量
   2020年:12480[GWh] / 480[GWh]
   2021年:13,700[GWh] / 1700[GWh]

●電力需要と太陽光発電の相性
先ほどの電源構成ですが、
「再エネを制御しているのに、他電源の割合が大きいのか」と
思う人もいるのではと考えました。
そこで2020年6月と、ある1日の電源構成比を見てみます。

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前述したように、太陽光のデメリットは天候に左右されることです。
ベースとなる原子力や調整可能な火力をミックスすることで
安定した電力供給を担っているのが現状です。

そもそも年間の電力需要と太陽光発電は
相性がいいのか、調べてみます。
両方を重ねてグラフで示します。

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需要が多い冬に太陽光の供給は低く、
需要の少ない春に太陽光の供給が高い、
ということが言えそうです。

現に2020年度の制御実績は
3~5月で83%(50/60回)を占めています。

太陽光設備が増加することで、
春季の出力制御がさらに増えることは間違いありません。

●2021年度の出力制御(勝手な予想)
2020年度は50/60回が3~5月に制御されており、
2021年度は制御が90回と想定すれば
約75回(月の83%)が春に制御対象となります。

過去のデータから出力制御がかかるのは
ざっくり出力が6000MWを超える辺りからです。

旧ルールは制御量が多い日に使うとして
九州地方が晴天で9300MW発電した場合、
旧ルールの全設備を制御したとしても
指定ルールを15%制御して頼る必要があります。

次に旧ルールを使い切った後です。
春だけでも残り45日(月の50%)は
指定ルールで制御する必要がありそうです。

九州の一部が雨であれば
大きく制御する必要はなさそうですが、
九州地方全体が晴れると
100%制御するほかありません。

・春はほぼ連続して制御されそう
・九州全体で晴れれば100%制御されそう
この状態が春は続くことになりそうです。

●これから
少し気になるのは、
旧ルールの高圧(500kW以上)の発電事業者です。

現在はオフライン制御でも
指定ルールより制御量が多いことが知れ渡れば、
オンラインに切替する可能性はあります。
(高圧発電事業者の多くは企業ですし)

そうなれば30日制限をもった指定ルールです。
本来の指定ルールの制御量が増えそうな気がします。

●最後に
急拡大している太陽光発電設備ですが、
FIT終了の20年後に廃棄されなければ
電源インフラとして守る必要があります。

しかし、制御されている = 価値がない、
利益を出さないが費用のかかる電源を
維持することは難しいと思います。

再エネ比率を上げることは多く語られますが、
同時に未来の在り方も勉強しないといけないですね。

少し長くなってしまいました。

それでは、また。

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