Proxmox VE 8.2でプライベートクラウドを構築しよう - 基本編 -

 本記事では、Proxmox VEのインストール方法、および基本的な使い方について説明します。


1.Proxmoxについて

 Proxmox VEは、エンタープライズレベルでも利用可能な本格的な仮想化基盤です。WindowsやMAC端末上にインストールするのではなく、OSとセットで直接PCにインストールして動かします。
 PCにProxmox VEをインストールすると、Proxmox VE上にいろいろな種類のOS(LinuxやWindows)の仮想マシンを複数台作成することができ、作成した仮想マシンはPCが接続されたLANと接続することができます。
 開発者にとっては、簡単に開発環境を構築できるので、とても便利に使えるのではないでしょうか。
 Proxmoxはオープンソースで提供されており、個人利用であればエンタープライズレベルのすべての機能を無償で利用できます。

2.インストール先PCについて

 Proxmox VEを動かしてみるだけであれば、古くて性能の低いPCでも動作します。
 具体的には、仮想化に対応したIntelまたはamdの64bit CPU、1GB以上のメモリが必要です(参考サイト)。ストレージの制約はないようです。
 ただし、アプリケーション開発やアプリケーションシステムの動作確認をするなどの目的で、複数の仮想マシンを同時に動かすことを想定している場合は、以下くらいのスペックがあるといろいろな用途で使うことができるでしょう。

CPU: 4Core/8Thread
Memory: 32GB
ストレージ: NVMe PCIe × 4 1TB

 私の自宅で動いているProxymox VEは、中古で購入したIntel NUC11PHi5のミニPC(4Core/8Thread)に64GBのメモリ(Crucial社32GB×2)と1TBのNVMe SSD(Western Digital SN570)を搭載したものを使っています。
 また、本記事ではふれませんが、ProxmoxではGPUリソースも仮想マシンに割り当てることができます。

3.インストール手順

3.1.proxmoxのダウンロード

Proxmoxの公式サイトから、普段使っているPCにiso形式のインストールファイルをダウンロードします。
特に古いバージョンを使いたい理由がない場合は、一番新しいバージョンを選択すると良いでしょう。

3.2.インストール用usbの作成

 インストールメディア作成用ソフトを使って、ダウンロードしたインストールファイルからインストール用のusbを作成します。usbの中身は全て削除されますので、中身が消えても良いか、あるいは空のusbを用意してください。
 インストールメディア作成用ソフトは、windowsパソコンであれば、rufusなどを使うと良いでしょう。インストール不要で、実行形式のファイルをダウンロードしたらそのまま使えます。

 参考までにNUC11にproxmox VEのインストールをしたときのrufusの設定は以下のとおりです。デバイスでインストールメディアにしたいUSBドライブを選択し、その下の選択ボタンでproxmoxのiso形式のファイルを選択、他はデフォルト設定(以下の設定)にして、スタートボタンをクリックするとインストール用USBメモリの作成が始まります。

3.3. インストール

 作成したインストール用のUSBメモリを使って、ホストマシンにProxmox VEをインストールします。

 インストール先ホストマシンのストレージの中身はすべて消えてしまいますので、中身が消えてもよいか、あるいは空のストレージを搭載したホストマシンにインストールしてください。

 まず、ホストマシンにインストール用のUSBメモリを挿します。
 つづいて、ホストマシンにモニタ、キーボードを接続します。マウスは不要です。インストールに使うキーボードは、専用ドライバがないと動かない特殊なキーボードとかでなければ、大丈夫かと思います。
 接続が完了したら、ホストマシンの電源を入れます。

 ホストマシンが古いPCの場合など、場合によってはファームウェア(BIOSまたはUEFIなど)の設定変更が必要なケースがあります。
 一般的なPCの場合は、電源onした後にf2キーを押すと、ファームウェアの設定画面を表示することができます。

