太陽光の出力制御は減るのか
「連系線増強や需要増がない限り、減りそうにない」
と言ってしまえば終わりですが、
「国は脱炭素を提言しているのに、
太陽光を制御して火力発電している」
という事実を深掘りしてみます。
●2020年度の電源構成(九州)
九州電力送配電の需給実績から
2020年度の電源構成を見てみます。
火力が50%以上を占めています。
確かに太陽光の出力制御するより
火力の出力を下げてほしく見えます。
ちなみに、全体供給量は101,946[GWh]で、
太陽光の出力制御量は385[GWh](全体の0.4%)、
太陽光発電に対する制御量の割合は3%、
制御対象の発電所(6割と仮定)に対する制御割合は5% です。
※九州電力の見込みより低くなったみたいですね。
●4月の電源構成
先ほどは年間通しての電源構成でしたが、
制御が多い4月だけをピックアップしてみます。
2020年4月と2021年4月の電源構成です。
川内原発が再稼働したことで
原子力の割合が高くなっているかと思いますが、
それでも火力が30%以上を占めています。
太陽光の出力制御量は
2020年4月は153,650[GWh]、
2021年4月は195,273[GWh]と1.27倍です。
これを見ても火力を減らして
制御を少なくしてほしくなる気もわかる気がします。
●ある1日の電源構成
2021年4月25日(晴)をピックアップします。
良く晴れた1日でさえ、
火力は25%ほど運転しています。
日照時間しか太陽光発電できないからですね。
とはいえ、
まだ出力制御が減らせる余地はないのか、
時系列で深掘りしてみます。
●出力制御を減らせるか
先ほどの4月25日のデータを
時系列で示してみます。
太陽光発電が増える時間に合わせて
火力の出力が減っているのが分かります。
火力と太陽光の制御量を並べてみます。
給電優先ルールに則ると、
火力は最低出力にすることになっています。
電源Ⅰ・Ⅱ・Ⅲと分けられるのですが、
九州では合計約120[万kW]くらいなので、
お昼はこれ以上減らせそうにないことが分かります。
発電(供給側)で減らす要因がなければ、
消費(需要側)を増やすことができないか見ます。
需要はエリア需要、揚水、大容量蓄電池、
域外送電に分けられます。
エリア需要はすぐに増やせそうにないので、
揚水・蓄電池・域外送電に余力があるのか見てみます。
揚水・蓄電池の動力は
あわせて最大224[万kW]です。
最大出力で常に稼働するわけではないので
太陽光の発電電力量に合わせて上下するようです。
域外送電は連系線容量に関わらず
周波数維持や熱容量の制約で運用容量が限られ
年平均で135[万kW]となっています。
4月25日の揚水・域外送電量を見てみます。
昼間はほぼ使い切っている気がします。
ということで、
・火力は太陽光発電に合わせて最低出力まで下げてそう
・揚水や域外送電も使える分は使ってそう
・それでも火力発電の割合が大きく見えそう
ということが分かりました。
需要増や連系線増強がない限り、
九州エリアで太陽光が増え続けると
需要が多い夏は火力の割合を下げれますが、
春の出力制御はどんどん増えることになりそうです。
それでは、また。