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そもそもなぜ「お店」?

ここでは妻のことを「シェフ」と呼ぶことにします。

chef /シェフ/ ➊ ,頭(かしら),リーダー.➋ 料理長,シェフ

プログレッシブ 仏和辞典 第2版

まぎれもなく我が家のリーダーですからね、かみさんは。愛犬もそう信じている。

シェフの本業は、主婦です。
ふざけていません。本当のことです。
常々シェフはそう言っています。主婦が本業。
だからこそお店に対しても真剣です。
限られた時間を、効率よく、最大限売上に替える。
プロフェッショナル。
わたしなんか到底およばない。だからお店が繁盛しているのでしょうか?
実際「うまくやっていますね」と人から言われることもたびたび。そこにはいろんなニュアンスが込められていることなど百も承知。
でもこんなことを言っても多分信じてもらえないかもしれません。

「そもそも焼き菓子店なんてするつもりじゃなかった」って。


偶然を偶然と思わない

いまも信じられないことですが、シェフは甘いものがそれほど得意ではありませんでした。
それなのに、なぜ焼き菓子店を経営しているのか?
じつはこれ、逆なのです。
好きではなかったからこそ、あることに気がつくことができたそうです。

仲良くしてもらっているブックカフェに遊びに行った時のこと。
店主とカウンター越しに談笑していたとき、業者の方が納品に来られました。
商品をカウンター横のカゴに並べていく。
すると…
店内にいたお客様、店外で待機していたお客様、
どちらも目の色を変えてその商品を鷲掴みし会計していくのです。
「やっと買えた!」とニコニコしながら。

その商品とはクッキーでした。
特徴があるわけでもない、素朴な焼菓子。
それがものの数分で完売したのです。
これをつかまえて「うまくやっていますね」と茶化してしまうことは簡単です。
即時完売はたまたま。
お客さんが多いタイミングだった。
商品が安く、手に取りやすかった。

はたして本当にそうでしょうか。
なんかすげぇの見たな、ぐらいの解像度しかなかったわたしの横で
「事業アイデアをつかんだのはこの時だった」
と後にシェフは語ります。
焼き菓子には可能性がある。
お客様によろこんでもらえる力がある。
贈答用として選ばれれば、たくさんのお客様に広くお役立ちができる。

もしシェフが無類の甘いもの好きだったら…
おそらくこの瞬間が引っかかることはなかったかもしれません。
むしろ、お客様に混じって自分も買っていたでしょうね。
当事者になっていたはずです。
でもそうならなかったのは、焼き菓子が死ぬほど好きではなかったから。
だからこそ一歩引いて、その現象を俯瞰で観察することができた。
そして偶然を偶然とみなさず、自分ごととしてとらえて、事業計画に落とし込めた。

もちろん、これだけで「うまくやる」ことはできません。集客できるか、繁盛するかどうかもまた別の話。
でも偶然やラッキーを確実にキャッチして、現在にいたる計画を引けたのはなぜか?
シェフにはまた直接取材するとして(なんせ今日もお店で仕込み中です)、
リーマン夫がずっと見てきて思う最大の要因はふたつです。

「段取り力」と「サービス精神」、
これが徹底されている。

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