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"再エネ電力を捨てる"ことを深掘りしてみる

2023年春、全国各地で再エネの出力制御が頻発し、
"再エネ電力を捨てている"という声もあがっています。

では、どれほど再エネ電力が制御されているのか、
九州エリアの実績を振り返ってみます。
九州電力送配電の需給実績データから、
出力制御の多い2023年3月を参考にしました。

●2023年3月の電源構成

まず、2023年3月の電源構成を見てみます。
せっかくなので、全時間帯(左図)と日中(右図)を並べています。

2023年3月の電源構成(九州電力送配電 需給実績より)

全日では太陽光発電の割合が13%、日中だけだと30%になります。
太陽光の増減分はほぼ火力発電が調整しているような形です。

次に、全ての発電設備の発電電力量から
太陽光の発電電力量と制御量をピックアップしました。
2023年3月1日から31日まで1時間毎の積算値を時系列で並べています。
(31日×24時間=744個の棒グラフ)

2023年3月の太陽光発電実績(九州電力送配電 需給実績より)

この青色の部分が実際に太陽光が出力制御された量です。
上の図は時系列ですが、
発電電力量の少ない順に並び替えてみます(デュレーションカーブ)。

2023年3月の太陽光発電実績(九州電力送配電 需給実績より)

2023年3月の出力制御の実施回数は23日と月の75%を占めますが、
発電電力量全体に対して太陽光の制御量は約3%、
太陽光発電全体に対しての制御量は約13%でした。
連日の出力制御で停止してばかりとの声もありますが、
太陽光発電の87%は発電したということが分かります。

注意点としては太陽光発電全体で制御量が13%で、
運用ルール(30日ルール、無制限等)によっては変化します。

●出力制御の多い13:00~14:00

出力制御が多いとされる13:00~14:00だけに絞って
デュレーションカーブを取り出してみました。

2023年3月の太陽光発電実績(13:00~14:00)

昼間だと発電電力量全体に対して太陽光の制御量は約13%、
太陽光発電全体に対しての制御量は約28%でした。
※このグラフでは分かりませんが、
 参考として原子力の割合は24%、火力が26%でした。
電力需要の多い日には太陽光をより多く使用していることが分かります。

●再エネ出力制御量が多かった3月19日

再エネ出力制御量が多かった3月19日をピックアップしてみます。
(先ほどの図の左から2つ目)

2023年3月19日の太陽光発電実績(九州電力送配電 需給実績より)

3月19日は電力需要が少ない日曜日かつ全国的に晴天でした。
そのため太陽光発電全体に対しての制御量は約56%と
たしかに制御量が多かった日です。
電源別にグラフにしてみます。

2023年3月19日の発電実績

太陽光発電オーナー目線だと
火力発電をまだ減らせるのではないか、
という議論になりそうですが、
太陽光発電のために火力も出力を抑えているのは事実です。
つまり火力にとっても、昼間は制御されているような状態です。

また、エリア需要に注目してみると
太陽光発電はエリア需要と全く合わない動きをします。
エリア需要が増加するタイミングは
火力や揚水が頑張ってくれています。
もちろん、夜間や雨天時も火力頼みになります。

太陽光発電は再生可能というメリットはありますが
人間にとって必要な時間帯電力を供給できない
気まぐれな発電設備とも受け取れます。

●再エネ電力を捨てるという選択

オフィス街のコンビニに例えると、
休日にも関わらず平日と変わらない数のお弁当を
陳列しているような状態でしょうか。

電力需要がない以上、
それ以上に供給される分は止めざるを得ません。

再エネ出力制御によって
再エネ電力を捨てていると言われることもありますが、
できる限り利用できるように
日々の調整に取り組まれているようにも見えます。

私たちが日々、何の不安もなく電力を利用できるのは
需給調整をしてくださる方々のおかげですね。
ありがとうございます。


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