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三ツ星スラムの贈与研究 2024年9月

ぷろおごマガジンを購読している皆様、こんにちは。ぷろおごマガジンの購読特典の一つとして、『三ツ星スラム』という読書サークルに参加することができます。以下の記事の末尾に、専用Slackへの招待リンクがあります。

とはいっても、三ツ星スラムがどのような活動をしているのか知らない方も多いでしょう。そこで、今月のホットトピックである「東京大学の贈与に関する論文」について、スラム内でどのような話が盛り上がったかを紹介したいと思います。


端緒

話題の元となった東京大学の記事はこちら。

これに対するプロ奢ラレヤーの見解はこちら。

スラムの重鎮、伊予柑さんの見解

・贈与論とはマルクスの市場主義に対するアンチテーゼとして書かれた本である。互酬性をもとにした「交換」的なやりとりで、利子などが生まれると市場と変わらない。例えば、年賀状には価値も利子もない贈答物である。
・モースの注目した「全体的給付体系」とは集団と集団のやりとりである。「出世したからおめでとうプレゼント」ではない。「企業同士がお歳暮でハムを送る」に近い。
・モースのいう贈与には「その贈与の体系に参加する合意」がある。つまり「日本人なら年賀状くらい送るだろう」みたいな世界観である。この世界観そのものが大事であって、個々の贈り物は具体事例でしかない

伊予柑の贈与論

スラムでは2020年3月にモースの『贈与論』をみんなで読んで議論した過去があります。そこでの大まかな見解は以下のとおり。

  • 贈与はお返しをもらうのが目的ではない。お返しを期待するのは取引とか投資と呼ばれる。

  • 贈与の本質は、関係性を維持すること。あの人に贈り物をもらったな、今度返さなきゃな、と感じさせることに最大の価値がある。

一方、東大の論文が焦点を当てているのは、こうした贈与が権力を見せつけるための手段となる、競覇的な贈与のシーンです。スラムで大切にしたいと考えている贈与とは、かなり文脈が違います。

戸惑う伊予柑さん

スラム民の皆さんの見解

贈与は人間関係構築をハックするのに有効だ、という意見を最近はよく目にします。プロ奢ラレヤーも、まずはたくさん贈与しろ、と言っています。

これに従って贈与をしてみたけど、あんまり効果がなかった気がする、という意見もちらほら見られました。

  • ありがとうと言ってもらえて嬉しかったけど、それで終わってしまった。

  • お返しの品をもらったけど、期待したほどのものではなかった。

これは贈与あるあるだと思います。誰でも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

一発大きな贈与をすることで一気に人間関係が改善するんじゃないか、という幻想を持つ人も多いです。でもそうじゃない。贈与を足がかりとして、お互いの関係を深めていくことが大事だよ、という議論がなされていました。

贈与で成長するには?

スラムには、そんなにうまく関係を深めていけない人がたくさんいます。見よう見まねで贈与してみたけど、全然あの人たちのようになれなかった! というケースを、どうやったら改善していけるのでしょうか。

ということで、これまた身も蓋もない話ですが、やっぱり贈与し続けるしかないようです。すべての贈与を効果的に成功させよう、という考え方がよくないのでしょう。自ら行動して、でもうまくいかなかったな、と痛い目を見ることでしか、人は成長しないのかもしれません。

失敗と成長の分かれ目

失敗しても、それを糧に成長できる人と、同じ失敗を何度も繰り返してしまう人がいます。その違いはなんなのでしょう。

失敗したのを他人のせいにする人はあまり成長しません。また、失敗したのを自分のせいだと思っても、それを自分の能力では仕方ないことだ、と諦めて受け入れる人も成長しづらいと思います。今回はダメだったけど次は成功させたい、自分は変われる、こうなりたい、と目指す姿がないと成長しにくい気がします。

失敗したことってなかなか言いづらいです。しかし、それを誰にも言わず一人で抱え込んで次の成長に活かせるような人は、とっくに圧倒的成長しています。普通の人には難しいです。だからこそ、安全に失敗して、他の人から優しく指摘してもらえるチャンスはとても希少で大切だと思います。

安全に失敗するチャンスがあるのは、新人さんです。新しいコミュニティに新人として入っていくことが、あなたに安全な失敗と成長の機会を与えてくれるのではないでしょうか。

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3分で読める文章を、ほぼ毎日のように書きます。おれにケーキとコーヒーでも奢って話を聞いたと思って。まぁ、1日30円以下だけど...。

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