 以下に、気を付けるファームウェアの設定項目を記載しておきます。
具体的なファームウェアの設定方法が不明な場合は、PCのマニュアルなどを確認してください。

■ 起動ドライブの優先順位:USBを最優先にする
 ほとんどの場合、この設定になっています。
■CPUの仮想化機能:設定を有効にする
 新しめのPCには設定項目がないことがありますが、問題なし。
■セキュアブート:
 起動時にセキュアブートエラーが表示される場合は無効にする。
 問題ない場合は有効設定のままで良い。
■ LAN:接続しないLANアダプタの設定を無効にする。
 例)有線で接続する場合は無線LANアダプタの設定を無効にする。

ホストマシンの構成、ファームウェアの設定、インストールUSBに問題がなければ、USBメモリからProxmox VEのインストーラが起動します。
ここから先がProxmox VEのインストール作業になります。
指示に従って、各種設定項目を指定していきます。

インスーラが起動したら、矢印キーで
Install Proxmox VE(Terminal UI)
を選択。
<Enterキー>

インストール方法の選択

続いて、ライセンス同意を聞かれる。
ok <Enterキー>
I agree <Enterキー>

インストール先ストレージの指定画面が表示されるので、
Next <Enterキー>

インストール先ストレージの選択

ロケールの設定画面が現れるので、矢印キーで
Countory: Japan
Timezone: Asia/Tokyo
Keyboard layout: Japanese
をそれぞれ選択して
Next <Enterキー>

Root passwordと管理者(自分)のemailを入力。
Root passwordはログイン時に必要なので、忘れないように。
入力が完了したら、
Next <Enterキー>

続いて、ホストマシンのネットワークアダプタにネットワークの設定をする画面が表示される。
接続先の環境にあった固定IPを付与する。

(1)Hostname (FQDN)
 ホストマシンに任意のホスト名を付与。
 FQDN形式にする必要があるので、後ろに".local"をつける。
 ここでは、pve1.localとした。
(2)IP address (CIDR)
 接続するLANで使用されていない固定IPアドレスを指定する。
 デフォルト設定では、自動取得したIPアドレスが設定されているが、必ず利用可能な固定IPアドレスに変更すること。
 ここでは
192.168.0.161/24
を設定していますが、Proxmox VEを接続するLANのサブネットの利用していないIPアドレスから割り当てるようにしてください。

ネットワークの設定

補足:NWに詳しくない方が自宅LANにProxmoxを接続する場合
 LANのアクセスルータ(ブロードバンドルータ)は、接続機器にIPアドレスを自動で設定する機能(DHCP)をもっています。DHCPが有効な場合は、ネットワークの設定でひととおり設定が最初から入っていますので、IPアドレスだけ、利用されていない固定IPアドレスに変更します。
 多くのブロードバンドルータでは、IPアドレス(CIDR)の設定は、
  192.168.x.y/24
 になっているかと思います。
 ここの4つ目の数字のyの部分を利用されていないものに書き換えます。利用できるyについては、ブロードバンドルーターのDHCPがスマートフォンなどに割り当てるIPアドレスの範囲を確認して、この範囲外から指定します。ほとんどの場合は、192.168.x.2~192.168.x.64くらいまでになっているので、わからなければyを129以上254以下の、他に割り当てていない数字に書き換えます。

(3) Gateway address
Proxmox VEを接続するLANのルーターのIPアドレスを指定します。
ここでは、
192.168.0.1
を指定していますが、Proxmox VEを接続するLANのルーターのIPアドレスを指定するようにしてください。

(4) DNS Server address
ここでは、8.8.8.8を指定しました。
8.8.8.8は、googleが無料で提供しているインターネットでも利用できるDNSサーバーのアドレスです。

最後に、確認画面が表示されます。
Install <Enterキー>

インストール設定確認画面

これで、インストールが始まります。
インストールが終わったら、インストール成功の画面が表示されます。
Reboot now <Enterキー>

インストール成功!

