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隈研吾読書会

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私的ケンチク批判、日本の建築家

私的ケンチク批判、日本の建築家

 建築家・隈研吾の著作を追った全3回の読書会を行った。本記事では、企画者が読書会を通して考えたかったことについて説明し、簡単な総括とする。以下は各回の発表資料である。

 第一回は自分が担当し、『10宅論』『建築的欲望の終焉』の2冊を主に扱い、初期の建築批評から実作への展開の布石となる部分を読んだ。

 第二回は福原君が担当してくれた。『反オブジェクト』『負ける建築』で展開されていく一連の建築論を

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隈研吾読書会③ ナショナル・アーキテクトとして

隈研吾読書会③ ナショナル・アーキテクトとして

最終回となる今回は、震災以降の隈研吾について考えていく。
はじめに、これまでの読書会を振り返っておこう。
第一回:建築批評

第二回:理論と実作における展開

震災、オリンピックから『点・線・面』へ今回の読書会では、『点・線・面』(2020)を扱うほか、『なぜぼくが新国立競技場をつくるのか』(2016)『場所原論』(2012) など、同時期の著作にも触れていきたい。

隈研吾の創作論の表明は前回の

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隈研吾読書会② 建築論・実作への展開

隈研吾読書会② 建築論・実作への展開

現在、研究室・学年の垣根を越え隈研吾読書会を行なっている。第二回のプレゼンターを担当するため、初回の振り返りと、第二回で扱う内容を紹介する。今回扱う著作:『反オブジェクト』『負ける建築』

初回の総括初回の読書会では主に『10宅論』『建築的欲望の終焉』を扱った。これらは建築家として活躍する以前に、批評家としてデビューしていたころに隈研吾が書いたものである。ここで彼は初めに、アメリカ型の持ち家政策に

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隈研吾読書会① 建築(批評)家として

隈研吾読書会① 建築(批評)家として

今回扱う著作:『10宅論』『建築的欲望の終焉』

(匿名)批評家デビュー隈のキャリアは東大院を修了後、大手設計事務所、ゼネコンと実務経験を積んで、'85-6にコロンビア大へ留学(特別研究員)し、帰国後独立したということになっているが、実際の著述業デビューは建築家デビューより早く、大学院在学中にあたる。『SD』誌巻末に連載されていたグルッポ・スペッキオという匿名グループによる建築批評が、隈の最初の著

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隈研吾読書会⓪告知用

隈研吾読書会⓪告知用

概要国民的建築家となった隈研吾の思考は活動の初期から一貫した問題意識、方法論がある。現代における建築の成立根拠を原理的・社会的に問う隈の言説を概観し、隈の選択しなかった建築の可能性を模索する。

隈は活動の初期から設計言説、作品批評、社会時評を問わず活発に言説を発表し続けている。本読書会では単行本にまとめられた隈の言説を時代ごとに追っていく。扱う書籍は以下の通り。
『10宅論』『建築的欲望の終焉』

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