4.仮想マシン(VM)を構築する

4.1.Proxmox WEB UIへのログイン

 proxmox VEをインストールすると、一緒に管理Webアプリケーション(Web UI)もインストールされます。ホストマシンの再起動が完了したら、このWeb UIにログインしてみましょう。

 proxmox VEと接続可能なLANに接続されたPCのブラウザから、
http://<proxmoxに付与したIPアドレス>:8006
にアクセスします(本記事ではhttp://192.168.0.161:8006)。
 proxmoxの証明書が自己証明書になっているため、ブラウザでアクセスする際に「プライバシーが保護されない」、「安全でない」などの警告画面が表示されますが、ここは気にせず、詳細設定ボタンから接続します。

proxmox VEアクセス時の警告

ログイン画面が表示されますので、最初に言語で日本語-日本語を選択。
ユーザー名はroot、
パスワードはインストール時に設定したパスワードを入力します。
レルムでは、Linux PAM standard authenticationを指定します。
ログインボタンをクリック。

proxmoxにrootユーザでログイン

レルムでは、何で認証するかを指定しています。
Linux PAM standard authenticationを指定すると、ProxymoxホストのLinuxユーザで認証します。
ProxmoxのWebUIは、認証サーバを追加することでいろいろな認証サーバで認証させることができます。

有効なサブスクリプションがありませんの警告が表示されます。無償版で利用する場合はログインの度に毎回表示されますが、OKボタンをクリックすれば管理画面が表示されます。

proxmox VE管理画面

proxmox VE Web UIの画面構成は、以下のとおりです。
■ ヘッダ:
 画面トップ。
 ProxmoxのロゴとVM作成などのボタンがある。
■ リソースツリー:
 画面左。
 proxmox VEホストやストレージ、仮想マシンなどのリソースオブジェクトを、構成どおりのツリー形式で表示。ここで操作/管理対象のリソースオブジェクトを選択する。
■ コントロールパネル
 リソースツリーの右隣のセンターパート。
 リソースツリーで選択したオブジェクトの設定などを行う。
■ ログパネル
 画面下。
 Proxmox VEの操作ログ(タスクログ)を表示。

https://pve.proxmox.com/pve-docs/chapter-pve-gui.html#_gui_overview

4.2. Ubuntu VMの作成

試しにproxmoxの 中に仮想マシンを作成してみます。
ここでは、デスクトップ版Ubuntu24.04を作成してみます。

4.2.1. OSダウンロード

proxmox VEのWEB UIにアクセスしているパソコンに、Ubuntu公式サイトからUbuntu24.04のiso形式のインストールファイルをダウンロードしてきます。仮想マシンを作成後、このisoファイルを使って仮想マシンにUbuntuをインストールします。

4.2.2. ProxmoxへのOSアップロード

proxmox VEのWEB UIにログインし、Web UIのリソースツリーで仮想マシン作成先のproxmoxホストのlocalストレージ(補足参照)を選択。
アップロードボタンをクリック。
アップロードしたいisoファイルを選択してアップロードします。

仮想マシン作成用のisoファイルをアップロード

補足
proxmoxホストには、インストール時にホストのローカルストレージに2つのボリュームが作成されています。
(1)localボリューム
(2)local-lvmボリューム
です。
localボリュームは、仮想マシンのOSインストール用isoファイルを保存するボリュームです。
仮想マシンは、local-lvmボリュームの方に作成されます。

4.2.3. Proxmox VMの作成

WebUIのヘッダから、「VMを作成」ボタンをクリック。

■ 全般の設定
ノード: 仮想マシンを作成するproxmoxホストを選択
VM ID:  proxmoxが管理するユニークな仮想マシンID。
    こだわりがなければ自動選択値のままで良い。
名前: 仮想マシン名。
    proxmoxが管理する仮想マシンの名前。
    ここでは、test-ub24という名前にした。

全般の設定

■ OSの設定
仮想マシンにインストールするOSのインストール用isoファイルの選択とゲストOS(ゲストとは、仮想マシンのこと)の選択。Ubuntuを選択する場合は、種別でLinuxを選択。カーネルのバージョン2.6以降のLinuxに対応する。

OSの設定

■ システムの設定
すべて初期設定のままにしておく。
いろいろ選択できるが、選択すると組み合わせもきっちり設定してやらないとうまく仮想マシンが動作しないことがある。

システムの設定

■ ディスクの設定
ストレージ:
 仮想マシンを作成するストレージボリュームの選択。
 ここでは、ホストマシンの仮想マシン用ボリュームlocal-lvmを選択。
ディスクサイズ:
 仮想マシンのディスクサイズをGiBで指定。

ディスクの設定

補足:
1台の仮想マシンに割り当てられるディスク容量は、選択したディスクボリュームの容量が上限となります。
複数の仮想マシンをproxmoxホスト上に作成する場合、全仮想マシンのディスク容量の合計は、指定したボリューム容量を超えて設定することができ、上限はありません。
複数の仮想マシンに設定したリソースの合計がホストマシンのリソース量を超える設定を、「オーバーサブスクライブ」設定といいます。
オーバーサブスクライブ設定をしても、複数の仮想マシンのリソース消費の合計がホストマシンが提供できるリソースの上限を超えない限り、問題ありません。

■CPUの設定
仮想マシンのコア数を設定。他は初期設定のまま。
コア数=proxmoxホストのスレッドリソースが割り当てられる。
例:proxmoxホストが4Core/8ThreadのCPUを搭載しているとすると、コアは最大で8まで割り当てることができる。

CPUの設定

補足:
1台の仮想マシンに割り当てられるコア数の最大値は、ホストマシンのスレッド数となります。
ディスク同様、CPUもオーバーサブスクライブ可能です。

■メモリ
仮想マシンに割り当てるメモリをMiBの単位で設定します。
CPU同様、1台の仮想マシンに割り当てられるメモリの最大値は、ホストマシンのメモリとなります。また、CPU同様、オーバーサブスクライブすることができます。

メモリの設定

補足
1台の仮想マシンに割り当てられるメモリの最大値は、ホストマシンのメモリとなります。
CPU同様、メモリもオーバーサブスクライブすることができます。

■ネットワーク
全部デフォルト設定のまま。

ネットワークの設定

補足
ここでは、ブリッジは、proxmoxホストマシンの物理NICに紐づいたデフォルトの仮想ブリッジ(vmbr0)を選択します。
仮想マシンをこの仮想ブリッジに接続することによって、proxmoxホストのNICが接続されたLANに、作成した仮想マシンを直結させることができます。
ファイアウォールをチェックすることによって、proxmoxのWeb UIから仮想マシンにファイアウォールポリシーを設定することができるようになります。ただし、仮想マシン作成時はファイアウォール機能がOFFの状態になっていますので、ファイアウォールが勝手に動作することはありません。

これで仮想マシンの設定は完了です。
完了ボタンをクリックすると、仮想マシンが作成されます。

4.2.4. VMにUbuntuをインストール

リソースツリーの画面で作成した仮想マシンを選択し、コントロールパネルでコンソールを選択。画面中央のStart Nowボタンをクリックします。

仮想マシンへのosのインストール

作成時に指定したisoファイルで仮想マシンが起動します。
Try or Install Ubuntuを選択して<Enter キー>を押下するとインストールが始まります。
Ubuntu24.04デスクトップの詳しいインストール方法や、Ubuntu24.04デスクトップを仮想マシンで利用するための推奨初期設定などは、こちらの記事で紹介していますので必要に応じて参照ください。。

Ubuntu24.04 Desktopのインストーラ起動画面

5.Proxmox初期ネットワーク構成

以下はインストール時のProxmoxネットワーク構成例です。
Proxmoxのデフォルトブリッジ(vmbr0)は、ProxmoxホストのNICが接続された物理LANに直結されています。

Proxmox初期ネットワーク構成例

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